インパクト投資とは? 社会課題の解決に向けた影響(インパクト)を創出

インパクト投資とは経済的リターンと社会的リターンを両立する投資手法のこと。社会や環境問題の解決に取り組む企業に投資することで、従来の経済的なリターンに加えて、課題解決に向けたインパクトを生み出そうとする考え方だ。関連する用語や、インパクト投資がもたらす効果について紹介する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2020.10.23
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

インパクト投資の意味とは

「インパクト投資」とは、社会的課題の解決に取り組む企業や組織、ファンドなどに投資することで、経済的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資手法のこと。例えば、社会や環境に貢献する技術および、サービスを提供する企業に投資し、金銭のリターンと並行して、「社会や環境への影響(インパクト)」を同時に生み出そうとする考え方だ。

インパクト投資は、リスク・リターンという経済的な指標だけではなく、投資先の事業がどんな社会的成果を生んだかが指標となる。そのため、社会的事業の効果が数値化され、可視化されることが特徴のひとつである。

投資

Photo by Christine Roy on Unsplash

用語が誕生した背景

インパクト投資という言葉が生まれたのは2007年。アメリカの慈善事業団体であるロックフェラー財団によって開催された、投資家などを集めた会議において初めて使わわれたとされている。この会議では社会的・環境的課題の解決に向けた金融資本の活用法や、参入環境をどう整備するかについて議論されていた。

そして、2008年頃に起こった金融危機が、健全な社会の実現に向けて投資のあり方を再考するきっかけとなり、インパクト投資への参入を加速させた。また、持続可能な開発目標(SDGs)達成への有効手段としても注目を集めている。

以前の投資と、インパクト投資の違いとは

二次元評価から三次元評価へ

インパクト投資が広まる以前、これまでの投資は、リスクとリターンの2軸で考えられていた。一方インパクト投資の考え方は、もうひとつの軸として「インパクト」が加っているのが特徴。つまり、投資判断が従来の二次元評価から、「リスク・リターン・インパクト」の三次元の評価とするパラダイムシフトが起きているのだ。

インパクト投資が広まった背景

本来、投資とはよりよい未来をつくるための行為。これまでもSRI(社会的責任投資)などの動きはあったが、従来の主流な投資は、回収率やスピードなどの効率性ばかりが追求されていた。他方で貧困格差や教育問題、気候変動といった社会課題や環境問題は深刻さを増し、本当に必要なところに資金が行き届いていないという問題が起きていた。そうした資本原理への危機感から、インパクト投資に注目が集まったのだ。

インパクト投資がもたらすもの

インパクト投資は、単に投資先を選ぶだけではない。投資前後において、その企業が社会にもたらした効果を定性・定量的に評価する。つまり投資活動において重視されるのは、社会に与える実際の影響度。従来の資本市場の原理に新たな次元が加わることで、インパクト投資は社会課題や環境問題の解決スピードを速める原動力になると言われている。

ESG投資との関係性

サステナブル

Photo by Heverton Nascimento on Unsplash

インパクト投資はESG投資の分類の一種

インパクト投資と似た投資手法に、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への配慮を投資判断の基準とする「ESG投資」がある。実は、インパクト投資はESG投資の一種。サステナブル投資を普及させるための国際組織GSIAはESG投資を7つに分類し、そのひとつにインパクト投資が存在する。他の分類には、例えば次のようなものがある。

ポジティブ・スクリーニング

同業種のなかでESG評価の高い企業のみを投資対象として組み入れる。

ネガティブ・スクリーニング

武器製造やギャンブルなどESGの観点から問題のある企業を投資対処から除外する。「ダイベストメント」という言葉が用いられることもある。

サステナビリティ・テーマ投資

気候変動や水資源、農業、エネルギーなど持続可能性に関する特定のテーマに投資する。

インパクト投資の特徴とは? 社会への影響が最終目的 

実はインパクト投資は、ESG投資に分類されている他の投資手法とは目的が異なる。一般的なESG投資は、投資後に実際にどの程度の効果が出たかは把握できないケースが多い。ESGを考慮するという投資プロセスをとるものの、最終的な目的は金銭的リターンの最大化にあるからだ。

しかしインパクト投資の場合、社会・環境問題への貢献を目的とし、それらの社会的リターンは定量・定性的に評価される。この点で、他の ESG の投資手法とは一線を画している。

持続可能な社会への一歩を

インパクト投資のグローバル組織であるGlobal Impact Investing Network(GIIN)の調査によると、世界のインパクト投資額は2019年末で7150億ドルにおよんだ。(※)

前年の投資額は約5000億ドル。現在、2030年までにSDGsの目標を達成するには、毎年約2.5兆ドルの資金が不足していると言われている。インパクト投資が、持続可能な社会へ歩を進めるための一翼を担うかもしれない。

※ 2020 Annual Impact Investor Survey
https://thegiin.org/research/publication/impinv-survey-2020

※掲載している情報は、2020年10月23日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends