値段ではなく“二酸化炭素量”を記載すべき 北欧ブランドに学ぶ、これから時代のレシートのあり方

スウェーデンのメンズウェアブランド「Asket」が、値段ではなく「二酸化炭素の排出量・水の使用量・エネルギーの消費量」を掲載したレシートを発行する「The Impact Receipt」プロジェクトを開始した。2021年の中頃までにすべての商品が対象になるという。

小嶋正太郎

農家 / 編集者

元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。

2020.11.09
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Tシャツ製造で排出される二酸化炭素は1.89kg

多くの人たちが消費をするうえで環境に対する影響を考えるようになった。その具体例として、アメリカ発のアパレルブランド「EVERLANE(エバーレーン)」に注目が集まっていることが挙げられるだろう。日本でも「透明性」という言葉は重要になりつつある。

そんななか、スウェーデンのメンズウェアブランド「Asket」は、より透明性を高めるために画期的なプロジェクトを始めることに。

値段ではなく二酸化炭素の排出量を記載したレシートを発行しているのだ。

「The Impact Receipt」のイメージ画像①

プロジェクトの名前は「The Impact Receipt」。値段ではなく洋服が製造される過程のインパクトを記載しようという趣旨だ。

その詳細を説明する前に、実際に「Asket」がプロジェクトを実施するにあたり、スウェーデンの調査機関「RiSE」とパートナーシップ契約を結び、2年という月日を投資していることは特筆すべき点だろう。おかげでサプライチェーンをくまなく調べることができたという。

レシートに記載されているのは、「原材料・裁断・製造・仕上げ・輸送」という項目に対する「二酸化炭素の排出量・水の使用量・エネルギーの消費量」だ。それらを合計したものを「真のコスト」と表現している。

The Impact Receiptに書き込む人

たとえば、Tシャツの「真のコスト」は……二酸化炭素の排出量は1.89kg、水の使用量は35.1㎥、エネルギーの消費量は44.1MJ(メガジュール)なのだとか。

Tシャツのほかにも、オックスフォードシャツやセーター、パンツの3商品を購入したら「真のコスト」を知ることができる。「Asket」によれば、2021年の中頃までにすべての商品が「The Impact Receipt」の対象になるとのこと。

ビジネスへの責任を表す「The Impact Receipt」

生産価値で使用された素材のイメージ

「Asket」が消費者に伝えたいメッセージは、サステナビリティを実現する前に責任を持ってビジネスをおこなっているというもの。「真のコスト」を知ったうえで、洋服を着る頻度や捨てるタイミングを考えてほしいようだ。

「Asket」の創設者August Bard-Bringéus氏は、「The Impact Receipt」の実施背景をこう語る。

「ファッション業界は地球上の資源がもっとも集中している業界のひとつですが、いま、私たちは環境に対してお返しができていません。ブランドメッセージが『環境負荷を知り、購買を減らし、洋服を長く着よう』だとしても、これまでと同じような消費行動はしてはいけないのです」

ブランドメッセージとしてサステナビリティに関することを掲げるだけでなく、本当にそれを実現するために2年もの月日をかけて行動を起こす──。「Asket」の「The Impact Receipt」はファッション業界に一石を投じるに違いない。

※掲載している情報は、2020年11月9日時点のものです。

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