デンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く建築設計事務所「3XN」と研究開発部門「GXN」が手がけるホテル「Hotel GSH」は、カーボンネガティブを達成しようとしている。家具を製造する際に出た廃材を使用するとともに、客室には複数の天窓を設置し照明を使う機会を削減するという。
小嶋正太郎
農家 / 編集者
元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。
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ようやく日本でも気候変動に対する意識が変わってきたように思うが、環境先進国のひとつとして知られるデンマークでは、すでに解決策となり得るホテル「Hotel GSH」が建設途中だ。
捨てられるはずだったモノに価値を見出す──。いくつかの工夫を凝らすことで、二酸化炭素を排出する量よりも吸収する量のほうが多いクライメートポジティブ(カーボンネガティブ)を実現しようとしている。
設計とデザインを担当したのは、デンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く建築設計事務所「3XN」とその研究開発部門「GXN」。彼らが狙うのは、同国初となるクライメートポジティブな建築だ。ちなみに、ホテルのオープンは2021年予定。
「GXN」を創設した建築家Kasper Guldager Jensen氏は、その将来性について、以下のように語っている。
「アイデアとしてはシンプルです。私たちは、いいデザインといいビジネスが組み合わさったクライメートポジティブな建築の可能性を信じています。いま観光の目的は多様化していて、Hotel GSHは未来のクライメートポジティブなあり方を示す予定です。こうした体験は観光をする価値となり、クライアントのためのいいビジネスになります」
深刻化する気候変動対策としてはもちろんのこと、これからの世界で当たり前になるだろうクライメートポジティブな建築に泊まれることが、たくさんの観光客を呼び寄せると考えているのだ。
そう聞くと「体験してみたい」と考える人も少なくないだろう。「3XN」によれば、アップサイクルに力を入れるとのこと。
「Hotel GSH」の一部となる木材は、家具などを製造する際に出たものを使用するという。また、地元企業から花崗岩の採掘するときに出る塵を回収し、飾りとしてあしらう予定だ。
部屋には多くの天窓を設置し、照明を使う機会を削減。なるべくオープンにされたスペース設計は風通しをよくするためとのこと。
Kasper Guldager Jensen氏によれば、この「Hotel GSH」の建築は観光客だけでなく多くの企業にも参考にしてほしいという想いがあるようだ。
「デンマークが国として私たちの気候変動に対する目標を達成したいと考えるなら、建設業界は考え直し、行動を改める必要があります。この建築は、そうする際に灯台となり得るような可能性があるのです」
「3XN」と「GXN」が手がけるホテルがクライメートポジティブとなれば、間違いなく世界をリードする存在になるだろう。……となったときに、周囲はどんな反応をするのだろうか?
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