メ〜テレ(名古屋テレビ)の人気ビジネス番組『ミライキャスト』によるスピンオフ企画が、愛知県豊田市で毎年行われている総合展示会「とよたビジネスフェア」で開催された。GXや人的資本経営、防災など、企業が直面するさまざまな課題をテーマにした特別セミナーの様子をレポートする。

永原彩代
編集・ライター
広告制作会社で編集・ライターとして勤務したのち、フリーランスに。美容・ライフスタイル・サステナビリティ領域を中心に、Webメディアで編集・執筆を行う。コスメコンシェルジュ、コスメライター…
毎回、さまざまな業界の最前線で注目を集める企業を取材する、メ〜テレのビジネス番組『ミライキャスト』。毎回、あるキーワードに着目し、そのキーワードを通して「ミライがどう変わるか」について話を聞き、「ミライ予測」を伝えている人気番組だ。
そのスピンオフ企画として、2026年5月14日、「第16回とよたビジネスフェア2026」内で特別セミナー『ミライキャスト Special Talk』が開催された。
「とよたビジネスフェア」は、自動車産業が中心の愛知県豊田市で、確かな技術力や製品を持つ市内企業を中心に、企業・団体が一堂に会する総合展示会だ。
16回目となる今回は、「技術×アイデアの循環が未来のビジネスを拓く」をテーマに、157の企業・団体が出展。会場となったスカイホール豊田には多くの来場者が訪れ、にぎわいを見せていた。
今回の『ミライキャスト Special Talk』では、ものづくりの未来を語るうえで欠かせない「サステナビリティ・DX」「人的資本経営」「製造業DX」「防災・レジリエンス戦略」など、6つのテーマについて、番組がピックアップした注目企業が登壇。現場や各担当者が抱える課題の共有や、課題を解決するサービスについて講演を行った。
各講演では、企業が直面する課題の現状を整理しながら、解決に向けたポイントや考え方について説明。あわせて、それぞれの企業が展開するサービスや支援内容も紹介された。
約3時間にわたるセミナーには、最初から最後まで参加する来場者の姿も多く見られた。脱炭素や熱中症対策、防災など、「気にはなっているものの、何から始めればいいかわからない」。そんなテーマの最前線に触れられる場として、多くの来場者が熱心に耳を傾けていた。
サステナビリティAIプラットフォームなどを展開するアスエネ株式会社。同社CEO室 ハイエンプラチーム 兼 アスエネ事業部・アスエネSC事業部 営業統括 General Manager・橋本真一郎ミヒャエル氏は、「脱炭素の“ムリ・ムラ・ムダ”をなくし、コスト削減とCO2削減を両立する基本ステップ」をテーマに講演を行った。
近年、企業には政府機関や金融市場、取引先など、さまざまな方面から脱炭素への対応が求められている。橋本氏は、自社だけでなくサプライチェーン全体でのCO2排出量開示や削減要請が広がっている現状について説明。大企業を中心に法規制も進むなか、中小企業にも対応が求められており、取り組みの遅れが取引停止リスクにつながる可能性もあると話した。
一方で、脱炭素について「どう進めればいいのかわからない」「コストがかかるのでは?」と考える企業も少なくないそう。しかしエネルギーコストの削減はCO2削減にもつながることから、両者は両立できると説明した。
そのうえで重要なのが、CO2排出量の“正しい可視化”だ。自社がどれだけ排出しているのかを正しく算定しなければ、どこを削減すべきかが見えてこない。講演では、企業がCO2排出量を可視化する際に生じる課題についても言及。とくに、データ収集や算定作業に多くの時間や労力を費やしてしまう“ムダ”は少なくないという。
また、可視化できているつもりでも、拠点別や部門別の排出量を十分に把握できていない企業もあるそうだ。さらに、拠点ごとに異なる方法で算定を行うことでデータにばらつきが生じる“ムラ”も課題のひとつと説明。こうした状況では、取引先から詳細な開示を求められた際に必要なデータを提出できないケースもあるとし、“正しい可視化”の重要性を強調した。
講演では、同社サービスを利用し正しく可視化したことで、新たな取引や事業機会につながった事例も紹介。脱炭素が企業活動において避けて通れないテーマとなっていること、そしてその第一歩となる“正しい可視化”の重要性を改めて示す講演となった。
自動販売機を活用したソリューション事業などを展開するサントリービバレッジソリューション株式会社 マーケティング本部サービス戦略部・松本俊氏は、近年社会課題となっている「職場の熱中症対策」をテーマに講演を行った。
気候変動による暑熱環境の変化が進むなか、企業における熱中症対策の重要性は年々高まっている。松本氏はまず、2026年3月に厚生労働省が職場における熱中症防止対策のためのガイドライン」を策定し、多量の発汗を伴う作業場では飲料水や塩分補給ができるものを備え付ける必要性が示されたことなど、企業側にも対応が求められている現状について説明した。
一方で、熱中症対策として飲料を設置したり啓発ポスターを掲示したりしても、「飲料を置いて終わり」「ポスターを貼って終わり」となり、従業員の主体性に依存した対策になってしまうケースも少なくないという。
そこで同社が提案するのが、法人向けサービス「DAKARA給水所」だ。従業員証をかざすことで冷えたドリンクを受け取れる仕組みで、提供時間や本数制限なども設定可能。従業員の導線上への設置や休憩時間と連動した運用によって、自然な水分補給を促す設計だ。また、利用状況をデータとして可視化できるほか、発注や補充、在庫管理などもサービスに含まれており、安全衛生担当者の業務負担軽減にもつながるという。
講演では、単に飲料を設置するだけでなく、無理なく継続的に水分補給ができる環境づくりが重要だと説明。従業員の行動変容につながる仕組みづくりの必要性を語った。
同サービスを導入した企業では、「水分摂取量が増えた」と回答した従業員が7割を超えたケースもあるといい、水分補給を日常的な行動として定着させる工夫の成果がうかがえた。
株式会社生方製作所は、ガスメーターに搭載される感震器で国内トップシェアを誇る企業。同社MSセンター マーケティング&セールスグループ ミネルヴァセーフティソリューション・佐藤昇吾氏は、「企業防災・レジリエンス」をテーマに講演を行った。
南海トラフ地震や首都直下型地震など、大規模災害への備えが求められるなか、佐藤氏は「南海トラフ地震は、“来るか来ないか”ではなく、“いつ来るか”の段階に入っている」と説明。甚大な被害想定が示されている一方で、十分な備えができている企業はまだ多くない現状にも触れた。
また、「災害が起きたら従業員を帰宅させればいい、という考え方は現在の防災方針とは異なる」とし、企業には災害発生後、従業員を一定期間受け入れる備えが必要だと説明。発生直後に帰宅させてしまうと、交通機関や道路の混乱を招き、人命救助にも影響が出てしまう。また、発災後72時間は人命救助が優先されることから、「企業には支援が届かない前提で備える必要がある」と話した。近年は3日分ではなく、7日分の備蓄が推奨されているという。
さらに、近年の雇用環境の変化にも注目。厚労省が発表した令和6年版のデータによると、労働力人口総数に占める女性の割合は45.4%にのぼる。それにもかかわらず、企業備蓄は依然として男性基準で整備されているケースも少なくないそうだ。実際の防災に関するアンケートで、「プライバシーが不安」「衛生用品の不足が不安」といった声が女性から多かったことも紹介した。
佐藤氏は、「必要なのは、生き延びるための備えだけではなく、安心して過ごせる環境づくり」だと強調。同社では、女性メンバーを中心に立ち上げた防災ブランド「ピオマプラス」を通じ、多様な従業員に配慮した企業備蓄を提案している。企業防災を見直すうえで、生き延びるための備えだけでなく、災害時に安心して過ごせる環境づくりまで考える必要性を示す講演となった。
「ミライキャスト Special Talk」では、脱炭素や健康、防災など、企業活動を取り巻く多様な課題が共有された。サステナビリティが環境領域だけではなく、働く環境や企業経営、防災・レジリエンスなど、企業活動のさまざまな場面で求められていることを感じさせるセミナーとなった。
また、各講演では企業が抱える課題の背景や現状を整理したうえで、解決に向けた考え方やアプローチについても紹介。業界を超えて課題意識や取り組みを知ることで、来場者にとっても自社の取り組みを見つめ直すきっかけや、新たな視点に出会う場となっていたように感じられた。
企画・取材・執筆/永原彩代
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