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7月からシンガポールで行われる世界水泳選手権大会(WCH)と世界水泳マスターズ大会のメダルに、回収されたアルミ缶が再利用される。メガイベントの新たな取り組みは、スポーツと環境問題を考えるきっかけになるかもしれない。
Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
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シンガポールで2025年7月〜8月に水泳界のメガイベントが開催される。夏季オリンピックに次ぐ大きな大会といわれる、世界水泳選手権(WCH)と、世界マスターズ水泳選手権で、オリンピックが開催されない年に2年おきに行われる。
2025年のシンガポール大会では、選手に授与されるメダルに、回収したアルミ缶をリサイクルすることが発表された。
WCHシンガポール2025組織委員会によると、「持続可能性に関していえば、世界選手権のような国際的な規模の大会においては新しいことであり、今後も継続していく必要がある」と、持続可能なスポーツ活動の推進に意欲的だ。
材料となるおよそ10万個のアルミ缶は、地元のプレスクール、小学校、中学校の生徒たちによって提供されたものが使われる。メダル1個におよそ20個のアルミ缶が使われ、回収されたのち、加工、洗浄、製錬されて、約5,000個のメダルに生まれ変わる。
メダルといえば、2024年のパリオリンピック・パラリンピックでのメダルの劣化や破損が話題になったことが記憶に新しい。パリオリンピックでメダルの製造を担当したフランス造幣局によると、メダルの交換を求める要請は220件(授与されたメダルのおよそ4%に相当する数)あったと発表されている。
WCH初の試みとなるリサイクルメダルは、地元の家具メーカーが担当する。建築・インテリア業界においても、建設資材ロスによる環境への負荷が問題視されるなか、培われてきた再生材を使った製造技術が、今回、業界の垣根を超えてメダル製造に活かされるというわけだ。
広報担当者は、地元メーカーと協力してつくるリサイクルメダルについて、時間の経過とともに自然な摩耗が見られることが予想されると述べている。しかし「2024年パリ大会のメダルに関する開発は共有しており、メダルの品質をできるだけ長く保つために、彼らの専門知識を信頼し、製造に使用される材料をテストする努力を信頼している」と答えている。
およそ1か月にわたる大会には、6競技、77種目に2,500人以上の選手が出場し、シニア大会には約6,000人が参加予定。さらに4万人もの外国人観光客がシンガポールを訪れると予想されている。
たかがメダル、されどメダル。多くの人が注目する大会の“象徴”の循環的な試みがこれからのスタンダードになるのか気になるところ。また、リサイクルメダルをきっかけに、スポーツ観戦から環境問題を自分ごととして意識する人が増えてくるかもしれない。今後の動向が楽しみだ。
※参考
World Aquatics Championships to go green with medals made from recycled aluminium cans|The Strait Times
World Aquatics, Masters Championships expected to bring in 40,000 visitors, $60m in tourism receipts|The Strait Times
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