フードロスの一因にもなる「規格外野菜」 生産者と消費者、地球にやさしい活用法とは 

平面に習えられたさまざまな種類の野菜

「規格外野菜」とは、大きさや形、色などが、市場で定められた規格から外れている野菜のこと。傷があったり形が曲がっている規格外野菜は市場で流通されにくいため、その多くが廃棄処分されいる。しかし、味や品質は規格品に劣らない。現在、規格外野菜を活用したさまざまなアイデアが生まれている。

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2021.02.17
SOCIETY
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

規格外野菜とは

小ぶりの人参をメジャーで測っている様子

Photo by Charles Deluvio on Unsplash

規格外野菜とは、市場で定められた規格にあてはまらない野菜のこと。野菜は市場で流通させるために、大きさにはS・M・L、形や品質や色にはA・B・Cという分類がされ、重量や傷の有無などの規格が存在する。規格に合わないものは規格外野菜として、味は規格品と変わらないにもかかわらず、そのほとんどが商品として出荷されずに廃棄処分されている。

市場が規格を設ける理由は、取り引きや流通をスムーズにするためだ。出荷や取り引きを簡素化して合理的に行うことで、日によって産地が違う野菜も価格を統一して店頭に並べることができる。加えて、形が整ったきれいな野菜の方が選ばれやすいという、消費者のエゴも関係しているという。

また、規格外野菜を廃棄せずに流通量が増えると、その野菜自体の市場価値が下がってしまう。そうした問題から、農家の方は廃棄する選択をとっているのだ。

年間廃棄量は生産量のおよそ20% 規格外野菜の処理と問題点

畑に実った大ぶりのキャベツ

Photo by Arnaldo Aldana on Unsplash

規格外野菜はどれくらい処分されているのだろうか。農林水産省が発表したデータによると、2017年度の日本のフードロス(食品ロス)は年間612万トン。食品関連事業者による事業系食品ロスのうち、まだ食べられるにもかかわらず廃棄になった食品の総量は328万トンだった(※1)。

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しかし、実は前述した廃棄量に、農家が出荷前に廃棄した規格外野菜は含まれていない。けれども市場に出荷できない規格外野菜の発生率は低くなく、生産量の20%前後になるというデータもある。農林水産省の作況調査では、2018年の野菜(41品目)の収穫量は約1340万トンだが、実際の出荷量は1150万トンだった(※2)。

国際連合食糧農業機関(FAO)も独自に調査した食料ロス数値(FLI)を発表しており、それによると収穫されてから小売の段階に至るまで、世界で生産された食料のおよそ14%が損失しているという。

規格外野菜を活用するメリット

食品ロスや規格外野菜は、SDGsのゴール12番「つくる責任 つかう責任」に関連している。規格外野菜を減らすことで、ごみ処理におけるコスト削減や、可燃ごみ処理による二酸化炭素排出などの環境負荷の低減にもつながるといえる。

こうした状況を打破しようと、規格外野菜を救うための新しいビジネスも生まれている。アメリカでは、規格外野菜の食料配達サービス「Imperfect Produce(インパーフェクト・プロデュース)」が2019年にスタート。同社は、通常は廃棄される規格外野菜を農家から買い取り、スーパーで販売されている定価よりも低価格で販売している。

規格外品は見た目が慣れ親しんでものとは違っても、味や品質は規格品に見劣ることはない。むしろ、規格品として流通している野菜の多くは、見た目やサイズを維持するために、農薬や化学肥料を用いて栽培される場合も多いのが現状だ。

規格外野菜を活かすアイデア

かごに入ったさまざまな種類の野菜

Photo by Iñigo De la Maza on Unsplash

品質に問題がないにもかかわらず、廃棄されてきた規格外野菜。食品ロスへの関心の高まりとともに、活用事例が増えている。

生産者と消費者をつなぐECサイトや直売所

市場では除外されることの多い規格外野菜。日本でも、直売所やECサイトなどで生産者から直接購入することができる。スタイル・フリーは、廃棄されてきた規格外野菜を農家と消費者が直接取引できるウェブサービス「unica(ウニカ)」を2020年にリリースした。ユニークな形の野菜を取り扱うことで、社会課題であるフードロス削減に貢献することを目的としている。

見た目が均一でない規格外野菜も、切ったり調理してしまえば味事態は他の野菜と遜色ない。むしろ、自然な栽培法で育ったこだわりの野菜であることが多い。そこで「REACH STOCK(リーチストック)」では、こうした産直仕入れの課題を解決するオンラインプラットフォームを展開し、生産者と飲食店をつないでいる。

食料品に加工して販売する

規格外野菜を加工することで、新たな価値が生み出されている。例えば「VEGHEET(ベジート)」は、ペーストした規格外野菜をシート状に加工し、栄養素も詰まった色鮮やかな野菜シートである。食材を巻いたり敷いたり、多様な料理に使うことができる。

また、野菜やお米からつくられた口に入れても安全な「おやさいクレヨン」、廃棄予定の野菜や食材を染料として再活用する「FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)」が、「コンバース」とコラボレーションしたスニーカーなど、食品とは異なる活用術も注目だ。

寄付として活用するフードバンク

食べられるのに処分されていた食品の寄付を募り、福祉施設などに提供するフードバンクでは、規格外野菜も対象となる。廃棄せざるを得ない一方で、食べ物に困っている人も存在する。需要と供給のバランスを埋めることにつながる。

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規格ではない、個性を愛でて野菜を楽しむ

丸皿に盛られたサラダ

Photo by Anna Pelzer on Unsplash

見た目の規格からはずれているものの、手間暇かけてつくられた規格外野菜。しかし、自然の中で育つ野菜は、そもそも形や大きさがふぞろいなものである。私たち一人ひとりがそれらを個性として受け入れたり、地産地消の消費を心がけることで、規格外野菜の廃棄を減らす一歩へとつながるはず。

また、規格外野菜や食品ロス問題の解決は、環境面で見れば耕作に使われる水の削減・土地の保全にもなる。規格にとらわれることなく、自然の恵みに感謝し、これからの農業と食事について考えていきたい。

※1 食品ロスとは|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
※2 作況調査(野菜)|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/#r

※ 参照サイト
もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう|政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html
食品ロス・食品リサイクル|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/index.html
Food and Agriculture Organization of the United Nations(FAO)
http://www.fao.org/home/en/
世界農業食料白書
http://www.fao.org/3/ca6122ja/CA6122JA.pdf

※掲載している情報は、2021年2月17日時点のものです。

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