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オリンピック・パラリンピック後のパリでは、街全体で広範囲にわたるエコ・リノベーション計画が進行している。この計画には、シャンゼリゼ大通りやコンコルド広場といった五輪の主要エリアや、ノートルダム大聖堂、ルーブル美術館前などパリを代表するランドマークが含まれている。
Ouchi_Seiko
ライター
フランス在住。美容職を経て2019年よりライターに。居住地フランスのサステナブルな暮らしを手本に、地球と人にやさしい読みものを発信。
2024年パリ五輪が終了してから数カ月。「史上もっともサステナブルなオリンピック」として注目されたパリ市の活動は、五輪後も途切れることなく続いている。
環境に配慮したパリ市の取り組みは、大会の準備段階から大きな話題を集めた。なかでも注目されたのは、歴史的建造物を舞台とした仮設競技場や、使い捨て食器が各所で禁止されたことだろう。パリ市は五輪終了後も、持続可能性を追求する数多くのプロジェクトを推進しており、これには会場跡地の緑化や再開発、自動車の利用規制などが含まれている。
その主な目的は、「2030年までにパリをヨーロッパでもっとも環境に配慮した街」に変えること。同時に、カーボンニュートラルな未来に向けた重要なステップでもあるという。パリ市はいま、五輪後もエコフレンドリーな都市設計をすすめることで、ヨーロッパのモデル都市としての地位をさらに強化することを目指している。
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パリ市のエコ・プロジェクトは、2024年パリ五輪の会場跡地だけでなく、他の主要観光地でもすすめられている。代表的な場所は以下の通り。
2024年12月8日の再オープンを控えたノートルダム大聖堂では、前庭と広場が新たな姿に生まれ変わることが発表された。このプロジェクトではまず、広場に1,800平方メートルの緑地が整備され、160本の樹木が新しく植えられる予定だ。さらに、地下駐車場は来訪者用スペースに、セーヌ川に隣接する埠頭は遊歩道に整備される。開発工事のスタートは2025年秋で、2030年までの完了を目指しているという。
オリンピック競技場の一部として利用されたシャンゼリゼ大通りでも、3,000万ユーロ(約47億円)を投じた大規模な改修工事がはじまっている。大通り沿いでは、植栽やノーカーデーといったエコ・プロジェクトがオリンピック以前から実施されていたが、今後数年でさらに多くの緑地が追加されるという。また、隣接する凱旋門前の車線も縮小され、より静かで利用しやすい空間になる予定だ。
2024年11月には、パリ中心部で一般車両の通り抜けが禁止された。この措置は、騒音や大気汚染、交通事故の削減を目的としているが、住民、配送車、緊急車両については適用されない。また、車による通り抜けを制限することで、公共交通機関の利用促進を図る狙いがある。
上記以外にも、コンコルド広場やルーブル美術館前といった著名な観光地で緑化が計画されている。
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パリ観光局のコリンヌ・メネゴー局長は、「2024年パリ大会は、都市再生プロジェクトを確実に加速させた」と述べており、とくに顕著な分野としてモビリティ、廃棄物管理、エネルギー消費の3つを挙げている。
ただし、オリンピック後の再開発がすべて順調なわけではない。例えば、エッフェル塔に掲げられた五輪シンボル。「2028年のロス五輪まで残す」と主張するパリ市長に対し、フランスの文化大臣や市民からは反発が起きている。パリ市の相次ぐ車の締め出しに、疲弊する住民も少なくない。
今後は環境負荷を減らしつつ、住民との対話をどのように進めていくかが、パリ市の大きな課題となるだろう。
※参考
$55M plan to give Notre Dame a green facelift is part of Paris eco plan|Voice of America
Ahead of the Paris Olympics, France Looks to a Green Future|Business Traveler
Limited Traffic Zone in Paris|Paris je t’aime
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