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サイレントマジョリティーは、近年あらためて注目されているキーワードである。SNSの発展とともに、その捉え方や対処法も大きく変化してきている。サイレントマジョリティーの意味や語源を確認し、現代ならではの事情や具体的事例について学んでいこう。
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エレミニスト編集部
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サイレントマジョリティー(silent majority)とは、「積極的な発言行為をしない多数派」を指す言葉だ。「声なき声」と表現されるケースもある。
サイレントマジョリティーは、政治や経済の世界でよく使われる言葉だ。これらの世界において、多数派から支持を得ることは、非常に重要なポイントである。そのために民衆の声や意見を求めるだろう。
しかし求める側に届くのはごく一部の声のみである。そうした意見が多数派とは限らないのだ。あえて発言行為をしない理由は、発言しなくても、とくに問題を感じていないためだろう。このように「あえて反対意見を示す必要のない多数派」のことを、サイレントマジョリティーと言う。
SNSの普及に伴って、サイレントマジョリティーの立ち位置も近年変化してきている。SNSで個人が気軽に意見を発信できるようになったいま、サイレントマジョリティーの声が可視化されるようになったためだ。どれほど小さな意見であっても、SNSという手段を使えば、世界に向けて発信できる。また自分と同じ意見を持つ人と、気軽につながることも可能なのだ。
これまでは、政治や経済で成功を収めるためにサイレントマジョリティーの動向が注視されてきた。しかしSNSの登場によって、サイレントマジョリティーに対する考え方にも変化が生まれている。
サイレントマジョリティーという言葉を初めて使ったのは、アメリカ合衆国第37代大統領であるリチャード・ニクソン氏である。1969年11月、彼はベトナム戦争を巡る演説のなかで、「グレートサイレントマジョリティー」という言葉を使い国民に呼びかけた。当時のスピーチは、「“The Silent Majority” speech」として知られている。(※)
当時のアメリカでは、長期化するベトナム戦争への懸念や不満が上昇。各地で反戦運動が行われるなか、「大多数の人々は沈黙し、現体制を支持している」という意味でサイレントマジョリティーという言葉を用いた。声を上げているのは少数派、つまりマイノリティーであり、アメリカの民意は沈黙のなかにこそあると主張したのだ。
現代においても、政治的な意味で使われる機会が多いのは、もともとの語源が政治の世界にあるからなのだろう。
サイレントマジョリティーをより深く理解するうえで、知っておきたいのが対義語である。2つの対義語を紹介しよう。
ノイジーマイノリティーは、「自身の意見や批判を遠慮なくぶつける少数派」を示す言葉だ。ノイジー(noisy)の意味は、「うるさい、騒々しい、やかましい」など。「一貫した主張がないにもかかわらず、ただやかましく騒ぐだけのマイノリティー」という、批判的な意味合いで使われることが多い。
ボーカルマイノリティーも、意味合いとしてはノイジーマイノリティーとほぼ同じである。ボーカル(vocal)の意味は、「言葉にする、やかましく主張する、自由に話す」など。ノイジーマイノリティーのような批判的な意味ではなく、自身の意見を積極的に発言するマイノリティーを示している。
マジョリティーの対義語は、マイノリティーである。両者の違いについては、以下の記事で詳しく解説している。
サイレントマジョリティーは、多数派でありながら、積極的に自身の意見を伝えようとはしない。ニクソン大統領はそれを「肯定」と受け止めたが、現代においてはそうとは限らないだろう。公的には発言せずとも、SNSを通じた私的な発言が可能だ。またSNS上の声が、世間を大きく揺るがすケースも少なくない。
本当の意味でマジョリティーから支持されるためには、サイレントマジョリティーとどう向き合っていくのかが重要なポイントである。サイレントマジョリティーに関連する自治体の取り組みや、社会課題の解決に向けた具体的な事例を紹介しよう。
サイレントマジョリティーの声をより多くすくい上げるために、多くの自治体が開設しているのが、広聴用LINEである。専用アカウントから必要な情報を発信するだけではなく、市民からも気軽に意見できる環境を整備。SNSを活用することによって、行政への関心が低い若年層からも、意見を集めやすくしている。幅広い意見を行政に反映させられるよう、多くの自治体で導入されている。
行政側が住民の意見を求める場としては、住民意識調査や住民説明会、パブリック・コメント、審議会などが挙げられるだろう。しかし、これらの方法には、サイレントマジョリティーに訴えかける力が弱いという特徴があった。こうした課題を解決するため、近年増加しているのが無作為抽出による市民参加型の会議である。
この方法の最大の特徴は、会議に参加する人を住民基本台帳から無作為に選出する点にある。選出された市民は、会議の場で自由に意見を発言できるのだ。こちらも、すでに多くの自治体で導入されている。
SNSを通じて、自分の意見を手軽に発信できる時代が訪れている。いまだからこそ、「サイレントマジョリティーの意見をどうすくい上げるのか?」という点は、非常に大きな課題と言えるだろう。
当初はサイレントマジョリティーであった人々が、SNS上のささいな情報をきっかけに、ノイジーマイノリティーへと変貌するケースも多い。計画段階からしっかりと意見をくみ取ることで、その後の流れをスムーズに進めていけるはずだ。
各自治体や企業は、サイレントマジョリティーの声をすくい上げるための工夫を、日々重ねている。我々サイレントマジョリティー側も、ただ沈黙するのではなく、よりよい意見発信の方法について、考えるべき時期に差しかかっていると言えそうだ。
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