大掃除の季節、もしも不要になった洋服が出たならば、捨てるのではなく染め直しをしてみてはどうだろう? 自宅で簡単にできる洋服の染め方について、東京都・蔵前に草木染工房を構える「マイトデザインワークス」の小室真以人さんにお話を聞いてみた。
小嶋正太郎
農家 / 編集者
元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。
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いよいよ年末の大掃除シーズンだ。要らない洋服を処分しようとしている人もいるかもしれないが、少し考え直してほしい。
捨てようとしているその洋服は、本当に着られなくなっているだろうか? トレンドに左右されているだけでは? そのような考えから処分するなら、染め直すという選択も考えてみてはどうだろう?
洋服の染め直しには、大きく分けて2つの方法がある。依頼を受け付けている染色工房に送るか、自宅で自分で染めるかだ。
年末で時間に余裕ができる人も多いだろう。この記事でフォーカスする自宅で洋服を染める方法を、ぜひ実践してみてほしい。
染め直ししたシャツ
自宅で洋服を染める方法を紹介するにあたり、お話を伺ったのは東京都・蔵前に草木染工房を構える「マイトデザインワークス」の代表取締役、小室真以人(こむろ・まいと)さん。
小室さんに伺ったコーヒーの出がらしで染める方法を、気をつけるべきポイントも含めて手順を追いながら紹介したい。
◎材料
・染め直したい洋服
・豆乳(洋服が浸るくらいの量)
・ミョウバン(乾いた洋服の重さの15%以上)
・コーヒーの出がらし(10杯〜20杯分)
・計量器
・温度計
・菜箸
・漉すための布
・ステンレス鍋 もしくは アルミ鍋
・ざる×2(可能であれば)
・バケツ×2(可能であれば)
染め直したい洋服には、小室さんのアドバイスを元に、麻100%の薄手のシャツを用意した。また、豆乳にも注意する点があるのであらかじめ確認しておきたい。
「大前提として、コーヒー染めをする場合に色が入りやすいのは綿や麻、竹、和紙などの植物性素材です。レーヨンも木材パルプが主原料なので染めることができますよ。化学繊維だと難しいので気をつけてくださいね。
材料を用意する際のポイントは、成分無調で大豆の成分がまるごと入っている豆乳を使用すること。豊富なタンパク質がコーヒーの色素をよく吸収してくれて、シャツに多く染み込ませられるんです。
それからお湯を使うので、ゴム手袋を用意できたら作業しやすいと思います」
◎下処理
1. 豆乳100mlと40〜50℃のお湯1Lをバケツに入れる。
2. ボタンをすべて開けて、シャツを浸す。
3. シャツを揉み込み、たんぱく質を吸収させる。
4. シャツをかたく絞り、乾かす。
5. 1〜4の手順を3回繰り返す。
「仕上がりにムラが出てしまう可能性があるので、シャツを染めるときは、忘れずにボタンを開けてください。3回繰り返す理由もまた、ムラをなくすためです。1回でできなくもないのですが、あまりオススメはしませんね」
6. シャツを水に濡らす。
7. ミョウバンと、60℃のお湯5Lをバケツに入れる。
8. バケツにシャツを入れ、30分ほど菜箸でかき混ぜる。
9. シャツを水洗いする。
「6〜9の手順で色止めをしています。シャツを混ぜる時はバケツのなかで泳がせるイメージでやってみてください。グルグル回すだけだとミョウバンが均等に染み込んでくれず、色止めとしての効果が薄れてしまいます」
◎染液づくり
1. コーヒーの出がらしをステンレス鍋もしくはアルミ鍋に入れる。
2. 鍋に水4Lも加えて火にかけ、10分程度沸騰させる。
3. ざるとざるの間に漉し布をはさんで、バケツにセットする。
4. 2を濾す。
「コーヒーの出がらしは、多ければ多いほどいいと思います。出るのは毎回少量ですが、袋に入れて冷凍保存しておけば、カビも生ずに貯めておけます。
鍋はアルミかステンレス製を使用してください。ホーロー鍋などは鉄が含まれていたりして、鉄分が染液に加わってしまうと変色の原因となってしまいます。
染液が薄くなりそうで不安だったら、出がらしから色を出している間に重曹をひとつまみ入れると、染液がアルカリ性になって色が濃くなります。初めてだと戸惑うことも多いと思いますが、まずは試してみるのがいいと思います。その仕上がりを完璧に予測できないのも染め物の楽しみです。
この後の工程で実際に染めますが、染液が温度が高いほうが色がよく浸透します。なるべく冷まさないようにスピーディーにやることを意識してみてください」
1. 下処理をしたシャツを、バケツのなかの染液に浸す。
2. 10分〜15分間かき混ぜる。
3. バケツから取り出し、水で洗う。
4. 乾かしたら完成。
「シャツを染液に入れる時は、首元を持って、空気を逃がしながら浸してください。そうすれば仕上がりにムラがなくなります。日光にあたると色が落ちてしまう可能性があるので、必ず日陰干しは守ってくださいね」
今回はコーヒーの出がらしで染め直したが、小室さんによれば、ビーツや紫キャベツ、ドングリ、紅葉など、あらゆる植物で洋服を染めることができるという。
さらに、すべて自然界にあるものを使うので地球を害することはないとも教えてくれた。
コーヒーで染めるとベージュ色に仕上がるが、もっとカラフルな染めにチャレンジしてみたいと思った人は、マイトデザインワークスが販売している「草木染体験キット」を試してみてもいいかもしれない。写真つきの手順書も同梱されているので、初めてでも安心だ。
もしも要らない洋服があったら、小室さんに教えてもらった手順を参考に染め直しをしてみてはいかがだろうか?
小室 真以人(こむろ ・まいと)さん
1983年福岡で生まれ、東京で暮らす。福岡県朝倉市秋月に越し、家業の草木染工房で草木染めに触れる。東京藝術大学美術学部工芸科で染織を専攻。在学中伝統技法を学ぶ傍ら、革の草木染めなどの新しい技術表現を模索。2007年にホールガーメントニットを導入と技法を習得。2008年、自身のニットブランド「MAITO」をスタート。2010年に株式会社マイトデザインワークス設立。同年、東京都台東区上野の2k540に直営店を出店。2012年東京都台東区蔵前にアトリエショップをオープン。
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