所得格差を示す「ジニ係数」とは? 日本・世界が抱える問題と原因

スマートフォンの電卓

0から1の数字で表されるジニ係数。「所得格差を表す数値」というのは、いったいどういう意味なのだろうか?ジニ係数が示す意味や数値を通じて、私たちが認識すべき問題点を解説する。格差が生じる原因や対策、海外からみた日本の現状にも目を向けてみよう。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2020.11.30
ACTION
編集部オリジナル

知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート

Promotion

所得格差はなぜ生まれるのか? 具体的な原因と対策

株価の推移

Photo by Austin Distel on Unsplash

では、いったいなぜ所得格差は生まれるのだろうか。その原因はさまざまである。

技術革新が推し進めた産業構造の変化

2000年代以降のIT業界の技術革新には、めざましいものがある。先進国を中心に、成功者がこれまで以上に多くの所得を得られる産業構造へと変化したのだ。

一方で、中間・下位所得者の所得は減少。あらたな技術で代替可能な、非熟練労働者の需要が減少したためだ。これは日本だけが抱える問題ではない。世界的な格差拡大の原因のひとつと言われている。

産業構造の変化を止めるのは難しい。だからこそ格差拡大を防ぐためには、各種政策による所得再配分を効果的におこなっていく必要がある。

景気悪化による非正規雇用の増加

長引く不況に耐え苦しんだ日本の企業。事業を継続するための工夫のひとつが、人件費の削減であった。正規雇用者を減らし、その分だけ非正規雇用者を増やしたのである。

企業にとっては極めて合理的な判断であったが、非正規雇用者の所得は不安定なケースも多い。非正規雇用者の数が増えれば増えるほど、格差は拡大した。

2020年現在、日本はこの問題に対して、より真剣に取り組もうとしている。2020年4月から大企業で導入された「同一労働同一賃金」も、正規雇用者・非正規雇用者間の格差是正のための対策のひとつだ。

脱製造業による地域間格差の発生

日本においては、都市部と地方の所得格差問題も深刻である。これには、製造業や建設業などの雇用の減少が関わっていると考えられる。

多くの日本企業が、業務効率アップをめざし、製造業の海外進出や施設の集約をおこなってきた。製造業に従事する人の数が減るとともに、増えたのはサービス業従事者である。この労働移動こそが、全国の失業率を高めている要因のひとつと考えられている。

建設業、製造業への特化度が高い地域の失業率は、全体的に低い傾向がある。しかしこれらの業種で雇用が減少すると、他業種への転職がうまくいかない人の数も増加。失業者が増えれば所得は減り、高所得者との差は拡がる一方というわけだ。

こちらの問題を解決するためには、まず地域間格差を縮小させる必要がある。国や地方の財政を通じた地域間の所得再分配により、格差是正のための取り組みがおこなわれている。

世界が抱える所得格差問題 中国・インドの現状と課題

世界には、所得格差問題を抱える国や地域が多くある。例を紹介しよう。

中国

中国国内で問題となっているのは、地域間の所得格差である。都市部では多くの所得を得る人が増加中だ。一方で、農村部で暮らす人の所得は少ないままである。

格差の原因は、中国国内の産業構造や中央と地方の財政関係にあると言われている。問題を解決するためには、産業構造の変化に対応し、貧しい人を救う抜本的な対策が必要となるだろう。

インド

IT大国として知られるインドも、所得格差問題を抱える国のひとつだ。高度なIT技術を身につけた人は、新しい社会構造のなかで高額な所得を得ている。一方で、昔ながらの仕組みのなかで生きる人々は、貧困から抜け出せていない。

インドといえば、規制緩和政策やグローバル化による恩恵を受けた国だ。しかし現実には、その恩恵を受けているのは富裕層のみ。格差是正のためには、やはり貧困層に対する手厚い支援が必要となる。

問題を抱える国は、中国やインドだけではない。とくに開発途上国において、所得格差に関わる問題は深刻だ。国内で問題を是正するのが難しい場合、外国からの開発援助や直接投資、公益性のある貿易などで、不平等をなくすための支援をしていく必要があるだろう。

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends