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エールフランスとKLMはフライトのCO2排出量を“見える化”する、EUの新制度「フライト・エミッション・ラベル(FEL)」に参画を表明した。空の移動にもサステナブルな視点が求められる時代が始まろうとしている。
聖京香/Kyoka Hijiri
ライター
イギリス在住25年のフリーランスWebライター。好きなものに囲まれながらも無駄を失くし、丁寧かつサステナブルな暮らしを目指して精進中。好きなものは猫と本と森林浴。
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CO2排出量を発表している航空会社はあるが、使用している測定方法や方法論が航空会社やチケット販売会社によって異なり、それらを単純に比較することはできない。また利用者がそのような情報に容易にアクセスできないことも指摘される。
これらの課題の解決に向けて、EU(欧州連合)が2025年より導入する制度が、「フライト・エミッション・ラベル(以下FEL)」だ。
現在、多くの航空会社では、航空機の性能、旅客輸送量、持続可能な航空燃料(SAF)の使用量を仮定してCO2排出量を算出している。だが、FELでは航空機の燃料消費量、旅客輸送量、SAFの購入量などの実際のデータを用いて、実際のCO2排出量を反映。より信頼性の高い方法を規定している。
そして、そのエネルギー効率について7段階でラベルで表示。利用者が飛行機を予約する際、その便がどれだけ環境に配慮しているかを確認、比較して、航空会社やフライトを選べるようにした。いわば空の旅にカロリー表示をするようなもので、利用者がより持続可能な移動手段を選びやすくなる。
この制度に最初に参画を表明したのは、エールフランス航空とKLMオランダ航空だ。2024年7月、両社はEUおよび欧州航空安全機関(EASA)と連携し、制度設計と試験導入に協力することを発表。欧州委員会もこの動きを公式に支持している。
2025年7月には、EFLと両社がこのたびのEFL参画について改めて公表。今後は航空券予約サイトで、CO2排出量などの環境データが表示されるようになり、利用者はチケットの代金やフライト時間に加えて、「環境への影響」も選択基準として利用できるようになる。
この取り組みは、航空業界が環境とどう向き合うかを問う重要な一歩であり、同時に私たち利用者にとっても空の移動に対する責任を再認識させる契機となるのだ。
FELの制度は、EUが進める「欧州グリーンディール」政策のなかで、航空業界における持続可能な慣習を推進する取り組みとして導入されたものだ。
航空業界にも脱炭素化の波が押し寄せるなか、FELはその象徴とも言える具体策として注目を集めている。つまり、FELは単なる情報の提示ではなく、企業が環境とどう向き合っているかを可視化する姿勢の表明でもある。
制度をより広く根付かせていくには、より多くの航空会社の参画を促すことが不可欠だ。今後はルフトハンザやブリティッシュ・エアウェイズなど、欧州の大手航空会社の動きにも目が離せない。
飛行機は便利で高速な移動手段だが、環境への負荷は決して小さくない。FELは航空業界にとっての転換点であり、利用者にとっても「空の旅をどう選ぶか」を見直す新たな基準となる。
いまは、目的地だけでなく、その“行き方”にも意識を向ける時代。移動方法を選ぶ際、「環境への負荷」を考えることが当たり前になる社会がやってこようとしている。
※参考
Empowering passengers to make informed choices about their flights|EASA
European Commission endorses Air France-KLM’s cooperation with EASA on EU Flight Emissions Label|EASA
Air France-KLM becomes first airline group to join EU Flight Emissions Label (FEL) initiative|Aviation24.be
The EU Flight Emissions Label takes a flight forward with first airlines committing to the scheme|European Commission
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