インダストリアルデザイナーが手がける「Sum Waste」は、ニューヨークの下水汚泥(バイオソリッド)をペンとインクに変えるプロジェクトだ。通常のペンは複数のパーツで構成されているが、「Sum Waste」はたったのふたつ。無駄を限りなくゼロにしたデザインだ。
小嶋正太郎
農家 / 編集者
元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。
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呼び方を変えることで、いい印象を与えるようにしよう──。日本語で「下水汚泥」ともいわれるバイオソリッドは、そんな想いから生まれた言葉だ。ちなみに、もともとは「sludge(スラッジ)」という単語が一般的に使われていて、汚いイメージがこびりついていた。
この記事で紹介する「Sum Waste」は、バイオソリッドに新たな可能性を見出したプロジェクト。呼び方のさらに先、使い方を変えることで、たくさんの人が抱く印象をアップデートしようとしている。
発起人はブルックリンを拠点に活動するインダストリアルデザイナーGarrett Benischさん。1日あたり約100台分の大型バスに相当する量のバイオソリッドが埋め立てられていることを知り、環境に配慮するために「Sum Waste」の基礎となるアイデアを考案したという。
そして、Garrettさんは実際にバイオソリッドを素材としたペンとインクの開発に成功。
ペン本体を製造する際には、バクテリアにバイオソリッドに与えることで自然由来のポリマーを生み出せる技術を採用し、生分解ができるプラスチックを製造している。また、インクにはバイオソリッドを炭化した顔料が入っているとのこと。
気づいた人は少なくないかもしれないが、「Sum Waste」で製造されるペンとインクは変わった形状をしている。改めてインクを見返してもらえると、その意味が簡単にわかるだろう。これもまた、Garrettさんが考案した構造。
通常のペンは複数のパーツ(バネやクリップなど)で構成されているが、「Sum Waste」はたったのふたつだけ。無駄を限りなくゼロにしたデザインだ。インクが切れても交換しやすいという利点もある。
もちろん、ペンは他の製品と同じように使用可能。書き終わったら、ペン先を押せば、インクが漏れる心配などもない。
「Sum Waste」のおかげで、バイオソリッドに対する印象は大きく変わるはずだ。文字を書くためのペンの素材が、もともとは下水処理施設からきていると考えれば考えるほど、画期的なアイデアだと感じられるだろうから。
参照元/Sum Waste
https://www.sumwaste.com/
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