イギリスでプラ製ウェットティッシュを販売禁止 国民の97%が賛成

ボックス入りのウェットティッシュ

Photo by Kelly Sikkema on Unsplash

イギリスで、プラスチック製ウェットティッシュの販売が禁止される。主な理由は、下水道の詰まりの原因になっていることと、環境や生物への影響だ。

Ouchi_Seiko

ライター

フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。

2025.12.15

ウェットティッシュの一部にプラスチックが使われている

2025年11月、イギリス政府がプラスチック製ウェットティッシュの販売禁止を法制化した。イングランドでは2027年春から施行されるが、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドなどの地域ではこれより早く、2026年中の施行が見込まれている。

イギリス環境食糧農村地域省によると、同国では110億枚のウェットティッシュが使用されていると推測され、およそ5枚に2枚には、強度を強めるといった目的でプラスチックが含まれるという。

規制の背景には2つの大きな理由がある。1つは、下水道の詰まりを防ぐこと。イギリスでは使用後のウェットティッシュをトイレに流す人が多いが、プラスチック繊維を含むウェットティッシュは水に溶けず、トイレットペーパーのように分解しないため、下水管内で固まり「ファットバーグ」と呼ばれる大きな詰まりの原因になる。

実際、UK Water Industry Researchの報告によると、下水の詰まりの94%がプラスチック製ウェットティッシュによるもので、水道会社は年間約2億ポンドを修理費用に費やしている。各家庭に請求される水道料金に、この費用が転嫁されているという。

もう1つは、自然環境と生物への悪影響だ。使用後のプラスチック製ウェットティッシュが適切に処理されず自然界に廃棄されると、やがてマイクロプラスチックに分解され、野生動物にも悪影響を及ぼす可能性がある。

さらに、国民の強い支持も規制の背景にあった。イギリス政府が行ったパブリックコンサルテーションでは、95%もの人がプラスチック製ウェットティッシュの禁止に賛成している。

「生分解性」「流せる」表示のウェットティッシュにも注意を

今回の法制化を受け、エマ・ハーディ水道担当大臣は、ウェットティッシュの製品ラベルに、「トイレに流さずごみ箱に捨てるべき」という政府のメッセージが反映されるよう、製造業者に書簡を送っている。

これは、「生分解性」や「flushable(流せる)」と表示されたウェットティッシュでも、マイクロファイバーが残ることが研究でわかっているためだ。

たとえば、カーディフ大学の研究では、表示にかかわらずウェットティッシュから大量のマイクロファイバーが放出され、水中で分解されにくいことが確認された。

また、イースト・アングリア大学の研究によれば、生分解性ウェットティッシュが分解される時間は、環境によって数か月から数年かかる場合があるという。

そのため、専門家は下水道の詰まりや環境汚染のリスクを避けるため、使用後は必ずごみ箱に捨てるようすすめている。

環境を守るシンプルな約束

植物の側に折りたたまれたタオル

Photo by Sven Mieke

プラスチック製ウェットティッシュの販売については、一部例外もある。医療現場やホテルといった事業所で使用されるものに関しては、引き続き販売・購入が可能だという。

こうした例外を踏まえ、イギリスの水道事業者と政府は国民に向けて改めて注意を呼びかけている。トイレに流してよいのは「3つのP」(尿、便、紙のみ)とするものだ。

これはきわめてシンプルな解決策に思えるが、使用後の処理だけに頼るのでは不十分かもしれない。そもそもごみを出さない、使い捨て製品やプラスチック製品を購入しないという選択肢が、自然環境を守る大きな一歩につながる。

※参考
Plastic wet wipes to be banned in England|BBC
New law bans plastic wet wipes to protect rivers and seas|GOV.UK

※掲載している情報は、2025年12月15日時点のものです。

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