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在庫衣料の廃棄禁止や古着修理への手当てなど、アパレル業界の環境対策に先進的にメスを入れてきたフランス。2024年から進めてきたファストファッションブランドに対する罰則法案が新たに規定された。
鴨井里枝|Rie Kamoi
ファッションライター/エディター/ジャーナリスト
イギリスの美術大学でグラフィックデザインを学び帰国後、ファッション週刊紙「WWDJAPAN」の編集部に約10年在籍。ファッションビジネスやトレンドの分析を主に、海外ではNY、ミラノ、ロン…
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フランスの上院は、ファストファッションを規制する法律の改正案を承認した。これは2024年3月に下院で可決された罰則法に対応するもので、今回ほぼ全会一致で賛成票が集まった。
改正案では、ファストファッションと位置付けされるブランドを、「シーイン」や「ティームー」などが該当する“ウルトラ・ファストファッション”、「ザラ」や「キアビ」などの“クラシック・ファストファッション”に二分化。
“ウルトラ”ブランドに対しては、広告を全面禁止する方針。さらに、それぞれのブランドが特定の環境基準を満たさない場合、2030年までに1商品あたり少なくとも10ユーロ(約1600円)、または税抜き価格の最大50%の罰金が科される見通しだ。
上院の地域計画・持続可能な開発委員会のジャン・フランソワ・ロンジョ氏は、「今回の改正は、環境や社会、経済の実態を顧みないシーインやティームーのような企業を主な対象としており、ビジネスモデルの性質が異なるヨーロッパのプレタポルテには適用されない」とコメント。
フランスの法規制に対し、シーインは「われわれはファストファッション企業ではない。ビジネスモデルは環境問題の原因ではなく、解決策の一部だ」との声明を発表している。
繊維業界による環境への影響を抑えることを目的に、法改正を進めるフランス。昨年の法案可決以降、ファストファッションへの規制がとくに強まっており、実際に影響を受けるブランドも出てきている。4月末には「ジェニファー」が清算手続きに入り、5月からは「ナフナフ」が破産管財人の管理下に置かれるなど、すでに経営難に直面するブランドも出始めている。
専門家は、ファストファッションが生産する低価格の衣料品が過剰な消費と廃棄物を助長し、繊維産業の環境への影響悪化を指摘。今後、こうしたフランスの取り組みに対し、世界がどのように評価し、対応していくのかにも注目が集まっている。
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