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スコットランドで、ウイスキーの生産工程で出る廃水を再利用して、養殖魚の餌として藻類を育て、持続可能なオメガ3サプリメントをつくる動きがスタートしている。
Ouchi_Seiko
ライター
フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。
人も社会も地球も、持続可能な未来をつくる明治グループのサステナビリティアクション
魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸。この栄養素を含むサプリメントの需要は、世界中で高まり続けている。しかし、人間の体内では生成できないオメガ3脂肪酸のために、毎年1,600万匹もの魚が捕獲されていることをご存じだろうか。そのうち約20%は、サプリメント生産のために使う養殖魚の餌として利用されている。
こうした問題の解決に取り組むスコットランドのMiAlgae社は、地域経済を支えているウイスキー産業に着目。ウイスキーの蒸留中に出る廃水には藻類が好んで食べる栄養素が豊富に含まれており、廃水で藻類を育て養殖魚の餌として活用することで、魚の乱獲の抑制と海洋への廃水流出防止という2つの課題を解決する。
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スコットランドのウイスキー産業は、英国経済にとって不可欠な存在だ。スコッチウイスキー協会によると、現在約6万6000人の雇用を支え、年間71億ポンド(約1兆3400億円)の経済効果をもたらしている。
一方で、ウイスキー産業は大量の廃水を出す業界としても知られている。実際、スコッチウイスキーの蒸留過程における廃水の量は、年間にして約100万リットル。ウイスキー1リットルを生産するごとに、約15リットルの廃水が生まれる計算だ。この廃水は後に処理され、下水処理施設や河川へと放流されている。
そこでMiAlgae社は、ウイスキー蒸留所の近くに自社拠点を設立。再生可能エネルギーを活用した巨大発酵槽で、ウイスキー廃水を再利用し、藻類の培養を行っている。こうして生産された藻類は養殖魚の飼料だけでなく、ペットフードにも加工されるという。
そもそもオメガ3とは魚が自らつくり出しているわけではなく、食べる藻類から取り込まれる成分だ。MiAlgae社はこの仕組みに着目し、魚の乱獲防止と海洋汚染の軽減という2つの課題解決につなげている。
事実、MiAlgae社が生産する藻類1トンが供給できるオメガ3の量は、魚約62万匹分のオメガ3に相当する。さらに2024年には、五輪サイズのプールおよそ300杯分のウイスキー廃水を再利用した。それによって、エディンバラとロンドン間の飛行機往復500便の排出量に相当する、約15万kgのCO2を削減できたとみられる。
MiAlgae社の代表であるダグラス・マーティン氏は、「自然界に存在する魚の90%は食用に適しているため、オメガ3脂肪酸のみを目的として魚を捕獲することは、沿岸地域の食糧安全保障を脅かすことになり無意味である」と述べている。
増え続ける人口に必要な食料をどのように調達するかは、私たちにとって避けて通れない課題だ。サプリメントに関しても、持続可能な方法での生産が急務だとされている。今後はMiAlgae社のように、ある産業の副産物や廃棄物を活用して別の産業に活用する取り組みが、ますます注目されるのではないだろうか。
※参考
‘It was a bit of a no-brainer!’ How Scotland’s whisky distilleries now help prevent overfishing|euro news
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