アースショット賞2026、ファイナリスト15組決定 ごみ・猛暑・砂漠の女性リーダーに注目

地球

Photo by Javier Miranda on Unsplash

英国のウィリアム皇太子が創設した「アースショット賞」が、2026年のファイナリスト15組を発表した。顔ぶれからは、技術の発明だけでなく、国や都市、地域の仕組みそのものを変える挑戦が目立つ。ここでは、ごみ、猛暑、砂漠の現場を率いる3人の女性リーダーの活動に光を当てたい。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2026.11.04
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発明だけでなく、「仕組み」を変える挑戦が並ぶ

アースショット賞は、2020年にウィリアム皇太子と王立財団によって設立された環境賞。2030年までの10年間で、地球の課題の解決策を見つけて世界に広げることを使命とし、5部門の受賞者にそれぞれ100万ポンド(約2億円)が贈られる。成り立ちや過去の受賞者は、過去の記事で紹介している。

2026年は、169か国から寄せられた7000件近い推薦のなかから15組が選ばれた。同賞では公募ではなく、公式推薦者からの推薦を受けた団体や都市などが対象となる。

選考では、エクセター大学のティム・レントン教授の研究にもとづく「ポジティブ・ティッピング・ポイント」の考え方が初めて取り入れられている。よい変化が自ら勢いを増して広がる転換点を見極め、成功をひとつの地域で終わらせず、連鎖させられるかを問うものだ。

アースショット賞のCEOジェイソン・クナウフ氏は、とくにグローバルサウス発の解決策が数多く生まれていると総評している。

現場から世界を動かす、3人の女性リーダーのプロジェクト

今回のファイナリストたちの顔ぶれを眺めてみると、現場の当事者が主役となって活動しているという共通点がありそうだ。なかでも女性が先頭に立って社会を変革している3つのプロジェクトを紹介する。

マザーアース財団/フィリピン

会長・共同創設者として財団を率いるソニア・メンドーサ氏の出発点は、地域でごみが収集されないという身近な困りごとだった。グローバルサウスの一部地域では、発生する廃棄物の半分以下しか回収されず、多くが投棄や野焼きされているという厳しい現実がある。

このような状況に対し、1998年にソニア氏を含む5人の女性と近隣住民が立ち上がり、ごみの分別の呼びかけを開始。空き地を活用して堆肥づくりや菜園づくりをスタートさせた。この成功をきっかけに同年に団体が設立された。

財団は設立以来、ごみを出さない「ゼロウェイストシティモデル」をアジアで先駆的に導入した。高額な施設に依存しない手法はインドネシアやベトナムなどにも広がり、それぞれの地理的条件や予算に合わせた取り組みが展開されている。また、廃棄物処理システムを支える労働者に、公正な賃金と社会的な地位の向上をもたらす役割を果たしている。

マヒラ住宅信託/インド

2015年、低所得者層の居住地区で暮らす女性たちが洪水、水不足、疫病と並んで、猛暑が暮らしの脅威であると挙げたことをきっかけに、ディレクターのビジャル・ブラフマット氏は土木技師としてのバックグラウンドを活かして都市の住環境の改善に取り組んできた。

彼女の取り組みは、実用的な暑さ対策と地域社会の活動、そして経済的保護、これらの3つの要素を組み合わせるというもの。温度モニタリング機能を備えたモデル住宅で住民が効果を実証。次に近隣住民に暑さのリスクへの理解を深め、地域の優先事項を自治体に伝えるプロセスを通じて、およそ3万6500件の遮熱屋根(クールルーフ)の設置を直接支援してきた。

さらに、基準の気温を超えると自動的に支払われる気温連動型保険の普及にも尽力。猛暑の影響で働けず収入を失ったときの経済的な支援が備わっている。

今後はアジア全域やアフリカへの展開も見据えており、2030年までに300万世帯を保護し、30万人の女性に気候リスク保険を提供することを目指している。

先住民砂漠同盟/オーストラリア

口承伝承で紡いできた先住民の知恵と現代的な手法を組み合わせて山火事のリスクを減らす「ライト・ウェイ・デザート・ファイアプログラム」が評価され、最終候補に選ばれた先住民砂漠同盟(IDA)。率いるのは、砂漠地帯出身の先住民として初めてCEOに就いたサマンサ・マレー氏だ。

活動の原点は2014年、シドニーで開催された「世界公園会議」で砂漠のレンジャーたちが集い、地域を超えた絆を結んだことにある。現在では約70の先住民レンジャーチームをネットワーク化し、国土の約3分の1におよぶ2億7000万ヘクタールの砂漠地帯を保護している。これは地球最大規模の先住民主導の自然保全回廊であり、78種におよぶ絶滅危惧種の生息地を守る役割も担う。

現場の小さなつながりから始まり、社会の仕組みそのものを動かしていく3人の姿は、私たちに大きな希望を与えてくれる。受賞者は、2026年11月17日にインド・ムンバイで開催される授賞式にて発表される予定だ。

※掲載している情報は、2026年11月4日時点のものです。

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