「アグリテック」とは? 国内外の企業の取り組み事例を解説

アグリテックとはなにを指す言葉なのか。その意味の説明はもちろんのこと、どのような取り組みがアグリテックなのかを、国内外で実際に展開されているさまざまな具体的な事例をもとにわかりやすく解説する。また、アグリテックの課題や今後の展望についても記する。

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2020.10.27

アグリテックとはなにか?

アグリテック(AgriTech)とは、端的に言えば、農業という単語であるagricultureと、テクノロジー(technology)をかけ合わせた造語だ。

農業がこれまでに抱えてきた問題点を、最新のテクノロジーを導入することで改善できるとして、昨今盛んに取り入れられるようになっている。

たとえば、人手不足やサプライチェーンの不透明感などについて、ドローンやビッグデータ、IoT、ブロックチェーンなどを用いて解決へと導くというもの。整地や種まき、収穫、水の管理など幅広い領域で、人と時間がかかる作業を効率的に行えるようになる。

日本国内では同意の「スマート農業」という言葉が使われることも多い。しかしながら、世界的には「アグリテック」が浸透していることを覚えておきたい。

ここでは、国内外で具体的にどのような導入例があるかを見ていきたいと思う。

アグリテックに取り組む企業や組織とその事例(日本)

畑に植えられた植物の苗

Photo by Jametlene Reskp on Unsplash

まずは、本邦でアグリテックに取り組んでいる企業やサービスなどについて取り上げてみよう。

1. 子牛の首にICタグをつけて哺乳作業を自動化「仲田農場」(山形県)
子牛の管理をICタグで行うことで、哺乳作業の自動化を実現。子牛がドリンクステーションに近づくと、ICタグが個別に認識する。補給乳量や回数などを適切に判断し、哺乳するしシステムだ。

2. ビニールハウスの中を遠隔モニタリングしデータを見える化 株式会社セラク「みどりクラウド」
「みどりクラウド」は、上場企業の株式会社セラクが運営するサービスだ。ビニールハウス内を遠隔モニタリングすることで、収穫時期や害虫発生などを予測することができるという。

データが見える化されることで、情報共有がしやすいと評判になり、栃木や神奈川などでいちごやキュウリ、ブロッコリーなど、ビニールハウスで農産物を育てる農家の導入されている。

3. IoT×AI×養液土耕で効率よい農業を実現 株式会社ルートレック・ネットワーク「ZeRo.agri」
1930年代にイスラエルで生まれた、少量の水で効率よく生育を促すという「養液土耕」。この発想をもとに、最新テクノロジーを導入した「ZeRo.agri」。チューブの穴からぽたぽたと少しずつ水を土に沁み込ませることで、水や肥料を削減するばかりか、収穫する量や品質も向上するという。

これまではタイマー式が主流だったが、センサー情報でAIが自動に判断。潅水作業の変更はタブレットから行えるため作業者のストレスも軽減される。

4. 人工知能でもっともよいアスパラガスを自動収穫 「Inaho株式会社」
自動で作物を収穫するロボットやテクノロジーは複数あるが、「Inaho」の器機は導入コストが低価格に抑えられるのが画期的。初期投資や高価なメンテナンス費もかからないそうで、導入のハードルが低い。

収穫適期を画像で判断し、自動収穫を行うため、夜間もコツコツと働いてくれる。現在はアスパラガスに特化しているが、キュウリやトマト、なす、ピーマンなども順次収穫できるようになるという。 

5. トマトの糖度やリコピン値を下げずに収穫量を増やす テクノロジープラントライフシステムズ(PLS)「KIBUN」
トマトを生産する際に、糖度などの品質と生産量はトレードオフの関係にあるというのが一般的だという。だが、「KIBUN」を導入することで、品質を保ったまま収穫量を最大で5割増やせるとPLSは言う。

ビニールハウス内や地中のセンサーでトマトの育成状態を逐一観察し、関数モデルからその都度収穫量や糖度が最大になるよう、水やりの時間帯や量などを提示する仕組みを確立した。 

アグリテックに取り組む企業や組織とその事例(海外)

アグリテックで活用されるドローン

Photo by William Daigneault on Unsplash

海外のアグリテック事情はどうだろうか。
欧米に関わらず、アジアにも広がっていることがわかる。

1. 機械学習で野菜を収穫できる「Vegebot」 ケンブリッジ大学飯田教授研究チーム(イギリス)
ケンブリッジ大学では、機械学習を用いてレタスの収穫を可能にする農業用ロボット「Vegebot」を開発。レタスは葉がいたみやすいため、いまだに多くは手作業で収穫されているのだが、この開発によって人手不足を解消できると期待されている。 

2. 24本のアームで単純作業を効率よくこなす「Agrobot」(スペイン)
スペインの企業は、イチゴの収穫用に特化した収穫ロボットを開発した。
特徴は、24本のアームを駆使して繊細かつ単調な作業を淡々とこなすこと。
画像処理装置によって、イチゴの成熟度をその都度判断するため適切な採取が可能だという。 

3. 赤い砂漠広がる南オーストラリアで海水がトマトを育てる 「Sundrop Farm」(オーストラリア)
ワインの産地としても知られる南オーストラリアは、乾いた大地が沿岸そばまで広がっている。その砂漠で農業を行うには、水資源の確保が最大の難関。だが、この農場では鏡の反射を利用した太陽光発電のエネルギーによって、海水からフレッシュな水を精製できるという。その真水を用い、太陽の恵みを浴びたトマトを生産している。 

4. インドネシアの稲作農家と小売りを直接つなぐデジタルプラットフォーム 「リマキロとワルンピンター」(インドネシア)
貧しい稲作農家の現状を改善しようと、小売店と農家を直接つなぐことに挑んだスタートアップ「リマキロ」。デジタルプラットフォームを使うことで、中間業者の不当な搾取を透明化できると期待された。

その後、「リマキロ」は「ワルンピンター」に吸収されたが、「ワルンピンター」は自らが「ワルン」という小売店を組織。直接的に、店舗の運営にも乗り出したことで透明性が確保できると期待されている。 

5. 循環型農業について学べるハノイの美しくて不思議な図書館 「VAC図書館」(ベトナム)
ベトナムのファーミング・アーキテクツ社が設計したハノイの図書館は、一見するとエコでおしゃれなリゾートホテルのようだ。その実態は、図書館でリラックスした空間で書に親しめる。

しかも、水産養殖(アクアカルチュア)と水耕栽培(ハイドロポニックス)をミックスした「アクアポニックス」という、循環型の有機農業を間近に体感できることで話題だ。
池で飼う魚の排せつ物が微生物によって分解され、植物がそれらを栄養素として吸収するサイクルを目で見て感じることができる。

アグリテックの今後

国内外で盛んになり始めたアグリテック。コロナ禍で、人と人の密接な交流や物流が見直されるなか、さらに注目を集めそうだ。

ただ、問題点がないわけではない。たいていのテクノロジーは、導入するのにコストも手間もかかる。小さな農家がそのハードルを超えるのは簡単ではない。

日本国内では、農林水産省が中心となり「スマート農業」を推進。人材バンクの構築や、農業大学でスマート農業のカリキュラム必須化への動きも見られる。産官学が連携を強化するなどして、人々にとって欠かせない農業を支える技術と発想のさらなる充実を期待したい。

※掲載している情報は、2020年10月27日時点のものです。

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