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パブリックコメントとは、行政機関がルールを定めるときに、事前に一般から意見を求める制度。この仕組みがつくられた目的や意味をわかりやすく解説する。またパブリックコメントの手続きの流れ、メリットや課題について紹介する。
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パブリックコメントとは、「意見公募」のこと。行政機関が政令、省令などを制定する際、事前に命令等の案を公示し、その案について広く一般から意見や情報を募集する仕組みだ。
以前は「意見提出手続」と呼ばれていたが、2005年6月に改正された行政手続法によって、「パブリックコメント制度」として法制化された。(※1)
国や自治体があるひとつの方向を向いて動いていくとき、さまざまなルールが必要となる。しかしそのルールが国民の生活実態に沿ったものでないと、人々の間に混乱が生じてしまう。
そこで、あらかじめ新たなルールの案を公開し、広く意見を募るのが、パブリックコメント制度。そして集まった国民の意見を考慮することで、行政の公平性を確保し透明性を高めることが目的だ。
意見は、誰でも提出できる。デジタル庁が管理するパブリックコメントのサイト「e-Gov(イーガブ)パブリック・コメント」では、意見を提出する際、住所、氏名、電話番号、メールアドレスの記入は任意にしている。
「e-Govパブリック・コメント」に、各行政機関が募集している案件と募集状況、過去に募集された案件の情報が掲載されている。(※2)
新しいプロジェクトに関するものから、既存の改正案など、2021年9月時点で募集されている案件は2,800件以上。内閣府、消費庁、文部科学省など、所管省庁で検索できるほか、キーワードやカテゴリーで検索可能だ。
そのほか都道府県や市区町村で、パブリックコメントを実施している場合も多い。
パブリックコメントの募集は、医療関連のテーマにおいても積極的に行われている。医療現場の技術革新や新しい制度は、我々の未来に非常に大きな変革をもたらす可能性がある。
また、人それぞれが持つ倫理観を考慮しながら、医療の問題とどのように折り合いをつけていくのかも、非常に重要なテーマだ。だからこそ、より広い意見を募ることが大切になるだろう。
近年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する対策や各種制度に対して、パブリックコメントの募集を行っている自治体が多い。
パブリックコメントの手続きは、行政手続法によって、細かな手順が定められている。パブリックコメントの対象は、「政令」「府省令」「処分の要件を定める告示」「審査基準」「処分基準」「行政指導指針」の6つだ。(※3)
パブリックコメントが募集されるときの最初のステップは、行政機関による案や関連資料の公示だ。国の機関が募集する案件の場合は「e-Govパブリック・コメント」で、それ以外は各機関のウェブサイト等で公示される。
公示される案は、具体的かつ明確な内容であることが求められる。また、その命令を定める目的や根拠なども明確に示さなければならない。
意見を募集する期間は、原則として「案の公示日から起算して30日以上」に設定される。公示内容には受付締め切り日時が記載されているため、意見を提出したい場合はその日時までに手続きを行う必要がある。
意見の提出方法は、ウェブサイト上やEメールで提出できるのが一般的だが、FAXを受け付ける場合もある。
パブリックコメント制度で意見を募集した場合、行政機関は結果を公示する義務がある。意見が寄せられた場合は、それについてどのように考慮されたのか、実際の命令等にどう反映されたのか、あるいはなぜされなかったのかを、明らかにしなければならない。
結果の公示は、命令等の公示と同時期に行われるのが、原則である。パブリックコメント制度で意見が集まらなかった場合は、その旨が公示される。
パブリックコメント制度が法律で整備されるまでは、行政機関による各種ルールの決定や変更に対して、人々は「知らない間に決められていた」という感覚を持っていただろう。
しかし新たな制度のもと、「案」の段階で広く公開されるようになり、意見しやすい環境が整れられた。国民は事前に新たなルールについての理解を深め、そのルールがつくられる目的や根拠を知ることができる。さらに必要に応じて、直接意見を言えることがパブリックコメントの最大のメリットだ。
国民側から意見が出れば、行政機関はそれを考慮しなければならない。このようなプロセスを経ることで、人々の生活実態に沿ったよりいいルールが生まれやすくなる。
パブリックコメント制度の課題のひとつは、認知度だ。世間一般の関心が高い案については、多くの意見が寄せられるだろう。しかしほとんどの案は、これには当たらない。実際に「e-Govパブリック・コメント」の過去の案件について見ると、1件も意見が集まらなかった案件が大半を占めている。
そもそもパブリックコメントという制度の存在自体が、広く知られていないことが大きな課題だ。
また、パブリックコメントは案件募集から意見の提出もすべて、インターネット上で行われることが多い。インターネットになじみのない世代には参加しにくいため、紙媒体などでの認知拡大も必要だろう。
さらに、意見を提出してもそれが反映されるかどうかは、行政機関の判断に委ねられる。自由に意見できる環境は整っているものの、結果を公示する際に集まった意見を一律に公示するなど、情報のさらなる拡充が求められるだろう。
パブリックコメントはヨーロッパやアメリカ、中国など、さまざまな国で導入されている。
パブリックコメントで集まった一般の声によって、行政の制度が変わった事例として、2018年にEUで検討されたサマータイム制度の導入がある。これに対して、過去最多となる460万件の意見が集まり、その8割以上が廃止を支持。そのためEUの行政機能を担う欧州委員会は、サマータイム制度の廃止を決定した。
2013年から2014年にかけて行われた、新しい「エネルギー基本計画」に向けたパブリックコメントでは、18,663件のコメントが寄せられた。国民からの意見をもとに、温室効果ガス削減に向けた取り組みや、将来の人口減少の影響などが、政府原案にプラスされている。(※4)
パブリックコメントは、人々が行政に自分の意見を直接伝え、行政に気軽に参加できる仕組みだ。ただ残念ながら、この制度が広く知られていないため、意見を提出する人がまだごく一部に限られていることが現状だろう。
日本でパブリックコメント制度の認知がもっと進み、誰もが意見できるようになれば、さらに我々が暮らしやすい社会に近づいていくのではないだろうか。
※1 意見公募手続の概要|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/iken_koubo.html
※2 e-Govパブリック・コメント
https://public-comment.e-gov.go.jp/
※3 パブリックコメント制度(意見公募手続制度)の概要|内閣官房
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jouhouwg/hyoka/dai1/sankou5.pdf
※4 新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた パブリックコメントの結果について|資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/140225_2.pdf
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