海外企業の先進事例から知る「サーキュラーアドバンテージ」 競争優位性の獲得に必要な取り組みとは

ノートパソコンを開きながら談笑する三人の男女

「サーキュラーアドバンテージ」とは、持続可能な企業理念のもと事業を行う企業が今後競争の中で優位に発展していくだろう、という考え方だ。この記事ではいくつか海外企業の成功例をあげ、どのように活用することができるのか、紹介していく。

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2021.05.24

サーキュラーアドバンテージとは

横一列に並んだ植木鉢

Photo by Markus Spiske

有限な資源を消費し続ける経済活動から、再生可能なエネルギー源の利用に移行し、持続可能な経済活動を構築していくことを指す「サーキュラーエコノミー」。このワードには、「廃棄物と汚染を設計する」「製品や材料を使用し続ける」「自然のシステムを再生する」という3つの原則がある。(※1)

「サーキュラーアドバンテージ」とは、このサーキュラーエコノミーのシステムを取り入れ、持続可能な企業理念のもと事業を行う企業が、今後競争の中で優位に発展していくという考え方である。

2015年に発売された「Waste to Wealth: The Circular Economy Advantage(無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する)」(※2)という書籍の中で、初めてサーキュラー・アドバンテージが提唱され、世界に広まっていった。

この書籍は、2019年に「新装版 サーキュラー・エコノミー ~デジタル時代の成長戦略~」(※3)として日本でも出版されている。

サーキュラーエコノミーの観点から考えるアドバンテージ

タブレットで画像を加工を行う黒人女性

Photo by Photo by Surface on Unsplash

近年の環境問題への関心の高まりから、物欲を満たすために購入するよりも、その物の背景とストーリーで選ぶというかたちに消費者の価値観が変化している。

サーキュラーエコノミーは「無駄」とされる廃棄物などにアイディアをプラスし、再活用。そして利益を生み出す。企業側は仕入れなどの初期費用を抑えることができ、今日の消費者のニーズにも答えることができる。

消費者のニーズに答えられる企業は、投資家などの支援を受けることができ、それがビジネスの発展の後押しにつながる。この現象がまさに「サーキュラーアドバンテージ」と言えるだろう。

注目されているとはいえ、まだ日本での企業のサーキュラーアドバンテージの成功事例は少ない。デメリットをあげるとしたら、新しい分野を開拓していく必要があるという不安、ではないだろうか。

しかし、これはデメリットのように見えて、「まだ開拓されていない広大なブルーオーシャンである」とも言える。以下で、海外でのサーキュラーアドバンテージの成功事例をいくつか紹介したいと思う。

海外企業の成功事例

食品廃棄物を販売するスーパー Sirplus (ベルリン・ドイツ)

賞味期限切れやパッケージ破損などの理由から、まだ食べることができる多くの食べ物を廃棄してしまっていることが、大きな問題になっている。

そこで、その食品廃棄物を集め、再度消費者に販売する、という新しい視点で展開しているスーパーマーケットが「Sirplus(サープラス)」だ。商品はパートナーシップを結んでいる、700もの生産者や卸売業者から日々届けられている。

その画期的な事業から、食品廃棄物に反対するキャンペーンを行うスタートアップとして、ドイツ全体に強い影響力のある会社に成長。

賞味期限切れの商品への常識を覆した「Sirplus」は、2017年創業以来、多くの人たちに支持され続け、ベルリン市内にすでに6店舗ある。

食品廃棄物対策アプリ Too good to go (コペンハーゲン・デンマーク)

こちらも食品廃棄物対策で生まれたビジネスだ。「Sirplus」は店舗を構えて販売しているが、「Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥー・ゴー)」はすべて専用のアプリ上で行われている。

スーパーやレストランで毎日生まれる廃棄食材を格安の「お徳用パック」として販売。消費者自身がアプリを通して予約し、ピックアップするシステムだ。

消費者は通常価格の3分の1ほどの値段でおいしい食事を手に入れ、企業は新しい顧客にリーチし、埋没費用を回収することができる。

デンマークはコペンハーゲンで生まれたこのサービス。テクノロジーを利用して人々をつなぎ、食品廃棄物を削減する力を与えるというアイデアは、多くの投資家が賛同し、すぐにヨーロッパ中(2021年3月現在、11カ国)に展開していった。

サステナブルな検索エンジン Ecosia(ベルリン・ドイツ)

Ecosia(エコシア)」は検索から得た利益を使い、世界の必要とされている場所に木を植えているサステナブルな検索エンジンだ。さらに自社で太陽光発電を行っており、つまり100%再生可能エネルギーを利用してサーバーを運営している。

また、検索から生まれた毎月の財務報告と植林レポートをweb上で公開。それが信頼を獲得し、利用者を伸ばしていった。

会社設立から2年という短期間で、その賢く未来性のあるコンセプトから多くの人々の支援と選択を得て急速に成長。多くの賞も受賞している。

その勢いは止まらず、2021年には新しい事業として、使用すればするほど木が植えられるデビットカード「Tree card(ツリー・カード)」が展開される予定だ。

まだリリースされていないが順番待ちリストがすでに10万人突破(2020年11月時点)しており、こちらも多くの人に注目、支援されている。

正面から手を取り合う恋人同士

Photo by Priscilla Du Preez

成功事例で紹介した内容からわかるように、今の時代は地球にも人にもやさしく、企業と消費者の間にwin-winの関係が成り立つ企業が、多くの支援を受けることができる。誰かのために自分は何を提供できるのか、それを掘り下げていくことが重要な鍵だ。

※1 What is a circular economy?
https://www.ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy/concept
※2 Waste to Wealth: The Circular Economy Advantage
https://www.amazon.co.jp/dp/1137530685/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_RW3D0QCGYE57RYT48TTZ
※3 無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する
https://www.accenture.com/jp-ja/insight-creating-advantage-circular-economy

※掲載している情報は、2021年5月24日時点のものです。

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