「捨てない社会をかなえる」——ECOMMIT最大規模の循環拠点「東京サーキュラーセンター」が始動

東京サーキュラーセンター

2025年4月、ECOMMIT(エコミット)は国内最大規模となる新拠点「東京サーキュラーセンター」を開設。回収から選別、再流通までを一貫して担うこの施設では、年間約6,000トンの衣類を処理する体制が整えられている。今回は、その現場の様子をレポートする。

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2025.05.21
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「捨てる」から「つなぐ」へ。衣類の循環が未来を変える

東京サーキュラーセンター

循環型社会の実現に向けて企業の取り組みが加速するなか、私たちの身近な存在である衣類も、見直しが求められている。日本では年間約50万トンもの衣類が廃棄され、その大半が焼却・埋立処分されている(※1)という事実をご存じだろうか?

この状況を変えるべく、衣類を中心に「捨てない社会をかなえる」ことを目指し、ものが循環するインフラをビジネスとして築いているのが、循環商社「ECOMMIT(エコミット)」だ。

同社は2007年、代表の川野輝之氏が22歳で立ち上げた企業だ。当初は小規模な事業からスタートし、中古の農業機械や家電を海外に販売する事業を展開していた。その後、海外視察を通じて、日本から輸出された家電が現地で環境問題を引き起こしている現状を目の当たりにしたことから、「環境と経済を両立するビジネス」を追求するようになったという。

その後、衣類を中心に事業を展開し、今や全国8カ所の循環センター、4,000以上の回収拠点を有するまでに成長している。年間回収量は約1万3,000トンに達しているが、それでも国内で廃棄される衣類全体と比較してもわずか2.5%に過ぎない(※年間回収量を衣類に換算して比較)。

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こうした現状のなか、同社が一貫して大切にしてきたのが「最後まで価値をあきらめない」という姿勢だ。たとえば、見た目は傷んで見える衣類でもリサイクルにつなげることができるかもしれない。ブランドの衣類でなくても、誰かにとっては唯一無二の宝物かもしれない。その可能性を信じて、一点一点の価値を丁寧に見極めるため、「プロピッカー」と呼ばれる専門スタッフたちが在籍している。

さらに、LINEヤフーと連携した宅配回収サービス「宅配PASSTO(パスト)」の展開や、アパレル企業向けの循環型サービスの提供など、“捨てない選択肢”を広げるしくみも着実に整えてきた。2024年時点で、同社のアパレル向けサーキュラーサービスを導入している企業は15社を超える。

現場で見た“循環を支える”しくみ

東京サーキュラーセンターは、これまでの東京第一・第二センターを統合した拠点であり、ECOMMIT史上最大規模の施設となる。衣類は全国4,000カ所以上の回収拠点から集められ、以下の5つの工程を経て次へとバトンがパスされる。

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1. 一次選別

一次選別を担うのは、プロピッカーと呼ばれる専門スタッフたち。衣類の状態やブランド、素材などを丁寧に見極めながら、大きく「国内リユース」「海外リユース」「リサイクル」の3つに分類していく。一袋(約20kg)の選別にかかる時間は、おおよそ7〜10分。選別された情報はすべてデータとして記録され、後工程につなげられる。

ここで特徴的なのは、ブランドだけでは判断しないという姿勢だ。たとえば、バンドTシャツや大学のジャケットといったコレクター価値の高いアイテムは、一般的な価値基準には収まらない「特別扱い」となる。また、海外リユース向けの衣類は、主にアジア圏(とくにタイ)でのニーズを踏まえて選別される。暑い地域では夏物の需要が高く、色柄やサイズ感も現地の嗜好に合うかどうかが重視される。

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2. 二次選別

一次選別で分けられた衣類は、次に「二次選別」の工程へと進む。ここでは、さらに細かい分類が行われ、顧客のニーズに合わせて新たな価値が付加されていく。衣類はジャンルやターゲットごとに約60種ものカテゴリーに分類され、ネット販売やリユースショップなどの卸売向けに最適な形でピックアップされる。バンドTやデニム、ノーブランドの古着まで、トレンドやマーケットの動向を踏まえて戦略的にネット販売や卸売向けに展開されていく。

この工程を支えるのは、古着に精通したスタッフたち。「いま売れるもの」や「お客様が求めるもの」を見極め、商品としての魅力を最大限に引き出している。

3. 出品作業

選別された衣類は一つひとつ撮影・梱包され、国内外のECのプラットフォームを通じて販売される。

4. 在庫管理

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季節やトレンドに応じて在庫を戦略的に管理し、ニーズに応える流通を実現。宅配PASSTOで回収された衣類や雑貨もここで管理される。

5. 出荷

リユース向けの衣類は、国内外の販売先に向けて梱包・出荷される。海外向けは「ベール」と呼ばれる約400kgの大型梱包にまとめられる。リサイクル向けの衣類は素材によって分けられ、たとえばポリエステル100%の衣類は、廃棄された繊維製品や残反をリサイクルして新たなポリエステル繊維や製品を生み出すプロジェクト「RENU」(※2)の素材として再生される。

「捨てない」を実現する、ECOMMIT独自の循環システム

東京サーキュラーセンターには、ECOMMITが創業以来17年かけて培ってきた独自の知識とノウハウが集約されている。

その大きな特徴のひとつが、海外へ送る前に国内で徹底的に選別するという方針だ。現地で廃棄されるリスクを避けるため、コストをかけてでも国内で目を通す体制を整備。代表・川野氏が「国内でしっかり手を入れるしかない」と語るように、このひと手間が衣類の価値を守る鍵となっている。

さらに、選別は属人的な判断に頼らず、衣類の状態や素材、ダメージの程度などを細かく定めたマニュアルを全スタッフで共有。誰が見ても同じ判断ができるよう、標準化されたシステムが構築されている。

トレーサビリティの徹底も、ECOMMITの強みだ。QRコードを用いて、どの拠点やマンションから回収されたのか、いつ・誰が・どのように選別したかまで一着ずつ記録。流通の過程を可視化することで、再流通後の追跡や品質担保にもつながっている。

そしてもう一つの大きな強みが、蓄積されたデータの活用である。選別や出荷の過程で蓄積された情報は、将来的にアパレル企業へフィードバックされ、長く着続けられる服やリサイクルしやすい服づくりや循環設計への改善に活かされていく予定だ。

単に古着を選別・販売するのではなく、回収から再流通、さらには製造現場への還元まで見据えたシステムこそが、ECOMMITが描く循環社会のかたちなのだ。

循環社会の実装フェーズへ

東京サーキュラーセンター

循環商社ECOMMIT(エコミット)代表の川野輝之氏。

東京サーキュラーセンターは、ECOMMITにとって「完成形」ではない。むしろ、「ようやくスタートラインに立てたにすぎない」と、代表の川野氏は語る。

「自分たちでもって、自分たちでちゃんとデータ登録をしていく。ビジネス上は大変だけれど、とても重要なことなんです」。(川野氏)

この言葉通り、ECOMMITの挑戦は常に“次”を見据えている。今後3年間で自動化やデータ取得の効率化を推進し、衣類の回収量を年間1万3,000トンから、4万5,000トン規模へと拡大する計画だ。その背景にあるのは、「環境問題はビジネスでしか解決できない」という強い信念。

「僕らのライバルは、同業者ではなく、“捨てる”という行為そのもの。最後まで価値をあきらめない——それが、僕たちの根っこにある姿勢です」(川野氏)

この思いや姿勢は、現場で働くスタッフたちにも通じている。「1点でも多く救いたい」「次の人の手に渡ってほしい」といった声が、一つひとつの工程に込められていた。廃棄されるはずだった服が、再び誰かの暮らしのなかで息を吹き返す。そんな未来を信じる姿勢が、東京サーキュラーセンター全体の空気にまで宿っているようだった。

東京サーキュラーセンターは、ただの選別工場ではない。価値を見つけ直す場所、そして、循環の起点なのだ。

「パストする」という、未来へのアクションを

「捨てる」か「売る」か。
私たちがこれまで持っていた二択に、ECOMMITは新たな選択肢を差し出している。それが、服を「パストする」という行為だ。

「PASSTO(パスト)」とは、着なくなった服を「次の人に渡す、未来に渡す」という価値観から生まれた造語。このサービスは、生活者のすぐそばで資源循環の入り口となり、不要になった衣類を回収・選別し、リユース・リサイクルへとつなげていく。

全国に4,000カ所以上に設置されたパストボックスや、自宅から気軽に送れる宅配パストサービスを通じて、誰もが捨てない選択を始められる仕組みだ。

これからの未来に向けて、たった一着でもいい。「もう着ない」を、「次に生かす」へと変えるアクションを、今日から始めてみてはいかがだろうか。

取材協力/株式会社ECOMMIT 取材・執筆/藤井由香里 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2025年5月21日時点のものです。

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