「最小限の」という意味を持つ「ミニマル」。似た言葉として用いられる「ミニマム」との違いや、ミニマルから誕生した「ミニマリスト」についての説明に加えて、エレミニストが提案するミニマルでエシカルなライフスタイルを紹介する。
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Photo by David van Dijk on Unsplash
近年よく耳にする「ミニマル(minimal)」という言葉。聞いたことはあるけれど、詳しい意味は知らないという人も多いのではないだろうか。ミニマルとは、英語で「できるかぎりわずかの」「可能な限り少ない」を意味する形容詞で、端的に言うと「最小限であるさま」を指す。
ちなみに、1960年代前後から広まった「ミニマリズム」という表現スタイルは、ミニマルを語源する言葉。これは、アートやデザイン、音楽などの芸術分野において過度な装飾を省いた手法のこと。
美術の分野でシンプルな色と形で表現することは「ミニマル・アート」と言われ、ファッションにおいても、無駄がそぎ落とされた洗練されたスタイルは「ミニマル・ルック」とも呼ばれている。
ミニマルと非常に似た言葉に「ミニマム」が挙げられる。「ミニマル(minimal)」と「ミニマム(minimum)」、日本では同じような感覚で使われていることもしばしばだが、実は英語圏では明確に区別がされている。
英語でミニマムは「最小単位」「最少量」を意味する。また、ミニマムは絶対量を示しており、法律など決められた範囲において最小限であることや、数式として使われるのだ。対してミニマルは相対的で、量だけでなく「質」を表すことある。
ミニマル(なんとか充分な量、可能な限り少ない量)である状態は、必ずしもミニマム(最小単位、最低限、最少量)であるとは限らないということだ。
今日、ミニマルという言葉が一般に普及されたのは、この考え方を生活スタイルに摂り入れた「ミニマリスト」が注目されたことが大きい。ミニマリストは、物を必要最低限しか持たないミニマルなライフスタイルを実践する人のこと。ミニマルであることは、芸術だけでなく私たちの生活にも使われるようになったのだ。
ミニマリストにおいて大事なことは、自分にとって本当に必要なものは何かを考えること。
たとえばファッションは、流行を追って買い換えるのではなく、自分が好んで長く使えるものを数着持つ。調味料などの収納には、気に入ったガラス容器などを繰り返し洗って使用する。これらもひとつのミニマリストのスタイルではないだろうか。
ミニマルな生活は、実はエシカルな暮らしの延長線上にあるのかもしれない。
「少ない物でシンプルに暮らす」という清貧な概念は、昔から存在していた。日本においては「もったいない」という言葉や、江戸時代における「循環のある暮らし」、禅が示す思想や美意識は、ミニマリストの概念に通じる。
しかしながら、このライフスタイルが世の中で定着したのは、2010年頃、アメリカを中心に「大量生産・大量消費に違和感を感じた富裕層」に広まってからと言われている。
例えば、スティーブ・ジョブスやマーク・ザッカーバーグ、キーラ・ナイトレイなど、世界的な有名人にもミニマリストは多いのだ。
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また、前述の通りミニマリストと一口に言っても、みんなが同じである必要はない。共通しているのは、物によって束縛される思考から脱却し、生活の主軸を“自分”に置いていること。
ELEMINISTが提案するのは、ミニマルだけれど彩りにあふれた、暮らしを楽しんでいく術。所有と消費を見直し、自分と地球、社会にとって心地よいエシカルでミニマルなライフスタイルだ。
例えば料理をつくったときに出る野菜の切れ端は、家庭用のコンポストがあれば、堆肥となって家庭菜園にも使える。サブリスクリプションサービスなどを駆使すれば、所有せずに循環させることができるのだ。
繰り返し使えるエコラップは、採り入れやすいミニマルな選択肢のひとつ。ごみを出さないゼロウェイスト生活への第一歩とも言える。オーガニックコットン素材の天然ラップなど、生産過程からサステナブルなものを選びたい。
私たちの生活のなかでも採り入れられるようになった、「ミニマル」な暮らし方。ミニマリストは、単に持ち物をなくすことが目的ではない。思考や選択をシンプルにし、自分にとって充分なものを必要最低限持つということ。
そうした丁寧な暮らしが豊かさにつながるという美意識が根底にあるのだ。これを機に日々の暮らしを、見つめ直してはいかがだろうか。
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