SDGsの達成に貢献したい。でも、何をしたらいいかわからない。そんなふうに思っている人は、映画をヒントにしてみてはどうだろう? この記事では、環境問題をはじめ差別やジェンダーなどがテーマの映画を紹介する。難しそうなテーマでも、工夫しだいで楽しく学び、アクションを起せるはずだ。
ELEMINIST Editor
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2021年となった今年は、SDGsの達成期限である2030年へあと9年という年だ。昨年からは「行動の10年」として、より具体的なアクションが求められてきた。
といっても、やはりまだ「興味や聞いたことはあるが強く関心を持てない」「なんだか“意識高い系”な感じがして敬遠している」という方も多いだろう。もちろん、熱意はあるがまだ調べ始めたばかりだという方もいるはずだ。
そこで「おうち時間」が求められているこのお正月休み、その時間を使ってまずは映画から学んでみてはいかがだろうか?きっとどのテーマも身近に感じさせてくれるはずだ。
Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ』シーズン1~5独占配信中
『クィア・アイ』は、社会から求められる規範や格差、ジェンダーステレオタイプ、人種差別など、さまざまな理由から自信を失ってしまった人間が、自分への「愛」を獲得する様を描いた作品だ。
番組の構成としてはシンプルで、1時間ほどのドキュメンタリー・シリーズとなっている。
アメリカを舞台に、悩みを抱え自信を失ってしまった依頼者に「ファブ5」と呼ばれる5人組が、依頼者がもう一度自分に自信が持てるようにサポートしていくという内容だ。
Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ』シーズン1~5独占配信中
ファブ5のメンバーは、ファッション担当のタン氏、カルチャー担当のカラモ氏、インテリア担当のボビー氏、料理担当のアントニ氏、美容担当のジョナサン氏の5人だ。
自信たっぷりで明るく見える5人だが、番組中ではそれぞれ複雑な背景や過去があったことも伝わってくる。そんな5人が依頼者にかける言葉は、とても愛に満ち溢れていて、画面のこちら側にいる我々をも勇気づけてくれる。
そして、いかに「こうあらねばならない」というつまらないステレオタイプが、自分も他人も苦しめていたことを気づかさせてくれる。
Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ in Japan!』独占配信中
とくに舞台を日本に移した『クィア・アイ in Japan!』では、より身近に感じられる悩みが多い。生きづらさを感じている人や、差別・ジェンダーについて学んでみたいと考えている人はぜひ観てみてほしい。
Netflixオリジナルシリーズ『ザック・エフロンが旅する明日の地球』独占配信中
SDGsにおいてもとりわけ差し迫った問題である気候変動(気候危機)。時間がないということもありシリアスなテーマだが、とっつきにくい問題の1つでもあるだろう。
『ザック・エフロンが旅する明日の地球』は『ハイスクール・ミュージカル』や『グレイテストショーマン』などでも知られる人気俳優、ザック・エフロン氏が世界を飛び回る、ドキュメンタリー・シリーズだ。
2020年7月に公開された作品で、気候変動をはじめとする、持続可能性について横断的に学ぶことができる。各回は1時間ほどと、ボリュームもたっぷり。
Netflixオリジナルシリーズ『ザック・エフロンが旅する明日の地球』独占配信中
作品内では、ニューヨークやロンドン、フランス、アイスランド、コスタリカまで世界中を旅しながら、再生可能エネルギーや水・食べ物などについてさまざまな「エコ発明家」に話を聞いていく。
この番組では、各国で体験するサステナブルな取り組みと並んで、食が重要な要素の1つとして扱われているのが特徴だ。
Netflixオリジナルシリーズ『ザック・エフロンが旅する明日の地球』独占配信中
食は、肉食中心の生活の環境負荷が取り沙汰されているように、その土地の文化や社会、そして地球と地続きのものだ。
実際に足を運びながら、その土地の食べ物を食し、自分ごととして地球について思いを馳せる姿は、我々にとっても身近な問題として考える機会を与えてくれるだろう。
Netflix映画『チェイシング・コーラル -消えゆくサンゴ礁-』独占配信中
『チェイシング・コーラル -消えゆくサンゴ礁-』は、2017年7月に公開された、気候変動によって絶滅の危機を迎えているサンゴの変化を追いかけた、2時間ほどのドキュメンタリー映画だ。
地球温暖化による海水温の上昇に端を発する、深刻なサンゴの白化現象について描かれていく。
Netflix映画『チェイシング・コーラル -消えゆくサンゴ礁-』独占配信中
サンゴとそれが織りなすサンゴ礁は、それ自体が海の複雑な生態系の基盤となる重要な役割を果たしており、絶滅による影響は人間の生活にまでおよぶ。作品内では、サンゴ自体の生態から、その共生社会が詳しく解説されている。
この作品は、海中での長期間の定点撮影を、わずかな準備期間で行うということで、撮影方法も面白い。水圧や汚れ、海中への固定といったトラブルや課題をどう解決するのか、映画の撮影ドキュメンタリーとしても面白い内容に仕上がっている。
Netflix映画『チェイシング・コーラル -消えゆくサンゴ礁-』独占配信中
しかし、作品内で描かれるサンゴの深刻な状況には、興味を持っていなくても胸を痛めてしまうような切実さがある。この数年の間で起きた大量死の事実を描いた映画として、チェックしておくべき作品の1つだ。
ちなみに、作品内で撮影された仮想ダイビングを「Google Earth」で体験できる。興味を持った人はぜひアクセスしてみてほしい。
Netflixオリジナルシリーズ『キラー・マイクのきわどいニュース』独占配信中
ヒップホップグループ「RUN THE JEWELS(ラン・ザ・ジュエルズ)」のラッパー、キラー・マイク氏が破天荒なアイディアで格差や差別といった問題に向き合う『キラー・マイクのきわどいニュース』(2019)。
各回30分ほどと気軽に観ることのできるボリュームと、キラー・マイク氏の破天荒なキャラクターで楽しく観ることができる。
性的な内容も含まれるので、視聴する際は十分留意してもらいたいが、このドキュメンタリーシリーズが面白いのは、当事者視点からの素直な課題感と対話の姿勢だ。
Netflixオリジナルシリーズ『キラー・マイクのきわどいニュース』独占配信中
例えば、第1話では「3日間黒人にだけお金を払う」というルールで、黒人コミュニティにお金を落とす方法を模索するキラーマイク。しかし、食事や水もままならず、白人抜きには成立し得ない現代アメリカ社会の実情が描かれる。
一方で第2話では、就業率などの問題から既存の学校システムを疑問視し、求職者向けにジェンダーや人種を超えた、誰も損しない「教育用ポルノビデオ」をつくろうとする。
一般的な公序良俗からはかけ離れたアイディアだが、専門家の話を柔軟に取り入れた先のアイディアだと考えると、彼の真剣さがうかがえる。
Netflixオリジナルシリーズ『キラー・マイクのきわどいニュース』独占配信中
そのほかにも、ギャングたちの抗争を解決し、イメージを改善するためにオリジナルコーラや、黒人のためのキリスト教、政治的思想を超えたコラボ曲、果ては国づくりまで、突飛でユニークなアイディアが続出。
黒人やアメリカ社会が抱える構造的な問題を克明に映し出しながら、日々問題と向き合う姿勢と実践、そして対話の繰り返しによってより良く問題を解決しようとする姿からは、得られるものが多いはずだ。
Netflix映画『Okja/オクジャ』独占配信中
2017年5月に公開された、ポン・ジュノ監督による韓国映画『Okja/オクジャ』は『クィア・アイ』と同じくご存知の方も多いだろう。
環境負荷が少なく、食糧危機を解決するスーパー・ピッグ「オクジャ」と、少女「ミア」の家族愛を通じて、食肉産業や肉食、さらに言えば命を奪わずには生きることができない「人間」そのものについて問いかけている。
Netflix映画『Okja/オクジャ』独占配信中
基本は勧善懲悪の形態を取りつつも、味方役として設定されている動物愛護団体「ALF」も、ある種目的のために動物を犠牲にしている側面がある。
愛らしいオクジャとミジャの触れ合いやコミカルなタッチで親しみやすくも、扱っているテーマは重厚。2時間という枠のなかにさまざまな示唆が含まれており、率直に言ってしまえば深く考えさせられる作品だ。
Netflix映画『Okja/オクジャ』独占配信中
格差や社会への風刺的な描写を得意とするポン・ジュノ監督だが、今作でも単なる脱肉食という問いかけに終始しておらず「環境負荷が少なく、食糧危機を解決する」という設定によって、一概に答えを出すことが難しいテーマになっている。
考えれば考えるほど悩ましくなるが、このテーマに至っては考えすぎるということもないだろう。自らの食事に重要な視点をもたらしてくれるはずだ。
食肉業界や環境についてのドキュメンタリー映画は、シリアスなテーマがゆえに胸を痛めるシーンも多くなりがちで、精神的な負担も大きい。対して、今回紹介した番組や映画は、比較的楽しく気軽に学べることができるだろう。
現在SDGsについては、達成期限として2030年が掲げられており「行動の10年」というのが呼びかけられている。
こうした映画で学んだ後は、ヴィーガンの日をつくってみる、ごみを減らしてみる、ペットボトルを避けてマイボトルを持ち運んでみるなど、身近なレベルからでもアクションを起こしてほしい。積み重ねれば、大きな力となるはずだ。
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