「地球が危ない」だけでは人は動かない “ゲーム感覚”を利用した市民参加型サステナブルの形--フィンランドで実践進む

フィンランド・ラハティ市が推し進める「CitiCAP」は、自動車の代わりにエコな交通手段を選べば、それに応じだクーポンを付与してくれるプロジェクトだ。2025年までにカーボンニュートラル都市になるための施策でもある。

小嶋正太郎

農家 / 編集者

元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。

2020.09.30
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自転車を使えば、バスが無料に?

駐輪場に置かれた自転車

ゲーミフィケーションをすると仕事の生産性が高まる。簡単にいえば、日々のタスクをこなすことをゲーム感覚で楽しめれば、自然と効率がよくなるということだ。かなり有名な話ではあるので、実践をしている人も多いかもしれない。

そんな発想でフィンランド・ラハティ市は、市民たちにサステナビリティを意識するように働きかけている。自動車ではなく自転車に乗るだけで、バスの乗車券をもらえる可能性があるのだ。

ラハティ市が実施しているのは「CitiCAP」というプロジェクト。これは二酸化炭素の排出量を削減することを目的として、EUから投資を受けて、推し進めている施策だ。

ラハティ市が推進する「CitiCAP」プロジェクト

市民がサステナブルな交通手段を選択すれば、それに応じたクーポンがもらえる仕組み。報酬を得るために頑張れるように、しっかりと行動がデザインされている点が興味深い。

たとえば、自動車ではなく自転車に乗れば、「バーチャル・ユーロ」が付与され、そのあとはプールの利用券やバスの乗車券、コーヒーショップのケーキセットなどと引き換えることが可能。たくさんの人が気軽に参加できるのも忘れてはいけないだろう。

ラハティ市は正確にどれだけの二酸化炭素排出量が個人から削減されたのかを測定するために、専用アプリもローンチしている。

それを利用して、移動手段や距離、所要時間などの要素から自動で本来の二酸化炭素排出量を算出し、その代替案による差が「バーチャル・ユーロ」を獲得するために影響する。自分で設定した二酸化炭素許容量をもとに、それを下回れば評価されるのだ。まさにゲームのように楽しめる。

レジ袋の有料化により環境問題を注意喚起し解消しようとする施策とは少し異なり、ラハティ市は人々のなかにある積極性を呼びさまし、報酬を付与することで参加意欲を維持し続けている。

非常にスマートなプロジェクトだといえるだろう。2025年までにカーボンニュートラル都市になると宣言していることにも納得がいくはずだ。

「CitiCAP」のプロジェクトマネージャーAnna Huttunenさんはこうコメント。

「私たちは、市民の方々に日常生活を通して気候変動に対する行動を起こせる道具を提供しているのです」

だからこそ、ラハティ市は彼らの後に続く国や地域、都市が出てくることに期待しているとのこと。

自分だったら少しでもクーポンを多く手に入れるために、がんばって自転車で移動しそうだな。「CitiCAP」のプロジェクトを知って、そう思った。

※掲載している情報は、2020年9月30日時点のものです。

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