近年深刻化する気候変動。その背景には、工業化に伴う温室効果ガスの増加だけではなく、破壊されてきた「土」も大きな関係がある。土を通していかに気候変動にアプローチしていくのか? 自然との共生について新たな視点が得られる『キス・ザ・グラウンド: 大地が救う地球の未来』を紹介する。
Mari Kozawa
ライター
一般社団法人TSUNAGU理事。2018年エシカルファッションブランド「TSU.NA.GU」にジョインし、ビジネスモデルの設計や生産者と消費者のコミュニケーションづくりを通して、ファッシ…
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制作:2020年(アメリカ) 上映時間:1時間14分時間
気候変動への理解度 ★★★★☆
私たち人間の生活にとって欠かせない「土」。社会の工業化に伴って傷ついた土壌は、砂漠化をはじめとした気候危機につながっている。工業化はそれだけでなく、農業や畜産などの産業でいま解決すべき数々の問題や土壌とも関係している。
本作品は、私たちの命の循環に欠かせない存在である「土壌」に焦点を当て、その仕組みや私たち人類との関係性にまで明らかにする。自然との共生について新たな視点が得られる長編ドキュメンタリー映画だ。
この映画のなかでもとくに印象的だったのが、「リジェネラティブ」というアプローチだ。リジェネラティブは「再生」を意味している。もっと突き詰めて言うと「繰り返し生み出す」という言葉だ。実際に世界各地で実践されているリジェネラティブな取り組みも紹介されていて魅力的だ。
「Think globally, act locally」という言葉も思い出した。
この映画では、土壌汚染が私たち人間や自然環境の深刻な問題をもたらしていることがよくわかる。ただ、世界規模の大きな問題を知ると、その解決のために自分自身は一体何ができるのか、わからなくなってしまうこともあるはずだ。
この作品は、土壌に関わるさまざまな社会課題に焦点が当てつつ、解決策になる実際の活動も取り上げる。それにより、私たち一人ひとりができることに思いを巡らせることもできる。例えば、オーガニックの食品を購入したり、地元の有機農法のコミュニティガーデンを訪問することも、一つの「できること」なはずだ。
意思を持って行動する人が増えていけば、結果として問題の根本にアプローチできる日が来るかもしれない。そうポジティブな考え方にさせてくれる作品だ。
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