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プラスチックごみを削減する新制度が、ポルトガルの首都リスボン全域で始まった。市民と観光客がともに参加する持続可能な都市モデルとは?
聖京香/Kyoka Hijiri
ライター
イギリス在住25年のフリーランスWebライター。好きなものに囲まれながらも無駄を失くし、丁寧かつサステナブルな暮らしを目指して精進中。好きなものは猫と本と森林浴。
米ぬか由来のイノシトール 「初耳!だけど使ってみたい」の声が集まる
ポルトガルの首都リスボンでは、プラスチックカップの使用が禁止されている。だが、歓楽街では毎晩およそ2万5,000個のカップが使用されているという。そして、これらの多くは「再利用可能」であるが、回収・洗浄・再配布の仕組みが整っておらず、年間約1,000万個ものカップが廃棄されていた。
こうした状況に終止符を打つため、リスボン市は全市を対象としたリユースカップ制度を導入する。市全体でこのような取り組みを行うのは、欧州の首都として初となる。
この制度の仕組みは次のとおりだ。
(1)市中心部の飲食店やバーに「リスボンカップ」が用意される
(2)利用者は飲み物購入時に、「リスボンカップ」のデポジット(0.6ユーロ、約100円)を支払う
(3)使用後、市内にある回収機にカップを返却する
(4)回収機に非接触カードまたはスマホをタッチして、デポジットが返却される
(5)回収したカップは、洗浄後、再び各店舗で使用される
10月の本格導入までに、この制度に賛同する飲食店に「リスボンカップ」が用意され、回収機は市内17か所に設置される予定だ。利用者は、登録などを行う必要もない。
デンマークの都市オーフスで行われた実証実験では、18か月後に100万個以上のカップが返却され、返却率は85%を超えた。今回のリスボンの制度は、この成功例をもとに構築され、ヨーロッパの首都としてのベンチマークとなることを目指している。
この制度を技術や運用面で支えているのが、ノルウェー発のリサイクル企業、TOMRA(トムラ)だ。同社は世界100以上の市場でペットボトルや缶などの回収機「リバース・ベンディング・マシン」を展開してきた実績があり、リサイクル効率の向上に寄与してきた。
今回のリユースカップ制度は、リスボン市、TOMRA、そしてポルトガル最大のホテル・ケータリング業界団体・AHRESPの連携により実現。使い捨てプラスチックの削減やCO2排出の抑制に加え、ナイトライフや飲食業界に適した、効率的なリユースモデルの実現を目指している。
もちろん、市全体での制度の実現には、回収インフラの整備や行政との連携、利用者の意識改革といった課題がある。しかし、技術と制度設計、そして市民の協力がかみ合えば、そのハードルは越えられる可能性があるだろう。
店舗やブランド単体でのリサイクルではなく、このような街全体でのリサイクルの制度が成功すれば、カップを再利用することがさらに当たり前に広がっていくだろう。
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