食べられる森「アグロフォレストリー」とは? そのメリットと成功事例を解説

アグロフォレストリーとは、農業・林業を一緒に行って、お互いの利益を最大限に活かしながら行うという意味の言葉だ。広大な土地を開拓せずに野菜や果物、木材に使う樹木などを寄せ植えるから、農薬を減らせたり、温室効果ガス削減の効果も期待できる。いまもっとも注目されている生産方法のひとつだ。

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2020.09.28

アグロフォレストリーとは?

放し飼いされている鶏

Photo by Skylar Jean on Unsplash

アグロフォレストリーとは、農業・林業を同じ場所で行い、お互いの恩恵を最大限に利用しながら豊かな森を育む、包括的でサステナブルな農業という意味の言葉だ。

この方法の大きな特徴は、従来のように森を切り開いて畑をつくるのではなく、さまざまな植物や木々を一緒に植えて、森を再生しながら収穫ができるという点にある。

葉物野菜やマメ類などは初年度から出荷ができ、数年後には低木からベリー類やコーヒーなどが採れるようになる。20年も経てば、木材を伐採することも可能だ。長期的な収入が見込める生産システムということもあり、世界のあちこちで積極的に取り入れられている。

地球上の森林面積は、プランテーションによる森林破壊や、世界各地の大規模な山火事が原因で、年々小さくなる一方だ。そのせいで、温室効果ガスである二酸化炭素を森が吸収しきれなくなり、海に取り込まれる量が増えている。慣行農法をこのまま続けると、温暖化や水質汚染など、さまざまな環境問題が悪化することが懸念される。

その点アグロフォレストリーは、肥沃な大地を復活させられて、環境問題の改善にもいい影響がある。それだけでなく、生産者の所得向上にもつながる画期的な生産方式だ。

アグロフォレストリーのメリットとデメリット

収穫された作物

Photo by Tania Malréchauffé on Unsplash

この方法のメリットは、さまざまな作物とともに森を育てられるから、長期的に同じ場所で生産を続けていくことが可能だという点だ。若い成長中の樹木は二酸化炭素をたくさん吸収するので、温暖化の抑制効果が大いに望める利点もある。

また、多品目を同時に育てることによって、市場の価格変動にも強い企業運営が可能になる。たとえば、もしキャベツが豊作で価格が暴落してしまっても、他の品目で補うことができるから、経済的にもありがたいシステムなのだ。

それに、コンパニオンプランツ*を上手く活用することにより、化学肥料や殺虫剤がなくても元気な野菜を栽培することが可能になる。たとえば、トウモロコシと枝豆を一緒に植えてやると、枝豆の根粒菌が植物の育成に欠かせない窒素分を地中にキープしてくれるから、窒素肥料をあげる必要がなくなる。
*共栄作物。互いの成長に良い影響のある2種類以上の植物の組み合わせたもの。

窒素肥料は、窒素と水素を500度くらいの高温で化学反応させてつくられるので、大量の燃料が必要だ。マメ科の植物は、それを常温でやってのけてくれるので、温室効果ガスの排出量を抑えるのにも役立ってくれる。

逆にデメリットは、多品種を少量ずつ育てるので、軌道に乗るまでは管理が大変だということ。従来の生産方式とはまるで違うので、研修を受けて森を包括的に見れる人材育成が必要だ。

それに、野菜なら数年後には収穫可能になるが、林業的な視点からいえば、開始後しばらくは収益は見込めない。初期投資を回収したくても、すぐに結果に現れないのが大きな欠点だ。しかし、この先何世代も同じ土地を使うことを考えたら、継続的に収入を絵続けられる生産方式にシフトした方が得策だろう。

アグロフォレストリーの事例

子どもを背負って農業に従事するアフリカの女性

Photo by Annie Spratt on Unsplash

ブラジルのトメアスには、かつて日系の移民が開墾した土地が広がっている。しかし、無計画な森林伐採や農業をした結果、森が痩せて荒れ果ててしまったのだ。

そこでトメアス総合農業協同組合は、まず初年度は野菜や胡椒を植え、木材や防風林を育てるために木の苗を植樹。1年目にはキャッサバやマメ類を収穫し、始めて5年10年と経つとフルーツもたわわに実るようになった。トメアスの農家は、アグロフォレストリーを実践していない同地域の農家や牧場と比べて、収入がなんと40倍になったそうだ。(※1)

また、貧困率の著しいアフリカでも、アグロフォレストリーの技術によって森の再生が始まっている。

ケニアにある国際アグロフォレストリー研究センターは、サステナブルな農業生産方法によって、人々が生計を立てられるように、技術を研究している機関だ。農家の人たちに対し、知識やスキルを身につけられるようにトレーニングを実施し、地域の人が主体となってマネージメントしていけるような仕組みづくりを、着々と進めている。

たとえば、エチオピアでは木材として活用できるシルキーオークの木や、害虫防除や肥料として使えるニームなどを17,000本植樹。以前はわずかな植物しか生えていなかった地域に、緑が蘇えり、人々のアグロフォレストリーに対しての興味を煽ることもできたようだ。

アグロフォレストリーと日本

日本ではまだまだ一般的ではなく、規模の大きい目立った取り組みはないが、少しずつ取り組み始めている地域もいくつかある。徳島県の上勝町では、荒れゆく林の隙間で葉わさびを栽培をし、生産者の所得向上や移住者の誘致につなげる方針だ。

この地域はかなりの山奥にある限界集落で、今後地域を支えてくれる若い世代の確保のために、林業よりも短期間で収益が期待できる作物の生産に乗り出したばかりだ。

日本は国土面積に占める農用地の割合が、たった12パーセントしかない。(※2) 農業従事者の数も減る一方で、平成31年時点でわずか168万人しかいなかったそうだ。(※3) 農地を拡大せずとも増収が望めるアグロフォレストリーは、いまの日本に合った魅力的な生産方法だと言えるかもしれない。

※1 事例とデータベース|フレストパートナーシップ・プラットフォーム
http://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/database/company_case/post5.html#notes02

※2 国土利用の現況|総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/nihon/g0101.html

※3 農業労働力に関する統計|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

※掲載している情報は、2020年9月28日時点のものです。

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