こめ油で国内トップシェアを誇る築野(つの)食品。その歴史は、日本の米とともにあると言っても過言ではない。そして、とくに注力してきたのが米ぬかの研究開発であり、これまでにさまざまな成分が生まれてきた。飼料や肥料として使われてきた一方で、築野食品はなぜ米ぬかの研究に情熱を傾けてきたのか、そして研究開発の現場にも根付くスピリットは何なのか、話を聞いた。【読者プレゼント付き】
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米ぬか(左)は油分が含まれているためしっとりとしている。米ぬかから油分を抽出した後の脱脂ぬか(右)は、サラサラとしている。
築野食品の中心となる事業は、60年以上にわたって続く、国産の米にこだわったこめ油の製造だ。こめ油は、名前のとおり、米から抽出した油。玄米を精米したときに、白米以外の部分として出る「米胚芽」と「米ぬか」が原料となる。築野食品では全国各地にある精米所から米ぬかを集め、その米ぬかから油分を抽出し、「こめ原油」を精製して「こめ油」をつくる。
山内優歩氏。
こうしてできたこめ油は、とても貴重な存在であるという。和歌山にある築野食品本社の研究所で米ぬかの研究を行っているという研究開発本部 企画開発部の山内優歩氏は、「もみつきの玄米に含まれる米ぬかは、わずか8%しかありません。さらに、米ぬかからとれるこめ油はおよそ15%で、元の玄米から換算すると1%ほどしかないんです」と話す。
こめ油には米ぬか由来のさまざまな栄養が含まれているが、米ぬかから油分を抽出した後に残る「脱脂ぬか」や、こめ油の製造工程である「こめ原油」にも、多くの栄養分が含まれている。
そこに着目したのが、築野食品だ。そしてこれまでに、機能性サプリメントから化粧品まで幅広く使われる「イノシトール」をはじめ、「ライスマグネシウム」「γ-オリザノール」などの成分を抽出してきた。
「脱脂ぬかやこめ原油から栄養成分を取り出して、20種ほど製品化しました。タンパク質や食物繊維を含む混合成分も商品として販売し、最終的に残る『加工ぬか』は肥料や機能性飼料にするなど、余すことなく活用しています」と、同社の取締役で経営企画部の部長を務める築野靖子氏は語る。
長年にわたり、米ぬかの高度有効活用に取り組んできたのは、同社の「限りある資源を無駄にしない」というスピリットの表れだ。米ぬかは一般的に肥料や飼料として利用されてきたが、使用用途は限られ、廃棄されるケースもあったと言われる。そんな大切な資源に光をあてたのは、同社の姿勢を物語っているだろう。
築野靖子氏。
そんな経緯で生まれた成分のひとつが、「イノシトール」だ。
イノシトールは、人体でも合成され、母乳にも含まれるビタミン様物質(ビタミンB群)。たとえば粉ミルクに配合されているほか、肝臓への働きに関する研究が報告されていることから二日酔い対策のドリンクにも使われている。また、細胞の働きを助け、水分と油分のバランスを整える働きがあることから、化粧品原料としても多く活用されている成分だ。
脱脂ぬかの研究から抽出された「イノシトール」。真っ白なパウダー状で、口にするとほんのり甘い。
築野食品でイノシトールの製造が始まったのは、1972年。当時すでに機能性が認められていたイノシトールは需要が高かったものの、供給元は限られていた。そこで供給の安定化に貢献するため、築野食品も製造を開始したのだ。
とはいえ、製造開始にあたっては多くの課題があったという。「弊社は食品会社なので、医薬品の製造許可を取るのがすごく大変だったと聞いています」と山内氏。大規模なプラントが必要だったことから、初期投資のハードルも高く、「お金や労力がかかるとわかっていても、社会のニーズに応えようと一歩を踏み出せるのは本当にすごいことだと感じます」と語った。
そんなイノシトールは、研究者の目から見ても大きなポテンシャルがある成分だという。「最近、私たちのチームで美容の働きがあることを明らかにしたのですが、研究するほど新たな働きがわかるなど、とても面白い成分だと思う」と、山内氏は語る。
そして「病気の方に対するイノシトールのデータはたくさんありますが、“健康な人にとってはどうか”というデータがまだまだ少ない状況です。予防的な活用ができるのかなどを含め、今後力を入れて解明していきたいです」と語る。
山内氏と同じく研究開発の現場にいる、研究開発本部 企画開発部の井上雄紀氏も、「高齢化が進んでいるので、高齢者向けの機能を打ち出せるよう研究を進めていきたい」と、米ぬか由来成分のポテンシャルに大きな期待を寄せている。
イノシトールの新たな機能が見つかり、用途が広がれば広がるほど、米ぬかの価値も上がり、日本の米の魅力を高めることにもつながるのだ。
ちなみに、イノシトールについて、山内氏は「お酒を飲む機会が多い方におすすめ」と話す。「脂質や糖質に関する研究が進められていることから、生活習慣を意識している方に向いている成分だと思います。集中力への影響も注目されていて、Eスポーツなどでの応用も期待されています」と教えてくれた。
また、女性ホルモンバランスの研究や、妊娠期の血糖値に関する報告もあるという。「生理が遅れたときにイノシトールを摂ったら、サイクルが整ったことがあったんです。あくまでも個人の体験ですが、イノシトールには大きな可能性があるのかもしれません」(山内氏)
さらに、築野食品がつくるイノシトールの特徴について、山内氏はこう語る。
「現在市場に流通しているイノシトールの多くはとうもろこし由来で、中国で生産されたものが大半を占めています。米ぬかからイノシトールを製造しているのは、築野食品だけなんです。国内製造という安心感がありますし、アレルゲンの心配が少ないお米由来という点も、お客様から選ばれる理由になっていると感じます」
築野食品の創業者である築野政次氏が「日本の食糧の安定供給で社会に貢献したい」と、始まった同社。戦時中の食糧難を体験し、食糧や資源の大切さを身をもって痛感したその強い思いは、築野食品の企業カルチャーとして確かに息づいているようだ。
「いま研究を行っているところは、築野食品が廃校を買い取って研究施設にした場所なんです。そのような取り組みからも、会社の“資源を大切にする”という思いを感じます」(山内氏)
また井上氏も「こめ油の製造工程で発生する廃液も『再利用できないか』と日々模索していて、会社も積極的に設備投資を検討してくれるところなど、“資源を大切にする”という創業当時からの思いが軸になっていると思います」と話している。
このほか、いまある資源を見直して再構成する「TPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス)」に長年取り組んでいるという。
「TPMを徹底することで、設備を大切に長く使うことにつながったり、資源をムダなく使ったりすることにつながります。事務職も現場も関係なく、全員で取り組むことで、多角的にロスを発見し、改善することができるんです」と築野氏は説明している。
パンデミックをきっかけに、日本で食糧をつくる重要性が改めて見直されている。農家の高齢化、食生活の変化、気候変動など、さまざまなことが重なり、日本の米の生産量は減少傾向にある。
だが、日本でつくられた国産米には、「安心できる」「おいしい」といった魅力があるのは疑いがないだろう。築野食品では、その恵みに感謝の気持ちを表し、最大限の活用に今日も心魂を傾けている。日本米を原料にした築野食品のこめ油や、イノシトールなどの米ぬか由来成分に目を向けることは、やがて日本の食糧自給率向上や地域貢献にもつながっていくはずだ。
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撮影/岡田ナツ子 取材・執筆/永原彩代 編集/佐藤まきこ(ELEMINIST編集部)
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