ゼロエミッションとは、廃棄物や排出をできるかぎりゼロにして最終的に埋め立て処分する廃棄物の量をゼロに近づける意味を持つ。この記事では、ゼロエミッションを推進する意味や、「ゼロエミッション東京」など具体的な取り組み事例を紹介しよう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
わたしたちの買い物が未来をつくる|NOMAが「ソラルナオイル」を選ぶワケ
Photo by Ale Alvarez on Unsplash
国連大学が1994年に提唱したゼロエミッション。ゼロエミッションとは、ある産業から出た廃棄物を別の産業が再利用することで、最終的に埋め立て処分する廃棄物の量をゼロに近づけるという意味だ。
その主な目的は、埋め立て地行きになる廃棄物をゼロにすること。日本のごみの最終埋め立て場は、20年後にはいっぱいになる予想だ。
廃棄物の処分費用は年々上昇している。最終処理場のキャパシティーには限りがあるので、多くの工場や自治体が、地球環境を守るためゼロエミッションに取り組んでいる。
Photo by Hans-Jurgen Mager on Unsplash
なぜゼロエミッションを実現し、廃棄物ゼロを目指す方針ができたのだろうか。国連の組織であるIPCCの報告書によると、世界の工業化による影響で、地球の平均温度は遅くとも2050年までには1.5度上昇するといわれている。
このままだと、巨大化する台風や気候変動による飢饉に気を揉むのが日常になってしまうかもしれない。そうならないために、社会全体で温室効果ガスを出さないようにする努力が必要なのだ。
産業廃棄物の有効利用は、無駄な生産を減らすことにつながるので、地球温暖化を防ぐ効果が期待されている。
諸外国では温室効果ガスを減らすため、すでに再生可能エネルギーによる発電が行われている。ニュージーランドやアイスランドなどの火山がある国では、天候に左右されずにエネルギー供給できる地熱発電が盛んだ。日本も将来、暑さに苦しまないようにするためには、ゼロエミッション電源への移行が不可欠だろう。
Photo by George Hiles on Unsplash
東京都が2019年に打ち出したのが「ゼロエミッション東京」。2050年にCO2排出実質ゼロを目指すもので、「ゼロエミッション東京戦略」に達成までのロードマップがまとめられている。日本でも比較的、先進的に進められた取り組みのため注目されている事例だ。
東京随一の学生街である早稲田の商店街は、1996年から約15年間「エコ・ステーション」を民間で運営。当たりクジ付きの空き缶・ペットボトル回収機や、生ごみ処理機などを設置し、ゲーム感覚でリサイクルができる仕組みをつくった。クジが当たれば商店街のサービス券などがもらえるとあって、ごみの回収率は非常によかったそうだ。
開設のきっかけは、東京都の事業系ごみ収集が有料化したこと。ごみ処理の経費を捻出するために、このシステムをつくりあげた。やがてサービス券を手に買い物に来る客が増え、経営者側も地域の人たちもwin-winになるサイクルが生まれた。
エコ・ステーションは約10年前に閉鎖したが、現在は地域通貨の「アトム通貨」がその代わりを担っている。ごみ拾いイベントなどに参加すると通貨がもらえ、加盟店での買い物に使えるそうだ。
アメリカの電気自動車メーカー「テスラ」は、走行中に温室効果ガスを出さないEV車を開発し、本来の意味でのゼロエミッションを達成している。
また太陽光で発電した電気を蓄えられる「Powerwall」を家に設置すれば、火力発電でつくった電気に頼らずに、クリーンなカーライフを楽しむことも可能だ。
滋賀県の安土建築工房では、自社林の安全な無垢材を使った家づくりをしている。関西の水源である琵琶湖を汚染しないために、自然にやさしい建築資材にこだわっているのだとか。
建築途中で出た端材は、薪ストーブの焚きつけ用や、こどもの工作用として活用。木を削って出た木屑は家庭菜園の肥料にし、地域内で資源を循環させている。
豆腐から出るおからの有効利用も、立派なゼロエミッションだ。日本では年間約65万トンのおからができる。その大部分は飼料や肥料として活用されるが、それでも年間約2万トンは廃棄されている。
そこで広島に本社を構える豆腐屋さんの「やまみ」は、おからを利用した猫砂を生産している。原材料は乾燥おからとコーンスターチだけなので、猫がうっかり誤飲しても安心だ。
ゼロエミッションの取り組みは日本だけのものではない。世界各地で同様にゼロエミッションを目指した取り組みが行われている。そして、ストックホルムに次ぐスウェーデン第二の都市・ヨーテボリでは2021年、世界初の「ゼロエミッションゾーン」が開発することを発表した。
日本のみならず、世界がゼロエミッションに向けて動いているいま。ぜひ各地の取り組みに注目していってはどうだろう?
ELEMINIST Recommends