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アースショット賞(アースショット・プライズ)とは、英国のウィリアム皇太子が立ち上げた地球環境賞だ。5つのカテゴリーの受賞者に120万ドルが授与される。本記事では、アースショット賞と2022年の受賞者について紹介する。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
「アースショット賞」は、2020年にイギリスのウィリアム皇太子と王立財団によって設立された賞だ。地球が直面する最大の危機である環境問題に対して、解決策を見出すことが目的で、歴史上でもっとも権威ある世界的な地球環境賞とうたわれる。
大気や海洋などの環境保全の問題に取り組むため5つの部門が設けられ、15名のファイナリストから各1名ずつ受賞者が選ばれる。授賞式は2021年から2030年の10年間にかけて毎年世界中の各都市で開催され、各受賞者には賞金120万ドル(約1億6,400万円)が贈られる。
またウィリアム皇太子は気候変動解決に向けて、アースショット賞を通じて、これまでに600万ドル(約8億1,300万円)以上を寄付している。
ウィリアム皇太子は、アースショット賞のWebサイトで次のようなメッセージを送っている。
「地球はいま転換期を迎えており、私たちは厳しい選択に迫られています。このまま取り返しのつかないダメージを与えるか、それとも、人としての素晴らしい力や指導力、革新力、問題解決力を思い出すかどうか。人は偉大なことを成し遂げられるのです。これからの10年は、私たちに最も大きな試練、つまり地球を取り戻すための時間となります」
2022年12月2日、第2回「アースショット賞」の受賞式がボストンのMGMミュージックホールで開催され、ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃が出席した。各部門の受賞者は、以下の通りである。
気候変動によって収穫量の減少に悩む農家が増えている。そこで、インドのスタートアップ「ケーティ(Kheyti)」は、低コストで収穫量を増やし生計を立てるための先駆的な解決策「Greenhouse-in-a-Box(箱の中の温室)」を提案している。天候や害虫から農作物を守り、収穫量は7倍にもなるという。これまでに約1,000軒の農家がこの仕組みを利用しており、2027年までに50,000軒の農家の導入を目標にしている。
薪を集めて炭をおこし、食事の調理を行っているケニアでは、女性が炭によって呼吸器系の疾患にかかることが多い。そこで「ムクル・クリーン・ストーブ(Mukuru Clean Stoves)」では、クリーンな調理用コンロを提供。木炭、木材、サトウキビからつくられたバイオマスを燃料とし、燃料費はこれまでの半分程度の10ドル(約1,380円)で済み、大気汚染も少ない。
現在、ケニアではこのコンロが20万世帯で使われてており、アースショット賞受賞によって100万世帯まで普及させ、大気汚染の抑制に貢献できるとみられる。
オーストラリア・グレートバリアリーフのサンゴの保護活動などに欠かせないのが、先住民の存在。しかしこれに携わる女性が約20%しかいないことから、60名の女性をトレーニングし、知識を共有してストーリーを伝えることで、新しい保全アプローチを奨励している。グレートバリアリーフを気候変動から保護する活動が、評価され受賞者に選ばれた。
海藻を原料にプラスチック包装の代替品を開発したロンドン拠点のスタートアップ「ノットプラ(Notpla)。生分解性で、そのまま食べられるものもあり、さまざまなパッケージに応用できる可能性を秘めている。2019年のロンドンマラソンでは、このパッケージにスポーツドリンクを入れたものがランナーの給水に利用された。
幼なじみ2人が開発した、CO2を岩石に変え、地下に永久貯留する革新的テクノロジー。拠点とするオマーンの他、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアにあるかんらん岩を鉱物化して、CO2を大気から効率的かつ安全に除去する。2040年までに10億トンのCO2を石に変えることが目標。
※参考
The Earthshot Prize | Royal Foundation
Prince William’s Earthshot Prize Winners Include a Seaweed-Based Plastic Startup and Cleaner Cookstoves|TIME
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