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スポーツが本来持つ力を活用し、持続可能な社会づくりに貢献していく取り組みを指す「スポーツSDGs」。SDGs達成に貢献するとして、注目されている言葉だ。本記事では、スポーツ庁とスポーツSDGsとの関係や、取り組み事例を紹介していく。
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「スポーツSDGs」という言葉を聞いたことがあるだろうか。スポーツSDGsとは、スポーツが本来持つ力を活用し、持続可能な社会づくりに貢献していく取り組みのことを指す。
前提として、SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、気候変動による影響や貧困、ジェンダーの問題など、世界のさまざまな問題を根本的に解決し、すべての人たちにとってよりよい世界をつくるために設定された、世界共通の17の目標のこと(※1)。2015年9月に国連サミットにて、加盟国である193カ国の全会一致で採択され、「誰一人取り残さない」を理念に掲げながら、2030年までに達成することを目指している。
スポーツSDGsでは、スポーツを通じたコミュニケーションによって課題を共有し、解決に向けて主体的に行動する人を一人でも多くつくり出すことで、よりよい社会を目指している。たとえば、SDGs活動に関心の高いアスリートとともにプロジェクトを起こし、そのアスリートのファン達も巻き込んでより大きな発信を行うなど、さまざまな取り組みに挑戦しているのだ。
スポーツが社会の進歩に果たす役割は、「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」でも「スポーツもまた、持続可能な開発における重要な鍵となるものである。我々は、スポーツが寛容性と尊厳を促進することによる、開発および平和への寄与、また、健康、教育、社会包摂的目標への貢献と同様、女性や若者、個人やコミュニティの能力強化に寄与することを認識する。(※2)」とされており、その有効性については国連においても注目されている。
17の開発目標のなかでも、特にスポーツによる貢献が期待できるものをみてみよう。国連は次のことがスポーツに期待できるとしている。(※2)
目標3「すべての人に健康と福祉を」
運動とスポーツは、アクティブなライフスタイルや精神的な安寧の重要な要素となる。非伝染性疾病などのリスク予防に貢献したり、性と生殖、その他の健康問題に関する教育ツールとしての役割を果たすこともできる。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
スポーツを中心とする取り組みやプログラムが、女性と女児に社会進出を可能にする知識やスキルを身に着けさせる潜在的可能性を備えている場合、ジェンダーの平等と、その実現に向けた規範や意識の変革を進めることができる。
目標13「気候変動に具体的な対策を」
観光を伴う大型スポーツ・イベントをはじめとするスポーツ活動やプログラム、イベントでは、環境の持続可能性についての認識と知識を高めることをねらいとした要素を組み入れるとともに、気候課題への積極的な対応を進めることができる。
目標16「平和と公平をすべての人に」
スポーツは復興後の社会再建や分裂したコミュニティの統合、戦争関連のトラウマからの立ち直りにも役立つ。このようなプロセスでは、スポーツ関連のプログラムやイベントが、社会的に隔絶された集団に手を差し伸べ、交流のためのシナリオを提供することで、相互理解や和解、一体性、平和の文化を推進するためのコミュニケーション基盤の役割を果たすことができる。
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2015年に文部科学省の外局として設置されたスポーツ庁。「スポーツを通じて『国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む』ことができる社会の実現を目指す」ことを理念に持つスポーツ基本法の制定、および、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などの日本開催を背景に設置された行政機関だ(※3)。
そんなスポーツ庁も、スポーツSDGsを推進し、SDGs達成への貢献に努めている。スポーツの持つ、人々を集める力や人々を巻き込む力を使って、SDGsの認知度向上、また、社会におけるスポーツの価値のさらなる向上に取り組んでいる。
ここからは、スポーツ庁が関わっているものから他団体が取り組むものまで、具体的なスポーツSDGsの取り組み事例を紹介していこう。
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国連では、4月6日を「開発と平和のためのスポーツの国際デー」と定めている。これは、近代オリンピックが、1896年の4月6日に初めて開催されたことに由来しており、スポーツが平和と開発を促し、寛容と相互理解を育んできたことから、この日が選ばれたそうだ(※4)。
スポーツ庁では、平成30年度、スポーツの力、およびSDGs達成へのスポーツによる貢献を、動画メッセージで配信。この動画には、鈴木スポーツ庁長官(当時)をはじめ、平昌パラリンピックメダリストたちや、ハンマー投げの室伏広治氏、柔道の松本薫氏、卓球の石川佳純氏、SDGs推進大使のピコ太郎氏など、多くのアスリートや著名人が参加し話題となった(※5)。
スポーツが本来持っているチカラを活用した持続可能な社会づくりを目指している「一般社団法人日本スポーツSDGs協会」では、スポーツとSDGsを結び付けたさまざまな取り組みを行っている。そのひとつが、着衣泳を広めるプロジェクトだ。
着衣泳とは水泳の泳法ではなく、服を着用したまま遭遇することが多い水難や水害において、水中で自分の身を守るための対処の仕方のことだ。通常の水泳で学ぶ常識とは異なる知識が必要となるため、指導を受けておくことが、いざというときに命を守ることにつながる。プロジェクトでは着衣泳イベントの企画や運営、指導員の派遣やスポーツジムなどの事業者と連携した講習の実施などを行っている。(※6)
プロギングとは、スウェーデン語の「拾う(PlockaUpp)」と英語の「走る・ジョギング(jogging)」をかけ合わせた、スウェーデン発祥のジョギングをしながらごみを拾うスポーツ。2016年、ストックホルム出身のアスリート、エリック・アルストロム氏が始めたことがきっかけで広まった。
プロギングは、フィットネスや健康促進に効果的なのはもちろん、ビーチやトレイルコースをごみ拾いをしながら走ることで、社会課題に対して誰もが気軽に貢献できるのがポイント。いまや、世界100か国以上で楽しまれている。
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平成30年10月16日、大阪市で関西SDGsフォーラム「健やかな未来を創る関西からのアクション」が開催された。
関西SDGsフォーラムは、国連が定めたSDGsのの達成に向け、私たちがこれからどう向き合うべきか、生活のなかにどう関わってくるかなどを、識者がスポーツや医療、企業や団体の取り組みなどから、わかりやすく解説することを目的に開かれたフォーラムである(※7)。
この関西SDGsフォーラムにおいて、鈴木スポーツ庁長官(当時)は、基調講演を実施。「スポーツを通じた社会貢献~SDGsでひらく日本~」と題し、スポーツの持つ、人々を巻き込む力や人を集める力を活用し、SDGsの認知度を上げ、自分事として捉えてもらうことでSDGsの達成に貢献していくことについて、自身の体験談も交えながら講演をおこなった。
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スポーツ庁では、SNSを活用して情報発信をおこなっている。先述の「開発と平和のためのスポーツの国際デー」におけるスポーツ庁長官からのメッセージや、関西SDGsフォーラムでの講演実施報告をはじめ、アジアの厳しい環境に暮らす子どもたちの未来を、ラグビーを通じてライフスキルを身につけるプログラムで支えることを目指している活動「パス・イット・バック」などについて発信。
さらに、スポーツSDGsへの取り組みをSNSで発信する際の共通ハッシュタグとして「#SportsSDGs」を設定。個人や団体での取り組みにもこのハッシュタグをつけて投稿してもらうことで、スポーツの力を活用した SDGsの達成をより大きな流れにすることを目的としている(※8)。
2020年の東京オリンピック開催時には、スポーツ庁とマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が妻のメリンダ氏とともに2000年に設立した世界最大規模の慈善団体・ビル&メリンダ・ゲイツ財団と、パートナーシップを締結。開催に向けて、SDGsへの関心を高め、参加を促すことを目的に、スポーツの力を活用した新プロジェクト「Our Global Goals」を発表した。
このプロジェクトは、東京大会の公認プログラムとなったほか、スポーツを通して社会課題を解決するスポーツ庁推進のプログラム「スポーツSDGs」の一環として位置付けられた。
SDGsと聞くと、気候変動をはじめとする環境問題や貧困問題などのイメージが強く、スポーツとはすぐに結びつかないかもしれない。しかし、国や人種が違っても、言葉が通じなくても、一緒に盛り上がり気持ちを共有することができるスポーツは、人々の心を動かす大きな力を持っている。
そんな大きな力を生み出すことができるスポーツを活用してSDGs達成に貢献する取り組みである、スポーツSDGs。スポーツをやっている人もやっていない人も、自分自身が実際に参加してみるほか、スポーツSDGsを応援する、拡散するなど、できることから積極的に関わってみてはいかがだろうか。
※1 SDGs(持続可能な開発目標)とは? 17の目標などわかりやすく解説|セーブ・ザ・チルドレン
※2 スポーツと持続可能な開発(SDGs) | 国連広報センター
※3 スポーツ庁創設の経緯|スポーツ庁
※4 4月6日は「開発と平和のためのスポーツ国際デー」 -アスリートが選ぶ「持続可能な開発目標(SDGs)」- | 国連広報センター
※5 スポーツSDGs|スポーツ庁
※6 着衣泳プロジェクト|一般社団法人日本スポーツSDGs協会
※7 【10月16日(火)】関西SDGsフォーラム「健やかな未来を創る関西からのアクション」|関西SDGsプラットフォーム
※8 スポーツSDGs活動とその共通ハッシュタグ「#SportsSDGs」について|文部科学省
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