大阪・関西万博の日本館で多く取り上げられ、大きな注目が集まっている「微細藻類」。その特徴や可能性について学ぶ子ども向けのワークショップが2026年3月29日に開催された。ポテンシャルの高い微細藻類を活用して、どんな商品がつくれるか子どもたちの斬新な発想力でディスカッションが繰り広げられた。2026年4月18・19日に開催されるアースデイ東京2026での発表に向け、子どもたちのアイデアがあふれる姿を紹介しよう。

ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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この日用意された微細藻類。試験管の中の茶色がかったものが「ソラリス」だ。
このワークショップは、微細藻類から化粧品の原料をつくる取り組みを行っている「circuRE act(サキュレアクト)」と、小中学生が主体となった環境活動団体「DREAM BUILDERS」が企画したものだ。
微細藻類とは、目に見えないほど小さな「藻(も)」のこと。太陽光や二酸化炭素、水、栄養塩を利用して培養できるのが特徴だ。たんぱく質含有量が高いものや炭水化物含有量が多いもの、脂質含有量が多いものなど種類が豊富。バイオ燃料や水産飼料、色素としての活用など、さまざまな可能性を持っており、サステナブルな原材料として注目されている。
ワークショップでは、まずサキュレアクトの塩原祥子代表と微細藻類学者・松本光史氏から、微細藻類についての基礎的な説明が行われた。
藻類学者の松本光史氏から、微細藻類とはどのようなものなのか、説明が行われた。
藻類学者:松本光史(まつもと みつふみ)
東京農工大学にて海洋微生物工学で学位を取得し、ハワイ大学在籍中に微細藻類の多岐にわたる微生物培養技術開発を経験。微細藻の多目的利用を目指した事業化研究を推進。微細藻類の獲得、培養技術開発、生産物事業化までを経験。広島大学特任教授、東京農工大学非常勤講師、特任准教授、マリンバイオテクノロジー学会の副会長(在任中)を歴任。東京大学、広島大学、高知大学などで海洋生物工学領域での講義を担当するとともに、学術論文 (40篇以上)、総説・著書 (20篇以上)、特許出願 (30件以上)を保有。
なかでもサキュレアクトが扱うのは、微細藻類の一種「ソラリス」である。奄美大島のマングローブで発見され、脂質を多く含み、海水で増殖する特性を持つ。また、食品や化粧品、工業製品など幅広く利用されているパーム油と組成が似ているのも特徴のひとつだ。パーム油は環境・社会的な課題を抱える一方で、生産に関わる人々の生活も支えており、単純に使用をやめることは難しい。
こうした背景から、ソラリスは既存の資源に過度に依存しないための選択肢としても注目されている。また、抗炎症や紫外線対策といった化粧品原料としての応用に加え、色素や食品素材としての活用も期待されている。
ワークショップには、環境活動団体「DREAM BUILDERS」に所属する、小学2年生から中学1年生までの子どもたち11名が参加した。はじめは専門的な内容に戸惑う様子も見られたが、説明が進むにつれて徐々に理解が深まり、前のめりに話を聞く姿が目立つようになった。また、気になった点をその場で質問するなど、主体的に学ぼうとする姿勢がうかがえた。
微細藻類の油を活用したSAF(持続可能な航空燃料)の話題に触れた際、「それは今実現できているんですか?」といった質問があがった。現時点では大量生産が難しく実現には至っていないことが説明されると、うなずきながら納得する様子も。
こうしたやり取りからも、子どもたちが自分なりに考えながら理解を深めていることが伝わってきた。
口頭での説明だけでなく、ソラリスを観察する体験も実施。一個だけでは目に見えないサイズのソラリスを目視できる程度まで集め、寒天斜面培地(試験管内で寒天を斜めに固めた培地)に付着させたものを観察。
「何個集めたらこうなるんですか?」などの質問が飛び、試験管を持ち上げたり、角度を変えたりしながら、さまざまな方向から観察していた。
さらに、顕微鏡でソラリスの細胞を観察する体験では、「顕微鏡をのぞいてみよう!」という塩原氏の呼びかけに、すぐに子どもたちの列ができる場面も。
「動いているみたいに見える」「こんな形しているんだ!」といった声が上がり、笑顔を見せる場面もあった。感想を言い合いながら観察を楽しむ様子からは、学びが自然と広がっていく様子が感じられた。
そして顕微鏡をのぞいた後、それぞれ席に戻ると、見えた微細藻類をすぐにスケッチ。観察した内容を自分なりに捉えて記録していく姿が見られた。観察した内容をもとに、近くの参加者同士で気づきを共有し、体験を通じて理解がさらに深まっていった様子がうかがえた。
続いて、培養したソラリスが油になるまでの工程についても紹介された。回収し乾燥させたもの、そこから抽出した油、さらに抽出後の残渣(ざんさ)などサンプルが示され、素材としての変化を目で追うことができた。
そのなかのひとつである、抽出した油のニオイを確かめる体験では、塩原氏から「何のニオイに似ているかわかるかな?」と問いかけられると、「お酢かな?」「ガスみたい」といった声が上がり、子どもたち同士で意見を出し合っていた。正解として「魚のニオイ」であることが伝えられると、「ああー!」と会場には大きな歓声が広がった。
休憩時間にも学びは途切れることなく、塩原氏や松本氏のもとに集まって質問を重ねる子どもたちの姿があった。限られた時間の中でも、関心を持ったことを自分の言葉で確かめようとする姿勢から、子どもたちの真剣さが伝わってきた。
ワークショップの後半では、微細藻類を活用した具体的な商品についての企画を発表。化粧品や食品など、それぞれのアイデアをパワーポイントや口頭で表現し、現時点での考えを共有した。
最初に学んだ内容をもとに、「お父さんの健康をサポートしたい」「妹に向けた製品をつくりたい」など、具体的なストーリーも盛り込まれていた。誰に届けたいのかを意識した構成となっており、製品の背景まで考えられている。
その後の質疑応答では、ソラリスとほかの微細藻類との違いや、製品としての差別化といった観点から質問が寄せられ、企画をさらに深めるやり取りが行われた。
これらの子どもたちの企画は、2026年4月18・19日に開催されるアースデイ東京2026で発表される。微細藻類の可能性を知るいい機会になるうえ、未来を担う子どもたちが真剣に考えたアイデアと熱量をぜひ会場で受け取ってほしい。
撮影/岡田ナツ子 取材・執筆/永原彩代 編集/佐藤まきこ(ELEMINIST編集部)
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