出生率低下が問題視される日本。世界の出生率の現状はどうなっているのか、国別ランキング情報から解説する。出生率が高い国、低い国の特徴や理由とともに、今後の予測についてもわかりやすく解説。日本のランキング結果にも注目してみよう。
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今回紹介したランキング結果によると、日本の出生率は1.4。順位は191位と、非常に低いことがわかる。日本以外の結果を見ても、先進国には出生率が低い国が多い。
順位 | 国名 | 出生率 |
133位 | フランス | 1.9 |
142位 | アイスランド | 1.8 |
146位 | ニュージーランド | 1.7 |
149位 | チェコ共和国 | 1.7 |
150位 | アメリカ | 1.7 |
151位 | アイルランド | 1.7 |
152位 | デンマーク | 1.7 |
153位 | スウェーデン | 1.7 |
156位 | オーストラリア | 1.7 |
これら9つの国は、OECD加盟国、いわゆる先進国のなかでも比較的出生率が高い国である。いずれも出生率2.0に届いておらず、今後人口減少が進んでいくと予測されている。
出生率ランキング上位で目立つのは、アフリカの国々である。これらの国々では、人々の教育や充実した医療体制の整備が進んでいないという現実がある。
若い女性が妊娠・出産するケースも多いが、まだ幼いうちに亡くなってしまう子どもも多い。また、「家族の生活を支えるための労働力を確保する」という考え方から、できるだけ多くの子どもを産もうとする風習が残っている。
とはいえ、過去の経済発展と出生率の変化から考えても、出生率が高い状態が継続していくとは考えづらい。経済発展が進むとともに、人々が十分な教育を受けられるようになり、また幼いうちに亡くなってしまう子どもの数も減っていくだろう。女性たちが「多くの子どもを産み育てる」よりも、「経済活動を担う一員」としての役割を重視するようになれば、出生率は徐々に減少するだろう。
出生率が低い国には、日本を始めとする先進国が多く含まれている。女性たちには「子どもを産む」以外の選択肢も多く、より自分らしい生活スタイルを選択。平均初婚年齢の上昇や出産間隔の開きによって、出産回数が減少しがちだ。
日本を含め、出生率が低い国にとって大きな壁となるのが、少子高齢化である。多くの高齢者を少ない若年層で支えるのは、決して簡単ではない。このため、出生率が低い国の多くでは、出生率上昇に向けたさまざまな取り組みを行っている。こうした取り組みの成果が出れば、出生率は上昇に転じる可能性がある。
またフランスでは、一時期出生率が上昇に転じた。フランスには移民が多く、出産回数が多い移民たちによって、出生率が上昇に転じたとも言われている。(※3)
世界全体で見た合計特殊出生率は、徐々に減少傾向にある。1950~55年の平均は5.02であったが、1975~80年の平均は3.92。2000~05年の平均は2.65にまで低下している。この減少傾向は、今後も続いていくと予測されている。(※4)
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なまん延も、出生率に大きな影響を与えている。パンデミックが本格化した2020年の出生数は、多くの国で1~2割程度低下。経済や社会全体への不安感が高まったためだと考えられている。
今後も出生率が下がっていくと、世界ではどのような変化が起きるのだろうか。メリットとデメリットの両方が生じると考えられる。
このまま人口が増加していけば、人口爆発による食糧難が懸念される。出生率が低下し人口が大きく増加しなければ、無理なく食べものを分け合える可能性が高いだろう。また世界人口が減少すれば、排出される二酸化炭素量は低下し、人間の経済活動による環境への悪影響も減少するはずだ。
一方で、出生率の低下により、急激に人口が減少すれば、世界レベルでの少子高齢化問題に直面することになる。高齢者の生活を支えるためには、多くの税金が必要となるだろう。それらを限られた現役世代が担うようになれば、社会全体のバランスが崩壊する可能性もある。
世界の出生率は年々減少傾向にあり、今後も緩やかに低下していくと予測される。女性たちの地位向上や十分な教育によって、子どもを産まない選択をする女性も増えていくと思われるためだ。
とはいえ、急激に減少し過ぎれば、新たな問題が生じてしまう。世界全体での出生率をどうコントロールしていくのかが、今後の課題と言えるだろう。
※16 用語の解説|厚生労働省
人口動態調査 / 人口動態職業・産業別統計 出生|e-Stat
※2 Fertility rate, total (births per woman)|THE WORLD BANK
※3 移民と出生率の高さの関係について|独立行政法人 労働政策研究・研修機構
※4 補章 海外の少子化の動向|内閣府
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