世界を驚かせた「ChatGPTを省エネモードにする」方法 AIによるCO2排出を減らす工夫

PCのキーボードを打つ人の手

Photo by Zan Lazarevic on Unsplash

私たちの暮らしやビジネスの頼れるパートナーとなりつつある生成AI。だが、複雑な回答を短時間で生み出す過程で、莫大なエネルギーと水を消費しており、環境負荷の高さが指摘されている。そんななか、ChatGPTを省エネモードにするプロンプトが発表された。

Naoko Tsutsumi

エディター/ライター

兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。

2025.09.02

ChatGPTの消費電力はウェブ検索の約10倍とも

仕事の効率を上げたり、家事や育児の合間にサッと資料をまとめたり、ときには愛犬や愛猫の写真を擬人化して楽しんでみたり。人々の暮らしに必要不可欠なツールになりつつあるAI。だが、便利なAIの台頭によって、巨大なデータセンターが必要となり、そこでは多くの電力が消費されていることを忘れてはいけない。

例えば、生成AIツールとしてよく知られているChatGPTの場合を見てみよう。一部推計によると、ChatGPT-4の平均的な質問1件あたり、最大で2.9Whの電力を消費する可能性があるという。一般的なGoogle検索では1回あたり0.3Whであり、その約10倍の電力を使うというのだ。さらにデータセンターではコンピュータ機器の冷却に大量の水が使用されており、環境負荷について指摘する声が上がっている。

ChatGPTを開発したOpenAIのCEOであるサム・アルトマンCEOは、ChatGPTの1回あたりの消費電力を0.34Whと試算し主張している。

だが、ChatGPTの週間アクティブユーザー数が、世界人口の5%に相当する4億人を超えている(2025年2月時点)ことを考えると、AIツールが環境に与える影響について、我々が考えなければならないことは事実だろう。

実際、国際エネルギー機関(IEA)は2030年までに世界のデータセンターの電力消費量が2024年の水準から倍増し、約945TWhに達し、世界総電力消費量の3%弱を占めると予測。これに伴い、世界的に温室効果ガス(GHG)排出量が増えるとみられる。

ChatGPTを「省エネモード」に変えるプロンプトが誕生

そこで生まれたのが、ユーザー自身でAIを「省エネモード」に変えられる方法だ。

気候変動イニシアティブのEarth Public Information Collaborative(EPIC)が開発したプロンプト「PromptZero」で、これを使えばCO2排出を削減することができるという。

一般的にAIが複雑な回答を生成しようとすればするほど多くの計算処理が必要となり、消費電力も、冷却に必要な水も増える。しかしこのプロンプトは、AIに対して要点を押さえた回答を生成するよう促すことができる。具体的には、つなぎ言葉や長い導入文、繰り返しが抑制され、短い文章や箇条書きでの回答が促される。

使い方は簡単だ。「PromptZero」のウェブサイトにアクセスし、「COPY PROMPT TO CLIPBOARD*」と書かれたボタンをクリックすると、特別なプロンプト(指示文)がコピーされる。これをChatGPTを使う際、ペーストして、あとはいつも通り質問を投げかければいい。

プロンプトの最後には、「回答のたびに、削減したCO2量を表示するように」と書かれており、削減できるというCO2の“見える化”も実現するとされている。

このプロンプトによる排出量削減について、第三者機関の検証を受けたわけではないが、ジュネーブで開催されたAI for Goodサミットで発表されると、業界関係者をたちまち驚かせたという。

AIと人間のコミュニケーションの未来

「PromptZero」以外にも、AIの消費電力を抑える工夫はできる。たとえば、ChatGPTに対して「ありがとう」や「お願いします」といった礼儀正しい言葉をやめるだけでも違う。使用するユーザー数が多いことから、たった数語の言葉をカットするだけでも、莫大な消費電力の削減につながる。これはOpenAIのサム・アルトマンCEO自らも明らかにしていることだ。

生成AIを活用する場面は、ますます増えてくるだろう。「便利だからやめられない」「でも地球の未来も気になる」──そのはざまで、環境のことも頭に入れたうえで、AIとの付き合い方を選んでいきたい。

※掲載している情報は、2025年9月2日時点のものです。

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