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イギリス政府は自国を「AI超大国」と位置づけ、経済成長の柱に据えようとしているが、データセンターから排出される二酸化炭素が、政府の予測を数百倍も上回る可能性がでてきた。

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AIの急速な普及に伴い、世界中でデータセンターの建設ラッシュが続いている。イギリス政府は自国の経済成長の柱としてAIの活用を積極的に考えている。
だが、その一方でAIの爆発的な普及とともに懸念されているのが、データセンターと呼ばれる施設で排出されるCO2だ。データセンターとは、AIが行う膨大なデータ処理に特化した施設で、高性能のGPU(画像処理)サーバーなどを備える。
そして、膨大な量のエネルギーを消費し、さらに冷却にも大量の水が使われる。このデータセンターによるCO2排出量などの環境への負荷が大きいことが懸念されているのだ。
英国はデータセンターの容量が1.8GW(ギガワット)と世界トップクラスであり、しかも英国政府が「AI超大国」を目指しているため、この容量は今後数年間で急速に増加する可能性がある。
英国政府ではデータセンターによるCO2排出量はごくわずかと述べているが、Carbon Briefの分析では、データセンターが必要とする電力の少なくとも一部がガス燃焼によって発電される場合、データセンターの電力供給による排出量は政府の数値よりもはるかに高くなる可能性があると指摘している。
例えば、政府が2025年に発表した分析では、2035年時点でのAI関連データセンターからのCO2排出量は、最大でも年間約14万トン(0.142 MtCO2)に留まるとされていた。これは英国の総排出量の0.05%未満に相当し、政府は「影響は極めて軽微」との立場を取っている。
しかしCarbon Briefの分析によると、政府の試算は「データセンターに供給される電力がほぼ完全に脱炭素化されている」という、極めて楽観的な前提に基づくものであるという。
仮に、データセンターで使われる電力の5%が火力電力のものであるなら、排出量は政府予測の10倍以上に達するうえ、火力発電の依存量が増えるほど政府予測の数百倍まで膨れ上がる可能性がある。これは、デンマークやスウェーデンといった一国家の年間排出量に匹敵する規模だ。
英国は2030年までにクリーンな電力システムを構築し、2035年までに電力部門の脱炭素化を完了させる高い目標を掲げている。しかし、AIブームによる電力需要の激増は、このロードマップを根底から揺るがしかねない。
環境保護団体からは、「政府の数字はナンセンスであり、炭素予算(排出枠)の達成を危うくするものだ」との厳しい批判が出ている。もしクリーンエネルギーの導入が遅れれば、データセンターの需要を満たすために、本来廃止すべきガス火力発電所を稼働させ続けなければならなくなるのは矛盾かもしれない。
一方で、多くのIT企業は、電力購入契約(PPA)を通じて風力や太陽光発電の新規建設を支援していることから、データセンターの拡大が再生可能エネルギーへの投資を呼び込む呼び水になるという声もある。
AIの急速な発展と普及とともに、地球への影響と共存する方法も考えなければならないだろう。
※参考
The Carbon Footprint of the Data Center Surge|Bloomberg
Analysis: CO2 from UK data centres could be ‘hundreds of times’ higher than thought|Carbon Brief
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