アファーマティブアクションとは、積極的格差是正措置という意味。社会的弱者に対する差別を救済する取り組みのことだ。本記事では、その言葉の意味や歴史、課題について、例を挙げながら紹介する。
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アファーマティブアクション(affirmative action)は、ポジティブアクション(Positive Action)とも言い、日本語では「積極的格差是正措置」や「肯定的措置」と訳される言葉である。
社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対し、一定の範囲で特別の機会を提供することにより、実質的な機会均等を実現することを目的とする措置のこと(※1)を言い、性別や人種などにおける弱者(マイノリティ)に対する差別を、歴史的経緯や社会環境を鑑みたうえで救済していこうとする取り組みを示すものとして使われる。
歴史的に差別を受けてきたマイノリティの代表例としては、有色人種、少数民族、女性、障がい者などがあげられる。こうした人々も含め、あらゆる人にとって暮らしやすい社会の実現を目指すことが、アファーマティブアクションの目的となっている。
アファーマティブアクションは、1965年にアメリカのジョンソン大統領が大統領執行命令のなかで、職業における積極的な差別是正措置を求めたことが起源とされる。具体的に言えば、マイノリティの優遇的な雇用を推進したのだ。
その後、1972年に雇用機会均等法で教育機会の重要性を示されたことから、就職や昇進などの雇用面だけでなく、大学の入学者選抜においても、少数派に対しての優遇措置が適用されるようになった。
このことから、欧米諸国では弱者集団に対する差別の是正のための、雇用や進学における優遇措置を示す言葉として用いられることが多い。
一方、日本においては、この「アファーマティブアクション」という言葉はとくに、女性労働者に対する改善措置を示す言葉として使われるケースが目立つ。企業における男女の雇用比率や職務内容、昇進、待遇などの格差の是正への取り組みを主に意味し、社内の多様性を確保するために、アファーマティブアクションを推進している企業も多い。
企業でしばし行われる、女性のみを集めた研修や特別な措置等は、労働者の性別による格差を解消し、均等な機会や待遇を確保するための、アファーマティブアクションの一環でもあるのだ。
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アファーマティブアクションは、世界中で取り組みが行われている。本項では、日本における事例と、アメリカ、ノルウェーで行われている事例を取り上げ、アファーマティブアクションの実情を紹介する。
日本における女性の社会進出は他の先進諸国と比べて低い水準であり、また性別による役割分担意識への偏見が強いことが世論調査のデータなどから示されている。
そこで、女性の参画を進めるためのアファーマティブアクションとして取り組みがはじめられたのが、男女共同参画基本計画である。
2010年12月に閣議決定された第三次男女共同参画基本計画では、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を掲げた。
これは、数値や期間は強制ではなく、目標として掲げながら実質的な機会均等の実現に向けて努力する、ゴールアンドタイムテーブル方式と呼ばれる手法だ。
この男女共同参画基本計画により、再就職や企業などにおいて女性の働きやすい環境づくり、女性に対する暴力の根絶、女性の健康支援などについて、企業や関係機関への働きかけが行われている(※1)。
また男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)では、男女の違いによる差別的な募集、採用、昇給、昇進、解雇などをなくし、女性が不当な扱いを受けることなく出産・育児をしながら仕事ができる環境の整備を進めることなどが求められている。
アメリカでは、差別の是正のためアファーマティブアクションが活発に行われているが、そのなかでも代表的な事例として挙げられるのが、採用試験や入学試験における「クオータ制(割り当て制)」である。
ここで言う「クオータ制」とは、合格者の人数に対し、一定の割合を女性や人種マイノリティなどの社会的不利な状況に置かれている人々に割り当てることで差別を是正しようとするもの。あらかじめマイノリティの採用枠を決めておくことで、企業や教育機関における多様性を保つことができるとされている。
しかし一方で、クオータ制の導入によりマイノリティである黒人や女性に比べ、多数派である白人や男性が進学しにくくなったり、就職しにくくなったりするという「逆差別」と言われる問題も起こっている。そのため、導入初期から司法の場においても、クオータ制による公正とは、合憲であるか、違憲であるかについての議論がなされてきた。
度重なる違憲判決を受けて見直しがはかられてきたクオータ制だが、2016年のテキサス大の判決では、優遇する際の基準を厳格化されたものの、アファーマティブアクション自体は合憲と認められ、現在に至る。
また、アメリカの各州では独自の見直しも進んでおり、カリフォルニア州、ワシントン州ではアファーマティブアクションが廃止に、フロリダ州では教育の場面での優遇が廃止になっている(※2)。
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