東急リゾートタウン蓼科で始まった「森と水の自由研究ツアー」を取材した。VRや森歩き、ハーブ摘みなど五感を使った体験を通して、森や水、食の循環を学ぶプログラムを紹介。自然を「自分ごと」として捉える体験型環境教育の可能性を探る。【記事末に読者プレゼントあり】

河辺さや香|Sayaka Kawabe
フリーランスライター/エディター
出版社で編集者として勤務したのち、2009年よりフリーランスのライター、エディターとして活動。コロナ禍を機にサステナブルな暮らしに関心を持ち、無理なく続けられるエシカルな選択を日々の生活…

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夏に外で思いきり遊ぶことが、いつからこれほど難しくなったのだろう。
近年の夏は朝から気温が上がり、日中は危険だから外出を控えるように促される。まさに、異常な猛暑である。夏休みと言えば、真っ黒に日焼けしながら虫を追いかけたり、プールに通ったりしてよく外で遊んだ。そんな原体験を持つ世代にとって、子どもたちが暑さを避けて室内で過ごすことが当たり前になりつつある現状には、切なさを感じずにはいられない。
もちろん、身の安全を守ることが何より大切だ。一方で、自然に触れる機会そのものが減っていけば、自然の面白さや神秘、守ることの意味をどうやって知ればいいのだろう。
「蓼科 東急ホテル」前のカラマツ池
暑すぎて自然から遠ざかる時代に、どう自然を学べばいいのか。そのヒントを探して訪れたのが、避暑地で知られる長野県茅野市の「東急リゾートタウン蓼科」だ。
約660ヘクタール、東京ドーム約140個分の広大な敷地に、ホテルやゴルフ場、スキー場、アスレチック、別荘地などが点在する複合リゾートである。ここでは、さまざまな体験と自然環境を守る取り組みを結びつけたリゾートづくりが進められている。
「東急リゾートタウン蓼科」内に2024年7月にオープンした「TENOHA蓼科」。
この夏新たに始まったのが、親子向け環境学習プログラム「森と水の自由研究ツアー―蓼科で学ぼう、循環のひみつ―」だ。夏休みの自由研究に活用できるだけでなく、森、生きもの、水、食、人の暮らしがどのようにつながっているのかを、実際に見て触れて学ぶことを目的としている。
ツアーの出発点は、2026年春にオープンした「フォレストミュージアム」。参加者はまず、森の小動物の視点になって森を駆け巡るVRコンテンツ「AnimaLook!(アニマルック)」を体験する。
人間よりもずっと低い位置から見上げる木々。迫ってくる枝葉や、森の生きものたちの動き。ふだんとは異なる目線を一度体験してから、本物の森へ向かう。つまりVRはそれだけで完結するためのものではなく、デジタルの中で得た視点を、すぐ目の前にある自然へつなぐための入口なのだ。
また「フォレストミュージアム」館内には、アカマツとカラマツの松ぼっくりを実際に見比べたり、木に触れたりできる。壁には、森で見つけるものを示したミッションカードが並ぶ。なかでも興味深いのが、リスが松ぼっくりを食べた痕跡、通称“エビフライ”だ。
その存在を知らなければ、足元に落ちていても気づかずに通りすぎてしまうだろう。しかし、一度知ったあとでは「この近くにリスがいるのかもしれない」と、木の周りに視線が向く。知識が増えるというよりも、森の見え方そのものが変わっていく。
リスが松ぼっくりを食べた痕跡、通称“エビフライ”。
VRと展示を体験したあとは、タウン内の環境への取り組みをクイズに答えながら巡る。伐採された木が集められる「土場」では、太く状態のよい木は建材や家具に、細い木や節の多い部分はウッドチップにするなど、木を状態に応じて使い分ける様子を学ぶ。ウッドチップは、タウン内のバイオマスボイラーの燃料などになる。
「土場」でクイズに答える子どもたち。
さらに、施設から出る生ごみはコンポストで堆肥化され、旧テニスコートを活用したエディブルガーデンで野菜やハーブを育てる土へと戻される。参加者はそこで自らハーブを摘み、ハーブウォーターをつくることができる。ツアー終了後には、オプションでハーブを使ったピザづくりなどを体験することも可能だ。
森、水、木、エネルギー、食。ふだん別々に切り離して考えがちなそれらが、森を歩き、木の行方を追い、堆肥から育ったハーブを積み、それを口にするという体験を重ねるごとに、一本の線でつながっていく。このツアーが教えてくれるのは、環境に関する個別の知識だけではない。自然と人間の暮らしが、循環のなかにあるという紛れもない真実だ。
「蓼科 東急ホテル」前。カラマツを適切に間伐することで光が入り、美しい芝生が広がっていた。丁寧に管理されている。
森を守ると聞くと、「木を切らず、自然のままに残すこと」と思い浮かべる人は多いだろう。実は筆者自身にも、木を切ることに対してあまりよいイメージはなかった。
しかし東急リゾートタウン蓼科の運営者の説明によると、そのままの状態で必ずしも健やかに保たてるわけではないそうだ。木が過密に生えている場所では、地面に十分な光が届かず、若い木や草が育ちにくくなる。適切に間伐することで森に光が入り、新しい木が育ち、生きものが暮らせる環境になる。先述のとおり、伐採した木はただ捨てられるのではなく、家具や建材、ウッドチップなどに形を変えながら長く使い続けられていく。
「蓼科 東急ホテル」の客室「Karamatsu Classic」のベットサイドにあった、カラマツのサイドテーブル。
「東急リゾートタウン蓼科」は、もともと人の手によって開発された場所だ。開発当初は当然ながら自然環境への影響もあったという。一方でその後長い年月をかけて、森林の維持や整備、生態系の調査を続けてきた。現在では、敷地内で多様な動植物が確認され、森林を手入れする面積も広がっている。人が自然に関わった結果、森の環境が守られ、活性化してきた側面がある。
もちろん、木を切りさえすれば森が豊かになるわけではない。どの木をどの程度切るのか。その木を何に使い次の森をどう育てるのか。伐採から利用までを一連の流れとして考えることが欠かせない。
土場に並ぶ丸太を見たあと、タウン内の建物やホテルに入ると、家具や壁、テーブルに使われているカラマツがそれまでとは違って見えた。木材は森から切り離された製品ではなく、森の続きにあるものだと思えた。
ここにあるのは、自然を人間から遠ざけて守るのではなく、人が責任を持って関わりながら守っていくという考え方だ。
「TENOHA TATESHINA lab.」では、廃油を使った石鹸や落ち葉の標本づくり、カラマツの蒸留スプレーづくりを体験することもできる。
環境問題について知る機会は、以前より増えた。気候変動、森林破壊、生物多様性、食品ロス、脱炭素。学校やニュース、SNSなどを通して、子どもも大人も多くの言葉に触れている。
しかし、知識がそのまま行動につながるとは限らない。東急不動産の石原氏が繰り返し話していたのが、ここでの体験を「日常に持って帰ること」「自分ごと化すること」だった。
人の行動を変えるのは簡単ではない。それでも、森で何かを感じたり、知らなかったことに気づいたりする経験が、考え始めるきっかけにはなる。その場ですぐに何かを決意しなくても、体験が記憶に残り、日常のなかで「あのとき見たのは、こういうことだったのか」と結びつく瞬間が訪れればいい。その言葉を聞いたとき、「森と水の自由研究ツアー」がなぜ五感を重視しているのかが腑に落ちた。
水道水だと説明されたハーブウォーターの水は、驚くほどすっきりとしておいしかった。タウン内では敷地全体の水を自ら管理し、浄水して各施設へ届けているという。ふだんは意識せずに使っている水も、どこから来て、どのように自分の手元に届くのかを知れば、ただの水道水ではなくなる。敷地内のインフラを管理することも、広大なエリアの環境を守ることにつながっている。
タウン内では敷地全体の水を自ら管理・浄水している。
こうした体験は、子どものためだけのものではない。むしろ大人の方が知識としてわかったつもりになっているケースは多いのではないだろうか。木を切ることは悪い、水は蛇口をひねれば自然と出てくる、食べ物は店で買うもの――。日常の中で切り離されて見えているものを、もう一度つなぎ直すタイミングが必要かもしれない。
大人が環境問題について、子どもにすべて説明できるとは限らない。だからこそ、大人が教える側、子どもが教わる側と決めつけず、同じものを見て一緒に考えることに意味がある。
秋には中学生以上を対象に、森林が抱える問題や地域環境、CO2削減、生物との共存について、より深く学ぶ大人向けの環境ツアーも開催される予定だ。体験を通して自然との関係を学び直すことは、年齢を問わず必要とされている。
バイオマスボイラーでチップを燃やす際に出てくるCO2を固めてできたタンブラー。ツアーの記念に持ち帰ることができる。
VRや展示には、人の視点を変える力がある。知識をわかりやすく伝え、ふだんは見えないものへの意識を向けさせてくれる。けれども、実際に森へ出て光や風を感じ、目の前に広がる景色を見たとき、筆者はやはり本物の自然には何も敵わないと感じた。それはただ単に景色が美しかったからだけでなく、多くの命や人の営みが重なったものとして感じられたからだ。
自然を守ることは大切だが、そのためにまず必要なのは、自然と自分の暮らしがつながっていると実感することなのかもしれない。
猛暑によって自然との距離が広がりつつある今だからこそ、自然を「体験して学ぶ」場の価値は、これからさらに高まっていくのではないだろうか。
蓼科に多く自生する「カラマツ」にちなんだ品をセットでプレゼント。独自焙煎&ブレンドしたお茶は、まるで森の中にいるような気持ちになれる一品。また、カラマツの枝葉で染めたオリジナルの「草木染めトートバッグ(ミニ)」もセットに。樹木から汲み出した自然そのものの色合いは、使う場面を選ばず、暮らしの中に溶け込みます。
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※上の写真のカラマツ草木染トートは「フルサイズ」で、プレゼントは「ミニ」サイズです。ご注意ください。
※商品はELEMINIST編集部よりお送り致します。
●ご応募期間:2026年9月30日(水)23:59
●ご応募方法:下記の応募フォームでアンケートにご回答、必須項目にご入力ください。
●当選連絡:当選者には、2026年10月上旬頃にELEMINIST編集部(edit@eleminist.com) よりメールにてご連絡させていただきます。
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