Photo by Ana Maria Arevalo Gosen
ドイツ発の「Wildling Shoes(ワイルドリング・シューズ)」が手がけ、日本の和紙生地を使用し、足袋から着想を得た超軽量シューズ「Tanuki」が誕生10周年を迎えた。ドイツの権威あるデザイン賞を受賞した。

宮沢香奈(Kana Miyazawa)
フリーランスライター/コラムニスト/PR
長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…
Photo by Galya Feierman
6月13日に発表された「Tanuki」は、彫刻家ルース・アサワの作品をプリントした限定モデル
ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州エンゲルスキルヒェンに本社を構えるベアフットシューズブランド「Wildling Shoes(ワイルドリング・シューズ)」は、Anna Yona(アナ・ヨナ)とRan Yona(ラン・ヨナ)が、「子どもの足の健やかな成長のために、裸足のような感覚で歩ける靴をつくりたい」という思いから、2015年に創業した。子どもから大人まで幅広い世代に向けたベアフットシューズを展開している。
2016年には、大阪に本社を構えるITOI生活文化研究所の創設者であり、「Itoitex(イトイテックス)」を立ち上げた和紙生地の第一人者・糸井徹氏と出会い、シューズに応用できる素材の開発を依頼。こうして和紙生地の特許織物が誕生し、2017年には足袋から着想を得た「Tanuki(タヌキ)」を発表した。
Photo by ©︎Itoitex
「Tanuki」の和紙生地に使用されている紙の素材は、エクアドル産のアバカ(マニラ麻)で、バナナに酷似した多年生植物。その外皮内側の繊維は天然植物繊維の中でもトップクラスの引張強度と耐久性を誇る。
本来は伸縮性のない和紙にストレッチ性を持たせたこの素材は、富山県にある細川機業の特殊交織技術によって安定した生産を可能にした。足に触れる部分のほとんどが和紙となる構造を採用しており、「Wildling Shoes」とITOI生活文化研究所は、この特許織物の使用権に関する特別な独占契約を締結している。
また、「世界でもっとも軽い靴」とも称される「Tanuki」は、重量わずか56〜151gという超軽量設計に加え、優れた通気性、吸放湿性、耐久性を兼ね備えている。
Photo by Stefan Braunbarth
「Tanuki」は誕生から10周年を迎えた今年、ドイツの権威あるデザイン賞「German Design Award 2026」で最優秀賞を、「Big See Award 2026」で最高賞を受賞。「伝統的な和紙と現代のミニマリズムの絶妙な組み合わせが、スタイルを定義するトーンを生み出している」など、審査員から高い評価を得ている。
6月13日には、日系2世アメリカ人彫刻家で2013年に死去したRuth Asawa(ルース・アサワ)の作品をプリントした限定モデルを発表。アサワが1948〜49年頃に制作した《Untitled (BMC.144, Dancers)》のディテールをアッパーにプリントし、オフホワイトの和紙生地に映える上品なデザインが特徴だ。
シューズに加え、同デザインのソックスとバッグも展開している。現在、ビルバオ・グッゲンハイム美術館ではルース・アサワの大規模回顧展が開催されており、「Wildling Shoes」は同館のアソシエイトメンバーに任命されている。
Photo by Jette Schroeder
6月27日にはケルンにて「Tanuki」10周年アニバーサリーイベントが開催され、創設者のアナが次のように語った。
「Wildling Shoesのスピリットアニマルはキツネです。そのスピリチュアルな友達がタヌキです。Itoitexと私たちは同じ哲学を持ち、『紙で靴をつくりたい』という思いを共有したことから、『Tanuki』が誕生しました。しかし、その道のりは決して簡単ではありませんでした。トライ&エラーを繰り返し、数年かけてようやく最初の一足を市場に送り出すことができました」
ITOI生活文化研究所代表の久保田大三氏は、紙の持続可能性について次のように語る。
「紙の資源は世界中の草木です。これほど大きく持続可能な資源はほかにありません。しかも、草木は成熟するとCO2を吸収しなくなるため、適切な伐採が必要です。紙は、伐採された草木からセルロースだけを取り出した副産物です。自然の健全な循環のためにも、紙を使う意義があります」
現在、「Wildling Shoes」はITOI生活文化研究所とともに、エクアドルの単一農園からアバカを調達するための体制を構築中だ。これは、和紙のサプライチェーンのトレーサビリティを高め、よりサステナブルなものにすることを目的としており、エクアドル産アバカの独自のサプライチェーンを目指している。
また、ECを中心としたD2Cモデルを採用している理由は、サステナビリティだけではなく、より多くの人に適正な価格で製品を届けることを重視しており、代理店や小売店を介さないことで価格の上昇を抑えている。
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