Photo by STFC
気候変動による異常気象などを背景に、安定した食料生産が課題となっている。英国では、地下約1100mの廃坑を活用した、世界最深とされる地下農場で実証実験が始まった。研究チームは、気候変動時代の新たな食料生産の可能性を探っている。

natsumi_kawaide
ライター
フランスのパリに滞在中、ライターとして欧州の旅行見本市や日本文化イベントを取材。帰国後は旅行情報誌の編集に携わり、現在はフリーランスのライターとして活動している。
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英国北部ノースヨークシャー州のボールビー鉱山。この地下約1.1kmで、レタスやチンゲンサイなどを育てる実証実験が始まった。研究を主導するのはシェフィールド大学と都市型農業企業「Farm Urban」で、2026年春から12カ月にわたる共同研究として進められている。
この実験の目的は、地下という特殊な環境でも、市場で販売できる品質の野菜を安定して生産できるかを実際の環境で検証することだ。
栽培には、LED照明や水耕栽培などを組み合わせた垂直農法を採用している。英国メディア「ガーディアン」の記者が訪問した際、人の頭ほどの大きさまで育ったレタスも確認された一方、生育が十分でない野菜もあったという。
しかしこれは、照明や栽培条件の調整による課題であり、地下という環境そのものが原因ではないと考えられている。実証期間中はデータを蓄積しながら栽培方法を改善し、今後はサンファイア(シーアスパラガス)やトマトなど、栽培する品目を増やすことも検討している。
英国では近年、猛暑や干ばつなどが農業へ影響を及ぼしており、研究チームは「食料危機は将来の問題ではなく、すでに始まっている」と危機感を示している。
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本実験の特徴は、単に地下で野菜を育てることではなく、役目を終えた鉱山を新たな食料生産の場として再利用しようとしている点だ。
地下約1.1kmの環境は年間を通じて温度が比較的安定しており、地上の気象条件の影響を受けにくい。また、鉱山には既存のインフラが整っており、それらを活用することで、新たな施設を建設する場合に比べてエネルギーコストの削減につながる可能性がある。
さらに、この研究はボールビー鉱山だけを対象としているわけではない。英国各地には採掘を終えた鉱山が数多く残されている。研究チームは、こうした地下空間を農場として再利用することで、新たな雇用の創出や新鮮な野菜へのアクセス向上につながると期待している。
気候変動によって従来の農業の前提が変わりつつあるなか、使われなくなった地下空間を未来の食料生産へ活かそうとする挑戦が始まっている。今回の実証実験は、廃坑という産業遺産に新たな役割を与えるだけでなく、持続可能な食料生産の新しい選択肢を示す一歩となるかもしれない。
※参考
Subterranean salad: underground farmers seek solution to food crisis in disused UK mines|The Guardian
World’s deepest underground farm could reshape UK food production|University of Sheffield
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