アファーマティブアクションとは? 言葉の意味や取り組み事例を解説

アファーマティブアクションとは、積極的格差是正措置という意味。社会的弱者に対する差別を救済する取り組みのことだ。本記事では、その言葉の意味や歴史、課題について、例を挙げながら紹介する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2020.10.01
ACTION
編集部オリジナル

知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート

Promotion

ノルウェーにおけるアファーマティブアクション「議会におけるクオータ制」

クオータ制の発祥の地と言われる、ノルウェー。1978年に制定された男女平等法で、公的機関における男女比が一定割合になるよう定められたことで、女性の社会進出が進んだ。

1986年には初の女性首相が誕生し、女性閣僚が44%を占めた。その後も内閣に占める女性閣僚の割合は、4割を切ることはなく、国会議員だけでなく、地方議員においても約4割が女性議員となっている(※3)。

クオータ制は男性の既得権を奪う制度であるが、アメリカと違って大きな反対が起こらなかった一因には、北欧の選挙制度が比例代表制度であることが挙げられる。選挙区ごとに定数を決める比例代表制自体がクオータ制と類似しているため、クオータ制へのアレルギーがなかったと考えられているのだ。

2003年には会社法の改正が行われ、2008年以降、ノルウェー企業では会社の取締役に女性を4割配置することが義務付けられ、守らない企業には厳しい措置がとられている(※4)。

アファーマティブアクションの問題点

話し合う人たち

Photo by LinkedIn Sales Navigator on Unsplash

アファーマティブアクションは、社会的不利益を被る弱者への差別をなくしていくための、重要な取り組みである。しかし、その進め方によっては問題も起こりうるという点にも注意したい。ここでは、アファーマティブアクションの代表的な問題点2つを紹介する。

逆差別の助長

アファーマティブアクションでは、社会的に差別を受けてきた弱者に対し、その格差を是正するための優遇措置を実施するケースが多くみられる。

マイノリティに対する救済として優遇措置は行われるが、その度合いによってはマジョリティに対する差別、つまり「逆差別」と言われかねない状況も引き起こすのだ。

たとえば、前項で紹介したようにかつてのアメリカでは、黒人の採用枠を決めて試験を行ったことにより、かえって白人が採用されにくくなる、進学しにくくなるといった事態が発生したとされている。

アメリカではクオータ制が違憲ではないかという議論も起こり、司法の場での争いも続いたが、現状は合憲とされている。しかし、どの程度の優遇措置が適当かについては、いまなお議論の続く問題である。

個人の能力の軽視

例えばクオータ制を導入している場合、マイノリティの採用枠に合わせて合格者を決める必要がある。そのため、試験を受けたマイノリティのなかに、合格ラインを下回る者がいても、採用枠をうめるために合格となるケースがあるのだ。

この場合、合格に必要な能力があるかどうかではなく、採用枠の用意されたマイノリティであるかどうかで、合否を判断されることになる。人種や性別などで採用の判断を行うことは、努力を積み重ねてきた個人の能力の軽視となり、アファーマティブアクションにょって引き起こされた問題と言える。

日本のアファーマティブアクションの今後に期待

新聞を読む人

Photo by Adeolu Eletu on Unsplash

働きやすい社会になってきてはいるが、日本ではまだまだ女性の社会進出が十分とは言えない。とくに、政治や経済の中枢を担う女性の少なさは世界でも際立っており、内閣府男女共同参画局の資料によると、2020年1月時点での女性国会議員の比率は世界191か国中165位、G20内では最下位となっているのが日本の現状だ(※5)。

女性の躍進はもちろんのこと、高齢者、障がい者など、社会的弱者とされる人たちだれもが、個々の能力を生かして活躍できる社会への移行が、早急に求められるのではないだろうか。

※1 ポジティブ・アクション
http://www.gender.go.jp/policy/positive_act/index.html

※2 公正さとは何か:アメリカのアファーマティブ・アクションをめぐる論争
https://news.yahoo.co.jp/byline/maeshimakazuhiro/20180804-00091960/

※3 ノルウェーの取り組みの特徴と日本への示唆
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sekkyoku/pdf/h20shogaikoku/sec3-2.pdf

※4 組織におけるダイバシティ・マネジメント
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/05/pdf/069-084.pdf

※5 諸外国における政治分野の男女共同参画のための取組
http://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/pdf/pamphlet.pdf

※掲載している情報は、2020年10月1日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends