食べ残しを持ち帰る容器「ドギーバッグ」の活用でフードロス削減 日本も普及に向けて本腰

テーブルに積まれたドギーバッグ

外食で食べきれなかった料理をドギーバッグで持ち帰る。欧米では一般的な行動だが、日本でも徐々に推進の動きが広がりつつある。ドギーバッグで食べ残しを持ち帰ることにより、フードロス削減への貢献も期待できる。

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2021.01.21
SOCIETY
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ドギーバッグとは?

ドギーバッグとは、レストランやパーティーで食べ残した料理を持ち帰るための容器や袋を意味する。英語ではdoggy bag(またはdoggie bag)と表記されるように、もともとは飼い犬のために食べ残しを持ち帰るという建前で用意したものだ。

発祥は古代ローマまで遡ると言われている。食事への感謝の印として、残り物をきれいなナプキンで包む習慣がその始まりだ。だが近現代で有名な広がり方は、第二次世界大戦中のアメリカだろう。

食糧不足の戦時下、ペットの餌も当然不足する。そこで主人の食べ残しを持ち帰り、ペットに与えるよう奨励されたのだ。以来ドギーバッグはアメリカ国内で広がりを見せ、1970年代には完全に定着した。なお、そのころにはペットだけではなく人間のための持ち帰りも含まれるようになっていた。

ドギーバッグの用途は主に食べ残しの持ち帰りだ。国や地域によっては外食で食べ残した料理を持ち帰ることになじみがないが、ドギーバッグ文化が浸透した国では全く問題視されない。アメリカではハイクラスのレストランでも食べ残しを持ち帰るかスタッフが質問する。

ヨーロッパでもフランス以外では持ち帰りに対する抵抗が少なく、当たり前の行動として日常的に行われている。店のスタッフに持ち帰りたいと言えば箱に詰め直してくれるし、少し安い店でも持ち帰り用の箱を渡してくれる。料理の無駄を極限まで減らすことができるのだ。

このドギーバッグ文化が日本でも注目され始めている。日本が抱える大きな環境問題、フードロスの解消につながる可能性があるからだ。

ドギーバッグがフードロス削減に役立つ

ベンチに置かれた紙袋

Photo by Brigitte Tohm on Unsplash

日本のフードロスは年間で約612万tにのぼる。世界の飢餓層への食糧援助量は年間で約390万tだ。日本では実に1.6倍ものフードロスが発生していることになる。近年、このフードロスを深刻視する動きが広がっている。(※1)

フードロスの解消のため、フードドライブやフードバンクをはじめとしたさまざまな方法が模索されている。ドギーバッグもその一環だ。

外食産業で発生する食べ残しはフードロスのなかでも高い割合を占めている。612万tのフードロスのうち、127万tが外食産業によるものだ。ドギーバッグを利用した持ち帰りが浸透すれば、その割合を減らすことができる。

フードロス解消への貢献だけではない。店には廃棄コストの節約につながるメリットがある。客は気に入った店の経営を助けられるという、小さな満足感も味わえるだろう。

世界のドギーバッグ事情

前述の通り、アメリカやヨーロッパではドギーバッグ文化が浸透している。提供される料理がボリュームたっぷりということも影響しているだろう。なお、最近では「ドギーバッグ」と言わず、単なる「Box(ボックス)」と呼ぶ人やレストランが増えている。

どのレストランでも容器、袋を用意しているため、一言頼めばすぐに持ち帰りができる。ただ、最初から食べきれない量を提供するレストラン側の意識の改善も必要だという指摘もある。

このように持ち帰りが文化として定着している欧米だが、ドギーバッグに対して消極的なのがフランスだ。持ち帰りをマナー違反として捉える向きもある。2016年には持ち帰り用の容器を用意する法律が制定されたが、持ち帰りをする国民そのものが少ない状況だ。

フランス政府はフードロス問題を重要視しており、2021年までにドギーバッグの利用を義務化する法案の採択を目指す。ドギーバッグの名称を「グルメバッグ」としたり、デザイン性の高いバッグを提供することによって国民の関心を集め、啓蒙活動を行っている。(※2)

ドギーバッグが浸透しているのは一部を除いた欧米だけではない。アジアでは中国、台湾でもスタンダードなアクションである。とくに中国では食べきれないほどの料理でもてなすことが美徳であるという古くからの文化と、近現代のフードロスへの危機感が同時に影響し、ドギーバッグ導入への抵抗が少なかった。

日本でも普及が進むドギーバッグ

紙袋に入ったバケット

Photo by Bas Peperzak on Unsplash

2019年10月、日本では「食品ロスの削減の推進に関する法律(略:食品ロス削減推進法)」が施行された。

食品ロス削減推進法の施行を受け、環境省ではドギーバッグの普及のため、啓発の一環としてドギーバッグコンテストを開催した。プロのデザイナーだけではなく子どもや学生、一般の人々も応募できるコンテストは好評を博し、日常生活の中で使いやすいドギーバッグデザインが集まっている。(※3)

法整備以前から、日本のドギーバッグ普及活動は思いのほか早くはじめられている。2009年に容器メーカー・広告代理店・研究者の有志で「ドギーバッグ普及委員会」が設立され、特定非営利活動法人として活動を続けているのだ。

ドギーバッグ普及委員会では持ち帰りがしやすいボックスをし、啓蒙活動に役立てている。携帯性・デザイン性に優れたボックスは、持ち帰りに消極的な店と持ち帰りたい客の意識的ギャップを埋める効果が期待されている。

同時に食中毒の発生を懸念する店側の心理的負担を軽減するため、「持ち帰りガイドライン」「自己責任カード」を作成した。

ドギーバッグ普及委員会にはだれでも登録・参加することができる。店側でも客側でも立場を問われない。スターターキットとしてボックス、トートバッグ、自己責任カード、普及用フライヤーが送付される。

登録だけなら無料、スターターキットを希望するなら初回だけ費用が必要だが、そのあと一切の費用は発生しない。

ドギーバッグ普及委員会の活動は食品ロス削減推進法の成立・内容に大きくかかわっている。今後もドギーバッグ普及の中心として活動していくことが期待される。

ドギーバッグで手軽にはじめるフードロス削減

食品ロス削減推進法の成立により、ドギーバッグはますます注目されるものになっていく。生活の中で手軽に持ち歩けるドギーバッグは、フードロス問題の解消に向けて大きなメリットをもたらすだろう。フードロスが多い日本での普及と定着は早急に進められるべきだ。ドギーバッグ普及委員会だけではなく、国や自治体の対応も必要である。

※1 食品ロスについて知る・学ぶ|消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/
※2 食品ロスの現状を知る|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
※3 Newドギーバッグアイデアコンテスト 受賞者を発表!|環境省
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/contest.html

※掲載している情報は、2021年1月21日時点のものです。

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