「庭などの置き場所がない」「堆肥の使い道がない」など、コンポストを始める前にどうしてもハードルを感じてしまうという声は少なくない。「そんなご家庭にこそ使っていただきたい」と話すのは、持続可能な社会の実現に取り組むグリービズ株式会社 代表の中野大河氏。堆肥回収サービスが目玉の都市型コンポスト「ecotasコンポスト」について紹介する。

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「ecotas(エコタス)コンポスト」は、都市部に暮らす生活者向けに開発された、堆肥回収サービス付きのバッグ型コンポスト。コンポストでつくられる堆肥を自宅で回収してもらうことができ、その堆肥は農家の野菜栽培に活用されるというものだ。
「堆肥の使い道がない」「むずかしそう」といった理由で挫折してしまったというユーザーの声を参考に誕生した「ecotasコンポスト」は、室内にも置けるコンパクトな大きさで、初めてでも使いやすい仕組みが整っている。
グリービズ株式会社 代表の中野大河氏に詳しく話を聞いた。
――まず「ecotasコンポスト」がどのように誕生したのか教えてください。
弊社のメンバーが過去にバッグ型コンポストを使っていて、挫折していたんです。バッグ型コンポストは、なかに入れる基材が最終的に堆肥になるのですが、結構な量の堆肥ができます。2~3か月の1サイクルで12L程度と、横長のプランター一つ分の量に相当します。自宅の観葉植物では使い切れない、一方で堆肥は自治体のルールで捨てることができないため、結果的に続かず挫折してしまいました。
そこで気になって調べてみると、「やってみたけど続かなかった人」が多くいらっしゃることがわかりました。ELEMINISTさんの記事も拝読し、堆肥の使い道に困った方が多かったことから、堆肥を回収するサービスがあったら、もっと多くの方にとってコンポストが身近なものになるのではないかと考えました。
――それが「ecotasコンポスト」のサービスにつながったのですね。どういった特徴があるのでしょうか。
「ecotasコンポスト」は家の中にも置ける大きさのバッグ型のコンポストで、「使いやすさ」と「堆肥回収」がポイントです。広い場所や庭を必要とせず、マンションなどの限られたスペースで始められますよ。
初めてのご注文でコンポストバッグ、専用の基材(微生物による発酵を促すためのもみがらやヤシガラが混ざったもの)、スタートガイドが届きます。バッグに野菜のくずやコーヒーの殻、卵の殻などを投入して混ぜると、微生物によって分解され、発酵が進むことで堆肥になります。
2回目以降の注文では新しい基材と回収セットが届くので、新しい基材と堆肥を入れ替えていただき、堆肥は回収に出します。
――コンポストを始める前は「置き場所がない」「続けられるか心配」など構えてしまいますが、かき混ぜるだけというのは使いやすそうですね。また、バッグ型で密封できるのも安心です。目玉の「堆肥回収」について教えていただけますか。
回収について大きく3つのポイントがあります。
一つ目は、申し上げた通り、使い切れない堆肥を回収することで「堆肥どうする問題」を解決できる点です。コンポストユーザーの最大の悩みともいえる「堆肥の使い道がない」という声に応えました。お客様からいただいたコメントで、私たちも想定していなかったのですが、万が一「ニオイが気になる」など何かあった場合でも、その堆肥は回収してもらい、新しい基材で再チャレンジできるメリットもあります。
二つ目は、好きなタイミングで回収を依頼できる点です。堆肥の返送期限は設けていないため、お客様のご都合に合わせて、いつでもご返送いただけます。一部を家庭菜園に使い、余った分だけを回収に回すなど量の調節も可能です。回収の担当者が玄関先にまいりますので専用の袋に入れて手渡すだけと、返送も簡単です。
三つ目は通常のコンポストでは入れられないものも投入可能という点です。「ecotasコンポスト」では、堆肥回収後に提携農家で二次処理を行うため、貝殻やトウモロコシの皮、手羽など、通常のコンポストでは分解しづらくNGとされてきたものも投入可能となるため、生ごみ仕分けの手間なども減ります。
――堆肥回収の目安期間はどれくらいでしょうか。
どんなものをどれくらい入れるかや気温によって分解、発酵のスピードは変わりますが、4人暮らしのご家庭で2か月に1回くらいが目安です。回収する際は専用の返送用袋に入れてから段ボールに入れて回収の担当者に手渡すだけと、ユーザーのみなさんの負担を極力減らしました。継続セットを購入いただくと、新しい基材と返送用袋と伝票が同梱されている形式です。
――玄関まで回収に来てもらえると重い堆肥を持たなくて済みますし、次回の返送用袋や伝票を同時にもらえるのはありがたいですね。ユーザーの方の反応はいかがですか。
まずは関東圏(東京を含む1都7県全域)からのスタートですが、「生ごみがほとんど出なくなってストレスが減りました」「堆肥を回収してくれるのが再開するきっかけになりました」といった嬉しいお声をいただいています。他にも公式LINEで質問していただけるようになっているのですが「ユーザーサポートが良かったです」というお声もあり、とても励みになりました。
――回収された堆肥はどこへ向かうのでしょうか。
ユーザーのみなさんのご家庭から出た堆肥は東京都三鷹市で6代続く農家の鴨志田(かもしだ)農園さんへ運ばれます。堆肥は農園で二次処理を施し、その後、畑で使われています。野菜の皮や卵の殻は捨てれば「ごみ」ですが、コンポストを通して堆肥化することで、ごみ問題の解消や新しい循環を始める一歩につながっていけばと思っています。
――最後に、今後の展望について教えてください。
現在、回収した堆肥は約200~300世帯分の堆肥ごとに二次処理をし、ナスやトマト、トウガラシなどそのときどきの野菜の栽培に活かしてもらっています。今後は、そこの畑で育った野菜や、野菜を加工したピクルスや漬物が自宅へ届くというような本当の「循環」を目指しています。また、いずれコンポストサービスだけでなく、ヘチマのスポンジなど台所用品全体をエシカルな製品で揃えられるようにサービス提供できればなど考えています。
――都市部にいると「循環」を感じることは多くないかもしれませんが、「ecotasコンポスト」を使うことで私たちも「循環」の一部をつくり出すことができますね。ごみ問題にもアプローチできますし、大きく夢が広がるサービスだと思いました。
日本は長年「物が壊れても修理する」「最後まで大切に使い切る」など、ある意味で非常にエシカルな暮らしをしてきました。こうした日本らしい暮らしを守りながら、「ecotasコンポスト」を通じて「循環」する豊かな暮らしが広まれば嬉しいです。
生ごみを“ごみ”ではなく“資源”として扱う視点は、言葉では簡単に聞こえても、実際の暮らしに落とし込むのはなかなか難しい。それを「バッグひとつ」と「回収サービス」という仕組みで、都市部の家庭でも無理なく続けられる形にしたのが「ecotasコンポスト」だ。
堆肥を回収するトラックの先には、農園の畑があり、やがてそこで野菜が育つ。
都市と農の距離を縮める「ecotasコンポスト」によって単なる生ごみ処理の枠を超え、私たちの日常に“循環”という新しい豊かさを与えてくれる日も近いかもしれない。
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