ゼロウェイストとは、無駄なごみをゼロにしていく取り組み。人々の環境問題への関心の高まりから、行政や企業だけでなく、個人でのゼロウェイストな暮らしも広がっている。日々の生活で出るごみを減らすために、私たちに何ができるのだろうか?国内外の取り組みから、さまざまな実践方法を紹介する。
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「ウェイスト(waste)」とは、「廃棄物」や「ごみ」のこと。つまり「ゼロウェイスト」とは、ごみや無駄をできる限りゼロにすることを言う。
廃棄物をどう処理するかではなく、日々の生活の中でそもそもごみを出さないようにし、限りある資源を枯渇させない仕組みを目指す考え方だ。
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1996年、オーストラリアの首都キャンベラが世界で初めて「ゼロウェイスト宣言」を発表し、話題となった。現在では、多くの国や地域、企業がゼロウェイストをスローガンとして掲げている。
大量生産・大量消費が進む現代社会。環境省の発表によると、2018年の国内のごみ総排出量は4272万トン(東京ドーム約115杯分)におよんだ。また、ごみ焼却施設における総発電電力量は増加の一途をたどっている。
「ごみの分別先進国」と言われる日本だが、適切にごみ処理する場合でも、焼却作業や最終処分場での埋め立てが追いついていないのが現状だ。さらに、プラスチックのリサイクルには大量のエネルギーを消費する。
ごみを出さないゼロウェイストによって、環境汚染阻止につながるかもしれない。こうした背景から、環境問題に関心のある人を中心に広まっていったのだ。
ゼロウェイストは、私たちの生活でも取り入れることができる。では、すでにゼロウェイストを生活に取り入れている人は、具体的にどのような暮らしをしているのだろうか。
ゼロウェイストのハウツー本として世界中で大反響となった「ゼロ・ウェイスト・ホーム」。著者であるカリフォルニア在住のベア・ジョンソンさんは、各地で講演を開いてゼロウェイストを普及し、家庭でもゼロウェイストを実践しているまさにパイオニアだ。
本書には、生活シーン別にごみを出さないための暮らしがまとめられている。例えば「ものを減らす」「プラスチック容器の商品を買わない」など。翻訳者である服部雄一郎さんのブログにも、具体的な方法が多数掲載されている。取り入れやすい部分から、少しずつゼロウェイストを始めてみてはいかがだろうか。
四国で一番小さな町、徳島・上勝町。2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表したことで大きな注目を集めた。目標は、2020年までに焼却や埋め立てをせずにごみをゼロにすること。
リサイクルを促すためにごみを13品目45項目に分別するなど、街全体で積極的にゼロウェイストに取り組んでいる。
上勝町ではごみステーションに町民自らごみを運び、常駐スタッフのサポートを受けながら分別を行う。このごみステーションは、複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」の一部として2020年5月30日(ごみゼロの日)にオープンした。
同施設にはコミュニティスペースやゼロ・ウェイストアクションホテル「HOTEL WHY」が併設されており、住民の集い場であり県内外にゼロウェイストを発信している。
ゼロ・ウェイストアカデミーは、2005年に上勝町で設立された特定非営利活動法人。行政・市民と一体になり、地域の特性を生かしたゼロウェイスト事業に取り組んでいる。
県外から施設に訪れる団体も多く、地道な取り組みによって、いまでは全国に少しずつゼロウェイストタウンが増えている。
ゼロウェイストに向けて、毎日の生活の中でどんな行動を心がけたらよいのだろうか。チャレンジしやすい工夫を紹介する。
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「ゼロ・ウェイスト・ホーム」では、ゼロウェイストの原則として「Reduce(断る)」「Refuse(減らす)」「Reuse(繰り返し使う)」「Recycle(リサイクルする)」「Rot(堆肥化)」の「5R」を提唱している。
ロットは一見難しそうだが、生ごみをコンポストするためのごみ処理機は種類豊富に売られている。また、使い切ったガラス瓶を洗って再利用することもゼロウェイストと言える。
2020年7月、海洋プラスチックごみを削減するためにプラスチック製レジ袋の有料化が始まったことは記憶に新しい。「ごみを出さない」という観点から、レジ袋に限らずできるだけ包装されていない商品を購入することも大切。量り売り専門のバルクショップや、プラスチックフリーに対応してくれる店を探してみよう。
ごみを出さないため、ものの所有についていま一度考え直してみよう。カーシェアリングや各種レンタルサービスなど、資源を浪費しない選択を探してみて。
自分が出すごみがどのように処理されているのか、流れを理解することもゼロウェイストへの第一歩だ。理解することで、有害物質を出さない素材を選択することもできる。ごみの分別に不明点があれば行政に質問するなど、行政に対しても、個人として取れるアクションがある。
例えば、食材を保存するときは、使い捨ての食品用ラップの代わりに、繰り返し使える「ミツロウラップ」を使用する。コンパクトに折りたためて持ち運びしやすいポケットカップを外出先に携帯する。生ごみを堆肥化するコンポストを自宅で使う。そんなごみを出さないアイテムを選ぶことも、ひとつの方法だ。
ゼロウェイストは単に「ごみを減らしていくこと」にとどまらない。自分にとって何が本当に必要なのかを見つめ直していく作業とも言える。不要なものを除いたシンプルな暮らしが、本質的な豊かさを見せてくれるのではないだろうか。
とは言え、完璧なゼロウェイスト生活を、いきなり実践することは難しい。まずは、毎日の生活の中で無理なくできるところからやってみよう。一人、また一人と実践者が増えていくことが社会へのインパクトにつながっていくはずだ。
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