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子どもの権利条約とは、国の枠組みを超えた子どもの権利を守るための国際的な取り決めである。多くの国々がこの枠組みに参加しており、自国での取り組みに反映させている。この記事では、子どもの権利条約について詳しく解説し、世界や日本で行われている具体的な取り組みについても紹介する。
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子どもの権利条約とは、すべての子どもが持つ基本的な権利を保障し、子どもの生活や成長を守るために国際的に定められた条約である。1989年11月20日に国連総会で採択され、1990年に発効した。この条約は、18歳未満の子どもたちが持つ人権を明確にし、子どもたちが平等に生きる権利、成長する権利、守られる権利、参加する権利を持っていることを世界中で認めている。締約国は196か国にのぼり、世界中でもっとも多くの国に受け入れられた人権条約となっている。(※1)
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子どもの権利条約は、すべての子どもたちの権利を守るための基本的な4つの原則を掲げている。これらは、子どもの権利を実現するうえでの指針となる重要な要素であり、各締約国や地域での施策にも反映されている。(※2)
すべての子どもは、性別、人種、国籍、障がい、経済状況などにかかわらず、平等に権利が保障されるべきであるという原則である。差別は一切許されず、すべての子どもが等しく尊重される。
子どもに関する決定や行動は、その子どもの「最善の利益」を第一に考えられるべきである。この原則は、子どもたちが健やかに成長し、適切な保護や支援を受けるために非常に重要な考え方である。
すべての子どもは、命を守られ、健康に成長するための支援を受ける権利を持つ。この権利は、子どもが医療や教育を受け、心身ともに健全に発展するために必要な援助やサービスを受けることを保障している。
子どもは、自分に関わる事柄について意見を表明する権利がある。この権利は、子どもが社会の一員として自分の声を持ち、大人たちがその意見を尊重し、考慮することを促している。年齢や成熟度に応じて、子どもの意見がしっかりと評価されるべきである。
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子どもの権利条約は、第二次世界大戦後の世界情勢と人権意識の高まりを背景に、子どもの人権を明確に保障するために制定された。この動きの根本には、世界中で戦争や貧困、搾取などに苦しむ子どもたちの状況を改善する必要性があった。
1948年に「世界人権宣言」が採択されたことで、基本的人権の尊重が国際社会で強く意識され始めたが、とくに弱い立場にある子どもたちに対する特別な保護が求められた。その結果、1959年に「児童の権利に関する宣言」が国連総会で採択され、子どもの権利が初めて国際的に認識されるようになった。
これをさらに具体化し、子どもの人権を包括的に保障するための条約として、1989年に「子どもの権利条約」が採択され、1990年に発効した。日本は1994年にこの条約を批准し、子どもたちの権利を尊重し保護するための政策を進めてきた。(※3)
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子どもの権利条約は、世界中の子どもたちが安全で健やかに成長するために、基本的な人権を確保し、とくに弱い立場にある子どもたちを守るために必要不可欠なものである。以下に、なぜこの条約が必要とされるのかを解説する。(※4)
子どもはその身体的・精神的な発達段階において非常に弱く、搾取や虐待に対する保護が必要である。しかし世界中には、労働や性の搾取、家庭内暴力などによって子どもたちが被害を受けている状況が多く存在する。子どもの権利条約は、これらの問題から子どもを守り、安全な環境で成長できる権利を保障するために制定された。
すべての子どもが等しく教育を受ける権利を持つことは、よりよい未来につながる。しかし経済的な困難や社会的な不平等により、教育を受けられない子どもが世界には多く存在する。子どもの権利条約は、すべての子どもに教育の機会を提供し、彼らの成長と発展を支援することを目的としている。
子どもも大人と同様に、自己の意見を自由に表明する権利がある。これは、子どもたちが自分に関わる決定に対して意見を持ち、それを表明できる環境を整えることが重要だという考えに基づいている。とくに教育や家庭内の問題、社会的な活動において、子どもが意見を持ち、それが尊重される環境が必要だ。
子どもの権利条約は、締約国に対してその実施状況を国際的に報告する義務を課しており、各国に子どもの権利を実現するための取り組みが求められている。国際社会全体で連携し、子どもの権利を守るための施策を強化していくことが、世界中の子どもたちの未来を守るために必要なのである。
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子どもの権利条約は、196の国と地域が締約しており、世界でもっとも広く支持された人権条約だ。各国は条約の締結を通じて、子どもたちの権利を守るために法律や政策を整備し、その実施状況を国連子どもの権利委員会に報告する義務を負っている。
また委員会はこれらの報告を審査し、各国に対して進展を評価しつつ改善点を勧告する総括所見を発行している。子どもの権利条約の実施に関するこの取り決めは、各国が子どもたちの権利を守り続けるための基盤となっている。(※5)
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日本における子どもの権利条約の導入と実施状況についても紹介する。1994年に子どもの権利条約を批准した日本は、その後も子どもの権利の保護に向けた取り組みを進めてきたが、具体的な法整備が遅れた部分があった。国内法を整えたのち、2023年には子どもに関する基本的な法律「こども基本法」が施行された。この法律の基本理念には、以下の要素が含まれている。(※5)
・人権の保障
すべての子どもが基本的人権を享受し、差別的な扱いを受けることなく育つことを保証する。
・家庭での養育の重要性
子どもが適切に養育されることを重視し、親や保護者がその責任を果たせるように社会全体で支援する。
・意見表明権の尊重
子どもが自分に関わる事柄について自由に意見を表し、その意見が考慮されることを目指す。
・社会参加の機会の提供
年齢や発達段階に応じて、子どもが多様な社会活動に参加できる環境を整えること。
これらの理念に基づき、こども基本法は子どもが一人の人間として尊重され、その権利が守られる。この法律が施行されたことで、子どもに関する政策が総合的に推進され、国際的な基準に基づいた支援体制の整備が進むことが期待されている。
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子どもの権利条約は、世界中で子どもたちの権利を守り、健やかな成長を支えるための国際的な枠組みである。日本においても、こども基本法を通じてその実現に向けた取り組みが進行中だ。今後も各国や地域での実施状況を確認し、さらなる改善を実施しながら進化させていく必要がある。子どもの意見が尊重され、社会全体でその声を反映する仕組みを充実させていくことが、子どもたちの未来をより明るいものにする。
※1 子どもの権利条約|ユニセフ
※2 子どもの権利条約の考え方|ユニセフ
※3人権の歴史と「子ども権利条約」ができるまで|ユニセフ
※4子どもの権利条約を守る仕組み|ユニセフ
※5子ども基本法|こども家庭庁
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