フィンランドのラハティにある地ビールメーカー「Ant Brew」が、ガチョウの糞から醸造したという前代未聞のビールシリーズを開発した。野生のハーブやパン、ベリー、フルーツなどの地元の食品廃棄物を主な原料として、ガチョウの糞は麦芽を燻製する際に使われているという。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
フィンランドは、世界でも環境問題への取り組みが活発な国だ。そのなかでも大陸の南に位置するラハティは、環境活動のロールモデルとなる市に与えられる賞「European Green Capital 2021」を受賞するなど、先駆的な活動を行っていることで知られている。
そんなラハティの地ビールメーカー「Ant Brew」は、他に類を見ないユニークな醸造方法で環境問題の解決に取り組む。野生のハーブやパン、フルーツなどの地元の食品廃棄物と、“ガチョウの糞”を使って醸造したビールシリーズを開発したのだ。ガチョウの糞は麦芽を燻製にするのに使われているという。
原材料の糞は、ガチョウによる糞害問題が起きている地元の公園から集められたもの。おかげで糞だらけだった公園から一転、夏のピクニックシーズンにもってこいな空間に変貌を遂げるというおまけつきだ。
ラハティでは、2050年までに完全に廃棄物のない循環経済都市を目指している。市内の家庭ごみの再利用率は驚異の99%を誇る。「持続可能な未来のためには、資源の有効利用と革新的なリサイクル方法が必要です」とヨーロピアン・グリーン・キャピタル・ラハティの広報部長 Saara Piispanen氏は語る。
「ラハティには有名な醸造所がいくつかあります。この夏、私たちの環境を祝うのに、地元で醸造されたビールを飲むのが一番です」。麦芽の燻製工程にガチョウの糞を使用したビールは、夏の終わりに発売される予定だという。
「Ant Brew」の代表であるKari Puttonen氏は、「このシリーズのビールは、食品廃棄物、廃棄物の利用、都市農業、地元の食べ物や野生の食べ物に関して、ビール愛好家たちの間で議論するための私たちの方法です」とも述べている。
「私たちは、固定概念にとらわれることなく、醸造で新しい原料を活用する方法をつねに探しています。環境と循環型経済は私たちにとって重要であり、これらのテーマを興味深い方法で議論したいと思っています」
ビールと糞という思わず一蹴してしまいそうなアイディアだって、先入観を捨てれば違う世界が見えてくる。サステナブルな社会をつくるには、そんな固定概念に囚われない強いマインドセットも大切なのかもしれない。
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