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日本でも注目される「ハラル認証」。そもそも「ハラル」と「ハラム」とは何で、どのようなものが該当するのか。ハラル認証の基準や現状の課題、さらに日本の主な認証機関について紹介する。
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イスラム教は世界三大宗教の一つであり、イスラム教を信仰するムスリム(イスラム教徒)の数は18億人以上と言われる。全世界の人口が78億7500万人だから、およそ4分の1を占めると言える。
そしてイスラムの教えで、「ハラル(ハラール)」と「ハラム」の2つは重要な意味をもつ。「ハラル」とは、アラビア語で「許されている」の意味で、神に許されているものを表す。一方、「ハラム」は「禁じられている」の意味で、口にすることを禁止されているものだ。ムスリムは、このハラルとハラムに注意しながらふだんの生活を送っている。
尚、ハラルとハラムは、宗派や地域、個人によって解釈が異なる場合がある。
ハラルには、穀物、野菜や果物、魚介類などがある。ただし農場から食卓まのフ ードチェーンにおけるすべてのプロセスで、ハラルであることが求められる。
・穀物
・野菜
・果物
・魚介類
・海藻類
・牛乳
・卵
など
ハラムには、次のようなものがある。
・豚肉
・アルコール(飲料用)
・イスラム法に則って処理されていない肉
・血液
など
ハラルとハラムの区別がつきにくいものや、グレーゾーンにあたるものは「シュブハ」と呼ばれる。と畜方法がわからない牛肉や鶏肉などもシュブハにあたり、シュブハは避けられる傾向がある。
豚肉や野菜などの食材なら、ハラルかハラムか区別できる。だが加工品ではさまざまな成分が含まれており、その区別は難しい。そこで生まれたのが、ハラル認証制度だ。ハラル認証を受けた食品には、専用のマークが貼付され、ムスリムが安心して使用できる目印となる。
ハラル認証制度は、1960年頃のマレーシアでスタートした。マレーシアはイスラム教を国教とする国であるが、実際には他民族・他宗教の国民たちで構成されている。さまざまな文化が混ざり合うなかで、どの商品がハラルなのか、見分けるための制度が必要とされた。
隣国・インドネシアは1970年代にハラル認証制度をスタート。その後、この動きは世界中へと広がり、現在では世界に300程のハラル認証の認証機関が存在すると言われている。
ハラル認証はムスリムにとって便利なシステムであるが、課題も抱えている。それは、認証機関それぞれで異なる基準を採用しているため、統一された世界基準がないことだ。基準が異なることで、トラブルが生じる可能性がある。
認証機関によって明確な基準は異なるものの、ハラル認証の主な4つのチェックポイントは以下となる。
豚や豚由来成分、またアルコールなど、ハラム成分が一切含まれていないか確認される。
製造工程や保管の期間にハラムが混合せず、清潔さや安全性、品質が保たれているかどうか。
従業員が、ハラル管理について適切な知識を身につけて対処しているかどうか。
ハラルとハラムがきちんと区別され、管理されているかどうか。
ハラル認証を取得できるのは食品に限らない。化粧品や医薬品なども対象となる。
一般的な食材のほか、加工食品なども含まれる。
化粧品ではアルコールや動物由来の成分が使われることが多い。だが、そのようなハラムを含まない基礎化粧品やヘアケア製品、香水などがある。
病気の治療や予防に使われる医薬品、医療機器など。
ムスリム専用のレストラン、もしくはハラルメニューを提供する飲食店など。
世界に約300もの数があるというハラル認証機関。もちろん日本にも、さまざまな認証機関が存在している。そのなかから主な機関を紹介する。
2010年に発足したNPO法人で、日本国内で暮らすムスリムや、ムスリムの国へ商品を輸出したい日本企業のサポートを行っている。
認証の概要
国際基準にのっとった運営・管理を行っているハラール認証団体。湾岸諸国承認機構(GAC)、UAE承認機関(ESMA)、ISO/IEC17065、GSO2055-2において認定取得。マレーシア政府ハラール認証機関(JAKIM)、インドネシア イスラーム学者評議会(MUI)、シンガポール イスラーム評議会(MUIS)、タイ中央イスラーム機構(CICOT)において承認取得。
対象品目
・食品(加工食品、食品添加物、健康食品含む)
・化粧品およびパーソナルケア
・医薬品
・物流サービス
・キッチン(セントラルキッチン)
・屠畜
・飲食
2013年に発足した機関で、和食文化や美容製品へのハラル認証に力を入れている。日本における業界最高基準のハラル認証の提供とサポート力を強みとしている。
認証の概要
マレーシア・イスラム開発庁(JAKIM)やインドネシア・ウラマー評議会(MUI)、タイ国イスラム中央委員会(CICOT)、中東諸国が構成する湾岸認定機構(GAC)と相互承認を取得。書類審査や現場監査、セミナー実施などを通じて認証を受ける。
対象品目
・食品(飲料、食品原料、食品添加物含む)
・化粧品(化粧品原料含む)
・サプリメント
・酵母
・ミネラル原料
・化学品
など
グローバル化が進むにつれて、日本国内においても、ハラル認証の注目度が高まっている。ムスリムの人々とともに暮らし、お互いの文化を理解し合うためには、必要不可欠な知識と言えるだろう。本記事を参考にして、必要な基礎知識を身につけておこう。
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