Photo by Finnegan-Koichi-Godenschweger
ウガンダやケニアなどの後進国には、欧米のような先進国から大量の古着が輸入され、廃棄処分や国内繊維産業に悪影響を与えている。ウガンダ発の「ブジガヒル(BUZIGAHILL)」は、そんな”不要な古着”をアップサイクルし、社会問題に立ち向かうブランドとして注目を集めている。

宮沢香奈(Kana Miyazawa)
フリーランスライター/コラムニスト/PR
長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…
1月30日から2月2日にかけて開催された「ベルリン・ファッション・ウィーク 2026年秋冬コレクション」のランウェイで、ウガンダ発の「BUZIGAHILL(ブジガヒル)」が前シーズンに続き、最新コレクションを披露した。
2回目の参加となった今シーズンは、コミュニケーション&クリエイティブエージェンシー「Reference Studios」がキュレーションする革新的かつ気鋭デザイナーのみが参加できるプレミアショーケース「INTERVENTION」での発表を果たした。
ブランドが一貫して取り組むのは、古着を解体・再構築する100%アップサイクルによるコレクション制作だ。
2026年秋冬コレクションでは、60〜70年代の東アフリカからインスパイアされたレトロなデザインと現代的なエッジの効いたデザインを融合。ウガンダやケニアの街を走るバイクタクシー「ボダボダ(Boda Boda)」のライダーからインスパイアされたワークウェアを取り入れ、ポスト独立期のストリートカルチャーを表現している。
ジーンズ、トレンチコート、トラックパンツ、スーツなどを独自のアップサイクル技術によって再構築した全26ルックを披露した。
ブジガヒルが掲げるミッションは「世界で最高のアップサイクラーになること」。その実践として展開されるのが「RETURN TO SENDER(RTS)」だ。RTSは、ヨーロッパ、アメリカ、アジアからウガンダへ流入した古着を再設計し、再びグローバルノースへ送り返すというプロジェクトである。
これは単なる循環型デザインではない。古着サプライチェーンの末端に位置づけられてきたウガンダからの批評的介入であり、「受け手」に固定されることを拒否する意思表明でもある。
ウガンダでは、輸入古着が衣料品購入の約80%を占めるとされる。大量流入は安価な選択肢を提供する一方で、国内繊維産業の再興を妨げ、創造的ファッション産業の発展機会を奪ってきた。RTSは、このいびつな衣料循環構造に対する応答として位置づけられる。
また、ここでアップサイクルは環境配慮の手法というよりも、経済構造と文化的ヒエラルキーへの問いとして機能している。
RTSの制作に用いられる古着は、アフリカ最大級の古着集積地のひとつである「Owino Market」から調達されている。
衣類は洗浄や分析を経て、ブランド独自のアップサイクル技術によって再構築される。各ピースには個別のパスポートラベルが付与され、原産地、素材構成、生産時期、固有識別番号が明示されるなど、トレーサビリティ(追跡可能性)が可視化されている。これにより、匿名の廃棄物から、生産課程が明確に記されたプロダクトに生まれ変わる。
ブランドを率いるのは、クリエイティブディレクターのボビー・コラデだ。スーダンで生まれ、ナイジェリア系ドイツ人の両親のもとカンパラとラゴスで過ごす。ベルリンのヴァイセンぜー美術大学(Berlin Weissensee Academy of Art)でファッションデザインの修士号を取得後、Maison MargielaやBalenciagaといった欧州メゾンで経験を積んだ。
2018年にカンパラへ拠点を移し、ウガンダのコットンサプライチェーンを2年間にわたり調査。そのリサーチを経て、2022年に「ブジガヒル」を立ち上げた。
Photo by Finnegan-Koichi-Godenschweger
英国発の非営利団体「ファッション・レボリューション」が調査する世界の主要ファッションブランドと小売企業の透明性を評価・分析した年次レポート「ファッション透明性指数2023」によると、現在のグローバルな流通システムには、今後6世代分に相当する衣料がすでに存在しているという。つまり本当に必要な量を大きく超えた分がつくられているということだ。
それにもかかわらず、ファストファッション企業は未公表の数量で安価な衣服を過剰生産し続けており、売れ残った製品など、その多くは廃棄物となってグローバルサウスへ売却されている現実がある。
「ブジガヒル」は、アップサイクルを単なるサステナビリティの手法にとどめず、グローバルな衣料循環構造への批評的介入として提示している点において、国際的なファッション文脈の中で存在感を高めている。
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