SEL(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング)とは? 教育おけるメリットや事例を紹介

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「社会性と情動性の学習」と訳される「SEL(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング)」。日本語に訳すと「社会性と情動の学習」を意味する。この記事では、SELの具体的な内容やその教育のメリット・効果、事例について紹介する。

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2024.10.25
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SEL(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング)とは

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SEL(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング)とは、英語の「Social and Emotional Learning」の頭文字をとった言葉で、日本語に訳すと「社会性と情動の学習」を意味する。SELでは「情動」の認知と扱い方、他人との共感的な思いやりのある「対人関係」を学習する。(※1)

道徳教育との違い

SELと似た教育に、道徳教育がある。日本において、道徳教育は教科のひとつである。小学校学習指導要領によると、道徳教育は、自己の生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者とともによりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標としている。(※2)

一方SELは、教育現場や家庭で行われるEQ(こころの知能指数)教育である。学ぶことでスキルとして身につけることができ、すべての学びのベースとなる。(※3)よって、SELは特定のプログラムやカリキュラムを指すわけではない。

SELが注目される理由と背景

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SELは、日本でも注目されている学習だ。その背景には「非認知能力の育成」が、文部科学省が定める学習指導要領に明記されたことにある。(※4)SELは非認知能力を育てる学習であり、社会を生き抜くための力となるとして注目されている。

またSELにより、子どもの問題行動が減る、メンタルヘルスの問題の改善、学業成績向上などが期待できるといったことも注目を集める要因となっている。(※5)

SELの5つの柱

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SELを推進するアメリカの団体・CASELは、SELの要素として5つを挙げている。

自己認識

自己認識は、自分の感情や考え、価値観を理解する能力のことだ。これには個人と社会のアイデンティティの統合、個人的・文化的・言語的資産の特定、自分の感情を認識する誠実さと誠実さを示すこと、感情・価値観・思考を結びつける偏見と先入観を検証すること、自己肯定感を体験する成長志向を持つこと、興味と目的意識を育むことなどがふくまれる。(※6)

自己管理

自己管理は、自分の感情、思考、行動を管理する能力を指す。これには感情のコントロール、ストレスマネジメント、自制心と自発性の発揮、個人および集団の目標の設定、計画力と組織力を活用する、率先して行動する、主体性を発揮するなどがふくまれる。(※6)

社会的認識

社会的認識はさまざまな背景、文化、状況を持つ人々をふくめ、他者の視点を理解し、共感する能力を指す。具体的には他人の視点に立つこと、他人の強みを認めること、共感と思いやりを示すことなどが該当する。(※6)

人間関係スキル

人間関係スキルは、健全で協力的な人間関係を構築・維持する能力のことを指す。これにはコミュニケーション能力、積極的に傾聴する能力、協力する能力、問題解決のために協力して取り組む能力などがある。(※6)

責任ある意思決定

責任ある意思決定とは、個人の行動や社会的交流時に、思いやりをもち、建設的な選択を行う能力のことだ。これには好奇心とオープンマインドを示す、自分の行動の結果を予測し評価するといった、さまざまな行動の利点と結果を評価する能力がふくまれる。(※6)

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SELのメリットと効果

子どもたち

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SELを学習すると、どのようなメリットや効果が得られるのか解説する。

学業成績の向上

SELは、子どもの自己管理や集中力、問題解決能力を高められる学習メソッドだ。問題行動やストレスを軽減できることで、学業成績によい影響を与える。(※7)

感情のコントロールとストレス管理

SELは自分の感情や衝動をコントロールするスキルを習得できることから、自己管理能力が高まる。(※6)とくにストレスや不安、怒りといった感情を適切に対処できるようになることで、健全な意思決定ができるようになる。

良好な人間関係の構築

SELによって、他者とのコミュニケーションスキルや共感力を育むことができる。(※6)そのため、友人や家族といった他者との関係がより健全で協力的になるのもメリットだ。

社会性の発達と道徳心の向上

SELでは他者の感情や視点を理解し、共感を持って対応できるようになるため、社会性の発達と道徳心の向上に寄与する。(※6)

自己認識力の向上

自分の感情や価値観、強みや弱みを理解する自己認識力を向上できる。(※6)

共感力の強化

他者の感情や視点を理解し共感を持って対応する社会的認識を育めることから、共感力の強化が期待できる。(※6)

社会的スキルの向上

SELは人間関係を築くことや、他人の視点に立つことなど、社会的スキルの向上にもつながる。(※6)

SELが教育現場で抱える課題

教育現場

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SELにはメリットがある一方で、課題もある。教育現場でSELを取り入れる際に課題となることには、カリキュラムに組み込むことの難しさ、教育者の理解不足が挙げられる。

SELは学業の一環として教えることが望まれるが、現行のカリキュラムに組み込むのが難しいのが難点だ。日本の教育現場においては、カリキュラムに余裕がなく、SELに割ける授業時間を確保することが困難であると考えられる。また教育者の理解不足により、実践が困難であることも課題といえる。

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SELの導入事例を紹介

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SELを実際に導入した事例を紹介しよう。

CASEL|アメリカ

SELを推進する団体であるCASELは、SELのプログラムやフレームワークのモデルとなっており、SELの活動において中心的な役割を担っている団体だ。そのCASELの調査によると、アメリカでは2023-24年度までにSELカリキュラムが導入されたというデータがある。(※8)

SEL-8S学習プログラム

「SEL-8S学習プログラム」は、日本の小中学校の教育事情に合わせて社会的能力を育成するための学習プログラムである。SEL-8S学習プログラムでは、次の8つの社会的能力の育成を図る。

・自己への気づき
・他者への気づき
・自己のコントロール
・対人関係
・責任ある意思決定
・生活上の問題防止のスキル
・人生の重要事態に対処する能力
・積極的、貢献的な奉仕活動

具体的にはペープサートや紙芝居、ゲームや身体活動、ロールプレイ、語呂合わせなどを用いて、子どもが楽しく具体的に学べるようになっている。福岡市などでは、学校全体での計画的な取り組みをおこなっている。

SEL-8S学習プログラムを導入したことによる効果には、自己理解・他者理解が深まった、自己肯定感が高まった、よりよい人間関係をつくる手立てとしての効果があったなどがある。(※9、※10)

山形県鶴岡市温海地区

山形県鶴岡市温海地区では、SELを基盤とした「生きる力を育む教育」を推進している。学校教育にSELを導入することを目的とし、教職員SEL研修がおこなわれ、保育園から小・中学校まで一貫した非認知能力を高める教育の導入に取り組んでいる。(※11)

広がりを見せるSEL

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欧米はもちろん、日本においても広がりを見せるSELは、現代の教育において重要な役割を果たしつつある。自己認識や感情管理、他者との関わり方を学ぶことで、子どもたちが健全な成長を遂げ、社会で成功するための基盤を築くことができる。また、SELの導入は学業成績の向上やメンタルヘルスの改善といった具体的な効果も期待されている。課題はあるものの、これからSELはさらに普及し、子どもたちの未来を支える教育手法として日本でも定着していくだろう。

※掲載している情報は、2024年10月25日時点のものです。

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