日本企業に広がる「ステークホルダー資本主義」の考え方 普及の背景と推進するメリットとは

日本のオフィスビルディング

企業は株主だけでなく、従業員や地域・社会などあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきだという「ステークホルダー資本主義」が世界中で波及している。本記事では、日本企業におけるステークホルダー資本主義の関係性や、考え方が普及した背景を紐解きながら、メリットと課題について解説する。

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2021.01.31
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ステークホルダー資本主義のデメリットと課題

企業の社会課題への貢献は、外面のパフォーマンスだという批判

企業は、長年社会的責任(CSR)を重視してきたものの、貧困格差の拡大や気候変動への解決に結びついていないという批判もある。

だが、近年では機関投資家が企業のステークホルダーに対する説明能力、外部環境の変化への対応、そして社会課題を中長期で事業として市場化できるかを評価対象としたことで、企業の事業を通じた取り組みも加速している。

事業活動によるカーボンニュートラル(低炭素化社会)の実現や、サプライチェーンマネジメントに取り組む企業の増加などに期待がかかる。

経営者のコミットとIR、CSR広報力が、企業間格差や投資家からの評価の差を生む

ステークホルダー資本主義の普及で、企業のステークホルダーへの考え方の説明が求められる中、企業内で情報開示に手が回らない企業と、熱心に取り組む企業との差が広がると考えられる。

また、ESG投資の普及により、投資機関は企業が設定・開示した持続的成長にとっての機会とリスクを踏まえた重要課題(マテリアリティ)の達成度からも、企業の取り組みを評価している。ステークホルダーとの関係性構築にはIR・CSR広報活動がますます重要とされ、経営陣の意思によりどこまでコミットできるどうかかが鍵となる。

先進的な企業の動き

下から見上げた高層ビル群

仏食品メーカー「ダノン」は使命を果たす会社へ

ダノンは、フランスで19年に新たに始まった制度「使命を果たす会社」に初めて選定され、ステークホルダー資本主義において世界的に抜きん出た企業として知られる。

同社は定款に「地球自然資源の保全」など4つの目標を加え、株主価値の向上と社会・環境課題の解決を両輪として活動することを明記した。従業員や社会・環境などのステークホルダーへ、法的に義務を持たせたことが評価を受けている(※3)。

米ブラックロック、ステークホルダー資本主義の重要性を言及

世界最大の資産運用会社であるブラックロック。ラリー・フィンクCEOは、2018年に投資先企業出したレターで、「企業の継続的な発展には、優れた業績をあげるのみならず、社会にいかに貢献していくかを示さなければならない」と述べた。(※4)

欧州では、ESG投資の視点がなければ、運用会社は投資家から資金を預けてもらうことはできないことにも述べている。同社のレターは、企業がステークホルダー資本主義に取り組むうえで強く影響を与えるものとなった。

社会との共生に取り組む「サントリー」

2020年のダボス会議にも出席したサントリーは、企業活動で出た利益を、投資のみならず顧客・取引先・社会貢献に使う「利益三分主義」を実践してきた(※5)。

サントリーグループとして創業精神である「水と生きる」を社会と約束する同社は、カーボンニュートラルの取り組みやプラスチックの使用を最小限とする取り組み、天然水を育む活動などを行っている。日本において長年ステークホルダー資本主義を貫いてきた企業だと言えるだろう。

ステークホルダー資本主義化による変化とこれから

2020年の新型コロナによって、それぞれの業界・企業で価値観や企業風土の違いが浮き彫りになった。業績へ打撃を受ける企業があれば、新たなビジネスチャンスで成長する企業、自社の社会的責任を問い直す企業など、事業環境によってあらゆる方向へ向かわせた。

日本で普及し始めていたESG投資やCSR、SDGsへの取り組みが止まってしまうのではないかという懸念もあったが、Withコロナ時代で企業として生き残るためには、事業における機会とリスクをしっかり把握し直すことが大切だ。

サスティナビリティと経営の統合、ステークホルダーとの関係構築について、向き合う企業はむしろ増加していくと考えられる。

※1 Business Roundtable Redefines the Purpose of a Corporation to Promote ‘An Economy That Serves All Americans’|Business Roundtable
https://www.businessroundtable.org/business-roundtable-redefines-the-purpose-of-a-corporation-to-promote-an-economy-that-serves-all-americans
※2 ビジネスラウンドテーブルと「企業の目的に関する声明」について意見交換|一般社団法人 日本経済団体連合会
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2019/1205_11.html
※3 The Davos Agenda|WORLD ECONOMIC FORUM
https://www.weforum.org/events/the-davos-agenda-2021
※4 DANONE ENTREPRISE À MISSION
https://www.danone.com/fr/about-danone/sustainable-value-creation/danone-entreprise-a-mission.html

※5 LETTER TO CEO 2018 A Sense of PurposeBlackRock
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/about-us/ceo-letter-2018
※6 サントリーグループの理念体系|サントリー
https://www.suntory.co.jp/company/philosophy/

※掲載している情報は、2021年1月31日時点のものです。

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