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コミュニティツーリズムとは、地域の人々が主体となってその地域の文化や歴史を観光資源に活用し、地域経済の成長につなげる旅のかたちだ。インド北部の山岳地帯で行われているツアーは、成功した事例のひとつだ。

Kojiro Nishida
編集者・ライター
イギリス、イースト・ミッドランズ地方在住。東京の出版社で雑誌編集に携わったのちフリーランスに。ガーデニングとバードウォッチングが趣味。

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一般的な観光モデルでは、観光客が訪れても、その利益が地域住民の雇用や暮らしに十分つながらないことがある。また、観光地化が進みすぎれば、自然環境や地域の日常に負荷がかかることも少なくない。
こうした課題に対する一つの選択肢として注目されているのが、「コミュニティツーリズム」だ。観光地の運営や意思決定を地元住民が主導し、観光収益を地域コミュニティに還元することで、住民の暮らしや伝統、地域の自然環境を守りながら、持続可能な経済循環を生み出すことを目指している。
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コミュニティツーリズムの事例として知られているのが、インド北部ウッタラカンド州・クマオン地方で活動する社会的企業「ヴィレッジ・ウェイズ(Village Ways)」だ。
中国とネパールに国境を接するヒマラヤ山麓のこの地域では、仕事を求めて都市部へ移る人が増え、山村の人口流出が課題となってきた。そんななか2005年に設立されたヴィレッジ・ウェイズは、地元住民が建設・所有・運営する小さなゲストハウスを拠点に、村と村を歩いて巡る「ウォーキングホリデー」を展開している。
ツアー参加者は1グループあたり5〜6人までに限定。自然環境への負荷を減らし、オーバーツーリズムを避ける工夫もなされている。現在では、インド国内で約30の村がこのプロジェクトに参加している。
ヴィレッジ・ウェイズの仕組みの中心にあるのは、各村に設けられた委員会だ。委員会には各世帯から最低1名が参加し、意思決定や収益分配が公平に行われるようにしている。ゲストハウスの建設、所有、維持管理も、すべて地元の人々の手によるものだ。
約470名のメンバーのうち女性の割合は49%。ガイドやホストとして働く住民には、安全管理や衛生、廃棄物処理などのトレーニングも提供される。
ヴィレッジ・ウェイズによる取り組みの効果は、すでに地域の変化として表れている。
クマオン地方のゴナップ村では、2003年時点で残っていたのはわずか3世帯だったが、現在は7世帯にまで増えているという。ヴィレッジ・ウェイズの活動によって収入が生まれたことで、村を離れようとしていた人々が、暮らしを続ける選択肢を持てるようになった。
コロナ禍以降は、雇用の可能性が生まれたことで、都市部から村へ戻る若い世代も出てきているという。
日本各地でも過疎化が進むいま、観光を地域の外から消費するものではなく、住民の暮らしを支える仕組みに変えていくコミュニティツーリズムの考え方には、学ぶべきヒントが多くありそうだ。
※参考
Can tourism keep rural villages thriving? In India’s Himalaya foothills, one initiative is doing just that|Adventure.com
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