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競技施設の建設による環境破壊、ごみの排出、食品ロスなど、スポーツが環境問題にもたらす影響が指摘されている。この記事では、スポーツが環境問題にもたらす影響を詳しく解説。オリンピックと環境問題の関連性や、環境問題への取り組みについてもまとめている。
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わたしたちの身近な存在であるスポーツ。健康管理や趣味として取り組んでいる人も多いのではないだろうか。さまざまなメリットが唱えられているスポーツだが、一方でスポーツが環境問題に与える影響もある。ここではスポーツが環境にもたらす影響をみていこう。
競技施設を新しく建設する場合、土地の開発や建物の建設などがおこなわれる。これにより自然環境の破壊や生態系の変化など環境破壊のリスクが生じる。湿地帯などの自然地域が開発されると、動植物の生息地が失われ、生物多様性が減少する可能性が考えられる。
また、大規模な建設プロジェクトでは、土壌や水質、大気の汚染などの悪影響を及ぼしかねない。生態系のバランスや人々の健康に影響を与える可能性があるため、環境影響評価や適切な環境保護対策を実施したうえで施設の建設や開発をおこなう必要がある。
スポーツ観戦時のごみ問題も環境への影響の1つだ。大規模なイベントや競技会場では多数の観客が観覧に訪れるため、大量のごみが排出されたり、ごみが分別されずに捨てられたりとごみ処理やリサイクルの課題がある。適切な資源収集やリサイクルポイントの設置、清掃員の増加など、ごみ問題に対処し、環境に配慮した行動が求められる。
大規模なスポーツイベントでは、食品ロスが指摘されている。多くの観客に向けて大量の食品が提供されるが、一部が消費されずに捨てられることがある。食品ロスは過剰な仕入れや調理過程での残飯、売れ残りなどが原因とされており、資源の浪費や廃棄物の増加につながってしまう。
スポーツイベントを開催する場合、食品ロスの削減に取り組むために、調理計画の最適化、食品の寄付や再利用の促進、観客への啓発などを行う必要がある。また、フードバンクや地域の慈善団体と連携して、残余食品の再配分や社会貢献活動に取り組むことも効果的だ。
アパレル業界では、労働環境や製造時の環境負荷、大量廃棄などが問題視されている。これはスポーツウェアも同様だ。スポーツで利用するユニフォームやウェアが、知らず知らずのうちに環境負荷につながっている可能性がある。これらの状況を受けて、リサイクル素材などを活用したり、トレーサビリティに注力するブランドも増えている。
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スポーツの世界的な大規模イベントであるオリンピックでも、さまざまな環境問題が生まれている。開催地のインフラ整備や競技施設による土地利用、大量の観客や選手の移動に伴う温室効果ガスの排出、大会中の食品ロスやごみ問題が顕在化している。
このようなオリンピックの環境問題を受け、IOC(国際オリンピック委員会)は1990年に「スポーツと文化と環境」をオリンピックの3本柱として提唱し、環境保護を重視する方針を打ち出している。
近年では、2012年のロンドンオリンピックが「オリンピック史上もっとも環境に配慮した大会」を目標として環境負荷の低いオリンピックを開催したり、2024年に開催予定のパリオリンピックでは使い捨てプラスチックを禁止する方針が発表されたりと、環境に対する取り組みが活発化している。
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スポーツが環境問題に影響を及ぼしているだけではなく、環境問題の深刻化によってスポーツに影響が出ている場面もある。熱中症など身体的な影響から、温暖化や気候変動による環境への影響まで、さまざまな影響が考えられる。
温暖化によって猛暑日が増加し、熱中症のリスクが高まりつつある。気温上昇により、屋内外問わず選手や観客は暑さにさらされることとなるため、プレーの質やパフォーマンスが低下する可能性がある。熱中症は、体温調節機能の崩壊や体内の水分不足によって生じ、立ちくらみやけいれんなど軽度の症状から、重度の場合は死亡に至る危険性もある。
温暖化によって気温が上昇すると、雪の降り始めは遅く、降り終わりは早くなり、積雪量が減少すると考えられている。積雪量の減少により、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツの実施に支障が生じ、利用可能な日程や滑走条件が減少する。
さらに、積雪地域の経済や観光業界にも与えかねない。スポーツは地域経済の重要な収入源であり、雪による観光客の減少や施設の閉鎖は地域社会に大きな影響を与える。持続可能なウィンタースポーツの実現のためには、温暖化の抑制が重要である。
猛暑や豪雨、台風などの異常気象は屋外スポーツ競技に大きな影響を与える。気候変動による気温や降雨の変動は、試合の延期や中止などスポーツの実施に影響を及ぼすほか、競技施設の保守管理にも影響及ぼすとされている。
スポーツの活性化は環境問題に影響を及ぼし、環境問題の深刻化はスポーツに影響を与えている。スポーツと環境問題は相互に影響を与えており、スポーツを楽しめる環境を守るためにも、環境問題に取り組む必要がある。
環境問題への取り組みは、人々の意識や行動を変革させる必要がある。スポーツという身近な存在を失わないために、食品ロスの削減やごみの分別など小さなことからコツコツと積み重ねることが重要である。
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スポーツを楽しむためには豊かな自然が必要であり、スポーツと環境問題には強い関連性がある。そこで、これからも私たちがスポーツを楽しむことのできる環境を守るために、環境課題の解決に向けた取り組みをおこなうスポーツ団体やチームが増えている。
千葉ロッテマリーンズは、2021年10月より、ZOZOマリンスタジアムの使用電力を再生可能エネルギー100%に切り替え。ZOZOマリンスタジアムが位置する千葉市は、2020年11月に公表した「千葉市気候危機行動宣言」で再生可能エネルギー由来電力の活用を推進しており、この宣言を実現した取り組みとなる。今回の再生可能エネルギーへの切り替えによって、年間約932トンのCO2削減に成功した(※1)。
北海道日本ハムファイターズは、選手が使用し終わったユニフォームや、球場内でファンから回収したグッズ・衣料品を繊維レベルまで分解。その繊維を新たなグッズや来場者プレゼントに活用するというプロジェクトを実施。2021年4~5月のホームゲーム12試合で回収されたグッズや衣料品は3トンに達した(※2)。
Jリーグは、2021 JリーグYBCルヴァンカップ決勝でフードドライブを実施した。Jリーグ、ヤマザキビスケット株式会社、環境省、埼玉県、名古屋グランパス、セレッソ大阪と協働し、家庭で余った食品を集めて必要な人々に寄付。このフードドライブでは、1,864個の食品が回収され、総重量は214.85kgに及んだ(※3)。
スポーツイベントの開催は、土地や生態系の破壊、温室効果ガスの排出など環境に影響を与える可能性がある。また、スポーツ観戦時の食品ロスやオリンピックの環境問題なども顕在化している。一方で、温暖化による熱中症リスクや積雪量の減少など環境問題がスポーツ与える影響も少なくない。持続可能なスポーツの実現に向けて、日ごろの暮らしの中で、意識的に環境問題に取り組む必要があるのではないだろうか。
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